臨床精神薬理

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【展望】
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痛みと精神医学
25, 5(2022);View Description
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2017 年,国際疼痛学会(IASP)は nociplastic pain(痛覚変調性疼痛)を新しい痛み用語として採用した。痛みは,以前は侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛,心因性疼痛などに分けられることが多かったが,2017 年以降は,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛,痛覚変調性疼痛の 3 つに分類されている。また,2020 年,IASP は,痛みの定義を「実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こりうる状態に付随する,あるいはそれに似た,感覚かつ情動の不快な体験」へ改訂した。近年の研究により,痛みには脳が関連していることが知られるようになってきた。痛覚変調性疼痛は,精神医学的には身体症状症,疼痛が主症状のものと診断されると考えられる。痛覚変調性疼痛に対する薬物療法や精神療法に関するエビデンスはさほど多くはないが,抗うつ薬などの向精神薬や認知行動療法が有効である可能性が高く,今後の精神医学的介入が期待される。 臨床精神薬理 25:463-470, 2022 Key words : antidepressants, chronic pain, cognitive behavioral therapy, nociplastic pain, “so matic symptom disorder, with predominant pain”
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【特集】 痛みと精神医学――その痛み,精神科で治せるの?
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痛みの遷延化機構における中枢神経変容:疼痛治療における “ メンタルケア ” の重要性
25, 5(2022);View Description
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急性の痛みは生体の防御機構として機能するものの,慢性化した痛みは気分低下,抑うつ,睡眠障害ならびに免疫機構の低下など生体に対し悪影響を与え続ける。このような痛みの遷延化ならびに周辺症状の発症には主に中枢神経系の機能異常が関与すると考えられているが,その詳細なメカニズムは未だ解明されていない。これらのメカニズムの解明および理解は,疼痛緩和における治療戦略の進歩・発展にも重要である。 臨床精神薬理 25:471-476, 2022 Key words : persistent pain, sensitization, epigenetics, parabrachial nucleus, mesolimbic dopa minergic system -
痛みのタイプ,痛みの診断,および痛みの心身医学的重症度評価のポイント
25, 5(2022);View Description
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急性疼痛は生体への警告シグナルとして働いており,慢性疼痛は 3 ヵ月を超えて持続する痛みである。近年,侵害受容性疼痛(nociceptive pain),神経障害性疼痛(neuropathic pain)に次ぐ第 3 の疼痛として,侵害刺激あるいは体性感覚神経系の病変がないにもかかわらず,痛みの発生に関わる脳の回路の変化で起きる痛覚変調性疼痛(nociplastic pain)が提唱されている。また,世界保健機関(WHO)は ICD-11 における慢性疼痛の新しい診断分類を作成した。痛みは感覚体験のみでなく不快な情動体験であり,長引くと心理社会的因子との相互作用で難治化・重症化するため,個人の苦悩を理解するためにライフレビューを行い,信頼関係を構築した上での bio-psycho-social model に基づく診療を要し,精神科・心療内科医の力が必要とされる。特別な介入を要する痛みの難治化要因とその評価方法についても概説した。 臨床精神薬理 25:477-482, 2022 Key words : intractable chronic pain, nociplastic pain, ICD-11, bio-psycho-social model -
鎮痛薬の分類と作用機序――非ステロイド性抗炎症薬・acetaminophen による疼痛治療
25, 5(2022);View Description
