臨床精神薬理
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【展望】
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Measurement-Based Care の重要性
27, 4(2024);View Description Hide Description精神科領域においてMeasurement-Based Care(以下,MBC)という概念が注目を集めている。MBC は「治療を通して得られた患者のdata に基づいた臨床的ケアの実践」と定義され,患者の症状や重症度,治療効果などを数値化・客観化した上で,診断・治療を目指すものである。精神疾患では客観的バイオマーカーが存在しないため,現状では評価尺度を用いることで患者の症状や重症度などの数値化を図ることになる。MBC を実践することで従来よりも多くのdata/情報を得ることができ,医療者・患者間のコミュニケーションも増加して価値観を共有した上で治療を協働的に進めやすくなる。そして,治療効果や患者満足度の向上が認められたというエビデンスもある。MBC の実施に関する問題点や,評価尺度を使用する際の注意点はあるものの,多くの利点のあるMBC が今後ますます広まり,実践されていくことを期待したい。 臨床精神薬理 27:307-313, 2024 Key words : measurement-based care, assessment scales, engaging patients, shared decisionmaking, improving treatment effectiveness
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【特集】 Measurement Based Care のススメ――忙しい臨床で評価するには
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日常診療で使用できる統合失調症の評価尺度
27, 4(2024);View Description Hide Description臨床で評価尺度を使用する意義は,①各症状についての重症度が漏れなく記録されること,②症状の重症度が数量化されること,③医療スタッフ間での共通言語となりえることである。評価尺度の評価対象は,①症状,②機能障害,③苦痛,④疾患であり,これら4 つについて評価する必要がある。本稿では,統合失調症について,症状の評価尺度を中心に解説し,臨床で使用できる評価尺度を紹介する。臨床で使用する上で理想的な統合失調症の症状評価尺度とは,①統合失調症の症状ドメインを網羅的に評価できること,②簡便で短時間で評価および採点できること,③評価基準が明確であること,という3 つの条件を兼ね備えたものになろう。また,版権フリーであることも重要である。このような観点から筆者が選ぶ統合失調症の評価尺度は,①症状:「精神病の症状ドメイン簡易評価尺度Brief Evaluation of Psychosis Symptom Domains(BE-PSD)」,②機能障害:「社会的職業的機能評定尺度Social and Occupational Functioning Assessment Scale(SOFAS)」,③苦痛:「症状に関連した苦痛の視覚的アナログスケールVisual Analogue Scale for DistressAssociated with Symptoms(VAS-DAS)」, ④ 疾患:「臨床全般印象尺度– 重症度Clinical Global Impression – Severity of Illness(CGI-S)」であり,これらをすべて実施しても10 分程度であり,多忙な日常診療でも使用できる。 臨床精神薬理 27:315-321, 2024 Key words : BE-PSD, CGI-S, PANSS, rating scale, schizophrenia -
うつ病におけるMeaserement Based Care(MBC)を実践しやすくするには
27, 4(2024);View Description Hide Description症状評価尺度は,疾患のスクリーニングや診断の一助となるだけでなく,症候学的リカバリーを評価する上で“反応”や“寛解”などを評価可能とし,機能障害やQOL のモニターも可能となる。評価尺度には,客観的尺度と自記式尺度があるが,非精神病性の当事者のMBC においては,時間はかからない自記式尺度が客観的尺度と十分に相関するとされ,CANMAT ガイドラインでも推奨されている。うつ病の症状における自記式評価尺度ではQIDS-J やPHQ-9 が薦められる。実際より重症に評価しがち,欠損値が出がちというデメリットがある一方,口頭では訴えにくい希死念慮などについてはより回答しやすく,治療者にとっても時間がかからないというメリットがある。不安の併存を見るならば,CUDOS-A が不安併存や機能,QOL まで評価でき,有用である。機能評価としては,PDQ-D-5 やSDS, 最近ではTHINC-it も注目される。就労に関しては,WPAI がpresenteeism とabsenteeism の両方を見ることができ有用である。また,パーソナルリカバリーについては,客観的尺度であるが,GAS-D を用いることで,当事者の希望を明らかにし,寄り添うことができるため意義があると考える。本稿で紹介した評価尺度を上手く使い,当事者の状況や治療を「見える」化して共有することで,共に治療に取り組むという共同意思決定(SDM)にもつながるのではないかと考える。臨床精神薬理 27:323-331, 2024 Key words : depression, measurement based care, self-administered rating scale, objective ratingscale, Quick Inventory of Depressive Symptomatology (QIDS-J) -
双極症におけるMeaserement Based Care
27, 4(2024);View Description Hide DescriptionMeasurement Based Care(MBC)は,行動医学的治療に情報を提供するために,受診前または受診中に患者の症状を系統的に評価することである。MBC を日常臨床でも用いることは以前から推奨されてきているが,臨床現場で普段使いをしているかといえば多くの精神科医は首を横に振るだろう。本稿では双極症についてMBC を行っていくとしたらどのような評価尺度を用いるのが良いのか,症状,認知機能,機能またはQOL に分けて検討した。双極症のデジタル診療に向けて,信頼性と妥当性があり,簡易・短時間で実施できるMBC の確立が求められる。 臨床精神薬理 27:333-339, 2024 Key words : symptom, cognition, function, QOL, digital psychiatry -
治療に繋がる強迫症の評価尺度の使い方
27, 4(2024);View Description Hide DescriptionMeasurement Based Care(MBC)は,評価尺度により縦断的に精神症状などを評価して,治療方針の決定に役立てることを意味する。適切な評価には適切な評価尺度の選択が必要であるだけでなく,忙しい臨床でMBC を実践するには,治療者が提供できる治療の枠組みとしてどのような制約があるかも検討しながら使用する評価尺度を取捨選択しなければならない。本稿では強迫症の重症度評価に頻用されるYale-Brown ObsessiveCompulsive Scale(Y-BOCS)をはじめとした評価尺度を紹介し,当院強迫症専門外来で組んでいるテスト・バッテリーを例示する。MBC を適切な形で実践していくことは,強迫症に対する治療効果を高め,特に治療の第一選択である認知行動療法の潜在性を引き出すことになるだろう。 臨床精神薬理 27:341-346, 2024 Key words : obsessive-compulsive disorder, Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale (Y-BOCS),Obsessive-Compulsive Inventory (OCI), Padua Inventory (PI), Family AccommodationScale (FAS) -
Measerement Based Care の重要性:全般不安症
27, 4(2024);View Description Hide DescriptionMeasurement Based Care(MBC)とは,信頼性・妥当性の高い症状評価尺度を用いることで,治癒率の向上や治療期間の短縮など,患者のより利益となる診療を実践することである。本稿では,全般不安症(generalized anxiety disorder:GAD)に関するMBCのツールとして「GAD-7(Generalized Anxiety Disorder 7-item Scale)」と「ハミルトン不安評価尺度(Hamilton Anxiety Rating Scale:HARS)」の2 つの症状評価尺度について,日常臨床での活用の仕方も含めてまとめた。前者はGAD に特化した自己記入式の7 項目の質問票でとても簡易(所要時間は数分で待合室で施行可)であること,後者は不安症状の評価尺度としては初めて作成されたもので使用頻度が高く,また質問項目に抑うつ症状や身体症状の記載が多いことから,GAD の併存症として頻度の高いうつ病やパニック症を安易に鑑別できるというメリットがある。なお,他の不安症状に対する評価尺度やGAD の概念・診断についてもごく簡単に記載した。 臨床精神薬理 27:347-355, 2024 Key words : generalized anxiety disorder (GAD), Generalized Anxiety Disorder-7 item scale(GAD-7), GAD-2, Hamilton Anxiety Rating Scale (HARS) -
社交不安症の評価に有用な尺度