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非ステロイド性(酸性)抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)は,アラキドン酸カスケードのシクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase:COX)を阻害することで,プロスタグランジン(prostaglandin:PG)類の生成を抑制する。PG 類の中でも,主に PGE2 生成を抑制して,炎症による痛みや侵害受容性疼痛,筋や腹膜などの機械的圧迫・伸展による痛みに対して効果を示す。市販薬としても入手でき,aspirin,indo metacin,loxoprofen や diclofenac などが代表的な薬剤である。NSAIDs の主な副作用として,胃腸障害,腎機能障害や血小板凝集抑制,心血管系障害などが挙げられる。一方,ac etaminophen は解熱鎮痛作用を有しており,NSAIDs と同様に COX を阻害するが,その作用は弱く抗炎症作用をほとんど示さない。そのため acetaminophen は NSAIDs には分類されない。Aacetaminophen の作用機序は,中枢神経における COX 阻害と考えられているが,詳細な機序は未だに解明されていない。Acetaminophen は,市販の感冒薬などにも含まれており,通常の投与量において副作用は発現しにくく,NSAIDs のような胃腸障害や腎障害などの副作用は極めて少ない。重篤な副作用として,過剰投与による肝障害があり,注意が必要である。 臨床精神薬理 25:483-488, 2022 Key words : non-steroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs), cyclooxygenase (COX), analge sia, anti-inflammatory action -
鎮痛薬の分類と作用機序:オピオイド鎮痛薬による疼痛治療
25, 5(2022);View Description
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オピオイドとは,オピオイド受容体に結合し作用を発揮する薬剤の総称である。オピオイド受容体には µ,δ,κのサブタイプが存在し,鎮痛薬として用いられるオピオイドのほとんどは µ オピオイド受容体のアゴニストである。オピオイドは鎮痛作用以外にも鎮咳,鎮静,催吐,消化管運動抑制,呼吸抑制,呼吸困難の緩和など多彩な作用を持つ。オピオイドの薬理作用プロファイルは薬物によって異なり,実地診療においてオピオイドが使い分けられる根拠となっている。オピオイドは痛みに対して適切に使用される限りにおいては安全な薬剤であるが,痛みを十分に評価することなく漫然と使用することは精神依存のリスクを高める。オピオイドをストレスに対処する目的で使用するケミカルコーピングと呼ばれる問題に対しては,過量投与を防ぐ対策だけでなく,オピオイドを別のストレス対処様式に置き換える援助が与えられることが望ましい。 臨床精神薬理 25:489-494, 2022 Key words : opioid, pain management, ascending pain pathways, descending pain inhibitory systems, chemical coping -
鎮痛薬の分類と作用機序:ガバペンチノイドによる疼痛治療
25, 5(2022);View Description
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慢性疼痛の代表格である神経障害性疼痛は,糖尿病や帯状疱疹など様々な疾患に付随し,その鎮痛管理は患者の生活の質を保つ点としても重要である。その薬物治療の第一選択であるガバペンチノイドは,α2δリガンドと呼ばれる薬剤のグループであり,電位依存性カルシウムイオンチャネルのα2δサブユニットに結合し,カルシウムの流入を抑制することで多様な神経伝達物質の放出を抑制し,鎮痛をもたらす。ガバペンチノイドにはgabapentin,gabapentin enacarbil,pregabalin,mirogabalin の4種類の薬剤が存在し,その適応症や薬理学的特性が異なる。本邦では疼痛に対しては,pregabalin が神経障害性疼痛と線維筋痛症に伴う疼痛に,mirogabalin が末梢神経障害性疼痛に適応がある。メタアナリシスでは,これらについての効果だけでなく,術後疼痛の予防としても有効であることが示されている。ガパペンチノイドは,各薬剤の特徴と適応症を把握した上で,個々の患者に即した薬剤選択が必要である。 臨床精神薬理 25:495-500, 2022 Key words : gabapentinoids, gabapentin, gabapentin enacarbil, pregabalin, mirogabalin -
慢性疼痛の治療薬としての抗うつ薬
25, 5(2022);View Description