27, 4(2024);View Description Hide Description社交不安症(Social anxiety disorder : SAD)のスクリーニングや症状の評価に有用なものとして,SAD に特化した尺度としてはLiebowitz Social Anxiety Scale,Social PhobiaInventory,Social Anxiety Disorder Scale,Social Anxiety/Taijin-kyofu Scale,SAD の評価に有用な尺度としては,State-Trait Anxiety Inventory,Kessler 10,Hamilton Anxiety Scale,SAD の認知機能や社会機能の評価に有用な尺度としては,Sheehan Disability Scale,Wisconsin Card Sorting Test,Trail Making Test を紹介した。ほとんどが簡便に施行でき,一部は診療報酬を得ることができる尺度である。 臨床精神薬理 27:357-363, 2024 Key words : social anxiety disorder, interview scale, self-report scale, cognitive function, socialfunction -
注意欠如・多動症(ADHD)におけるMeaserement Based Care
27, 4(2024);View Description Hide Description注意欠如・多動症(ADHD)は,12 歳以前から複数の場面で認められる発達水準に不相応な不注意,多動性- 衝動性によって診断される神経発達症であり,多領域にわたる機能障害とともに,二次障害のリスクファクターとなることが指摘されている。現在,ADHD の評価尺度として,ADHD の中核症状だけではなく,併存症状,機能障害なども含めた多様な評価が可能である。ADHD の症状評価や機能評価は,薬物療法の開始,適正用量の設定,薬物療法の中止の決定だけでなく,ADHD 治療の目標となる症状的寛解や機能的寛解の基準となる。ADHD 症状や機能の評価を患者や家族と確認しながら評価することは共有意思決定の基盤となるだけではなく,自己理解を進めることで,薬物療法に限らず,心理社会的治療を含めた治療期間全体のアセスメントを支えることになると思われる。評価尺度は,その評価が一面的であるという限界もある。複数の尺度を組み合わせるとともに,点数をスコアリングするだけではなく,質問や回答に基づく問診を追加することで,その評価が深みを増すと思われる。 臨床精神薬理 27:365-369, 2024 Key words : attention-deficit/hyperactivity disorder, clinical symptom, functional impairment,shared decision making -
認知症のスクリーニングで行われる認知機能検査
27, 4(2024);View Description Hide Description認知症例では,記憶障害,失認,失行,失語,遂行機能障害などの様々な認知機能障害を呈する。その中でも,アルツハイマー型認知症では記憶障害,レビー小体型認知症では視空間認知障害,前頭側頭葉変性症では失語が目立つなど,特に病初期には疾患毎に特徴的な症状を呈する。これらの特徴を鋭敏に,なおかつ簡易に短時間で感知するために,これまで様々な認知機能検査が開発されてきた。本稿では,本邦におけるものわすれ外来で一般的に用いられているMini-Mental State Examination(MMSE),MontrealCognitive Assessment(MoCA),Frontal Assessment Battery(FAB)を中心に,認知症疾患毎の検査結果の特徴とともに解説する。 臨床精神薬理 27:371-376, 2024 Key words : clock drawing test, Mini-Mental State Examination, Montreal Cognitive Assessment,visuospatial function -
不眠症治療におけるMeaserement Based Care
27, 4(2024);View Description Hide Description不眠症はcommon disease の一つであり,特に精神疾患での併発率は高い。その診断は患者の主観的な不眠症状と併せて,不眠症状による生活障害の存在によりなされるが,加えて診断や治療の必要性の判定には,他の睡眠障害の鑑別や心理・環境面の影響も考慮する必要がある。これらの情報を日常診療で効率的に収集するために,ピッツバーグ睡眠質問票などの,不眠症状を定量化する評価尺度を用いたMeasurement Based Care(MBC)は非常に有効である。また,診断後の治療においても,薬物療法の効果判定を定期的に行う際や,近年主流となりつつある不眠症の認知行動療法(CBT-I)を導入し,アセスメントを行う際にも,各種質問票の特徴や使用法を理解し適切に施行することは,薬物療法の最小化を含む不眠症治療の最適化を達成し得ると考えられるため,積極的にMBC を実践していくべきである。 臨床精神薬理 27:377-385, 2024 Key words : insomnia, CBT-I, questionnaire, assessment tool, sleep scale
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