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慢性疼痛の治療には,薬物療法を含めた多面的かつ集学的なアプローチが望まれる。薬物療法としては,抗うつ薬は抗炎症薬やオピオイドと並んで有用な選択肢の一つであり,わが国の慢性疼痛診療ガイドラインでも推奨されている。抗うつ薬が鎮痛効果を示す代表的な作用機序として,ノルアドレナリンとセロトニンの再取り込み阻害による脊髄後角でのシナプス伝達の抑制によって痛み刺激が伝わりにくくなるという下行性疼痛抑制系の賦活化が想定され,抗うつ効果とは独立した機序が示唆されている。慢性疼痛に使用する主な抗うつ薬にはセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)と三環系抗うつ薬(TCA)があるが,TCA は高い疼痛軽減効果が期待でき安価である一方で,SNRIと比べて副作用が強いため,使用には注意を要する。また,抗うつ薬の多くは慢性疼痛に対して適応外使用となることにも留意する。 臨床精神薬理 25:501-506, 2022 Key words : chronic pain, antidepressants, descending pain inhibitory system, serotonin and norepinephrine reuptake inhibitors (SNRI), tricyclic antidepressants(TCA) -
Lithium と鎮痛剤
25, 5(2022);View Description
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Lithium 服用中の患者に非ステロイド系消炎薬(NSAIDs)を併用すると,lithium 中毒をきたす危険性が大きい。Acetaminophen も lithium と併用すべきではない。最近,鎮痛剤や降圧剤と lithium の併用患者を対象にした研究で lithium 濃度の上昇程度が,ibupro fen・diclofenac>aspirin >降圧剤・利尿剤,であることが判明した。それでは,痛みを訴えた時には何を投与すればよいのか? 筆者の経験や知る限りでは,頭痛には漢方薬(呉茱萸湯,五苓散,葛根湯,抑肝散など),etizolam の屯用使用,トリプタン製剤の屯用使用,腰痛には SNRIs の慎重投与,pregabalin の投与などが選択肢の候補となる。これらの方法がうまくいかない場合には,lithium を諦めて,バルプロ酸や lamotrigine など他剤へ切り替えることになる。切り替えてしまえば,NSAIDs が使用可能となる。Shared Deci sion Making の一環として,患者とよく話し合って,どのように対応するか決めていくことになる。 臨床精神薬理 25:507-511, 2022 Key words : lithium, lithium intoxication, pain, analgesics, NSAIDs -
線維筋痛症
25, 5(2022);View Description
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線維筋痛症は,身体の広範な部位に生じる原因不明の慢性疼痛と全身性のこわばりを主徴候とし,随伴症状として多彩な身体症状,神経・精神症状を伴う。いずれの徴候も,身体診察や一般的画像検査を含む臨床検査で症状を説明できる異常を認めない。中年女性に好発し,生活の質は著しく障害される。有病率は人口の 1.7~2.1%と比較的頻度の高い疾患である。2017 年国際疼痛学会より,慢性疼痛の分類において,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛についで第 3 の分類として nociplastic pain(痛覚変調性疼痛)が提唱された。本稿では,この nociplastic pain を紹介し,nociplastic pain の代表格である線維筋痛症について,診断,疫学,病態,治療,について紹介する。 臨床精神薬理 25:513-519, 2022 Key words : fibromyalgia, nociplastic pain, chronic pain, treatment, application -
頭痛の鑑別と薬物療法
25, 5(2022);View Description
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慢性頭痛(片頭痛,緊張型頭痛,群発頭痛)の鑑別診断は,国際頭痛分類第 3 版の診断基準に沿って行う。慢性頭痛の治療は,それぞれ急性期治療と予防療法に分けられる。2021 年より片頭痛の予防療法としてカルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide : CGRP)関連薬剤が保険適用となったため,その病態や使用方法について解説する。頭痛を訴える患者で身体科から精神科へ紹介を検討するのは,片頭痛にうつ病やパニック障害が共存していたり,説明できる器質疾患がなく身体症状症を疑う場合がある。精神科から頭痛専門医へ紹介を検討するのは,薬物乱用頭痛(薬剤の使用過多による頭痛)や新規発症の頭痛など危険な頭痛を呈した場合が当てはまる。 臨床精神薬理 25:521-527, 2022 Key words : headache, migraine, tension-type headache, cluster headache, medication-overuse headache
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