整形外科サージカルテクニック
整形外科領域の「手術」を徹底して取り上げる新しい専門誌『整形外科Surgical Technique』。
教科書には載っていない手術のコツ、ピットフォール、リカバリー法が満載。各手術のエキスパートの技と知恵を凝縮した「手術が見える・わかる専門誌」です。
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目次
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Front Essay 【整形外科医の軌跡】
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Feature 【絞扼性神経障害の手術治療 上肢・下肢・腰殿部】
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【上肢】1 手根管症候群に対する鏡視下手術
13, 6(2023);View Description Hide Description鏡視下手根管開放術(endoscopic carpal tunnel release:ECTR)の長所は,なんといっても創が小さいことである.これが整容面で有利なことに加え,創治癒が早いため水の使用も直視下法(open carpal tunnel release:OCTR)に比べて早くなる.手根管症候群(carpal tunnel syndrome:CTS)は女性に多いため,整容面の利点や家事・炊事への早期の復帰は大きなアドバンテージとなる.また,職場への復帰も早いことや,手掌部瘢痕痛の発生リスクが少ないとの報告もある1,2).一方で,正しい手技を習得する機会は少なく,神経・血管損傷などの合併症や屈筋支帯の切離不全などの報告も散見される1-5).当院では2 ポータル法(Chow法)を用いているが6),ECTR の長所を生かすべく,小切開にこだわった手技で行っている.本稿では手技のコツや安全に行うための注意点などについて紹介する. -
【上肢】2 手根管症候群に対するOpenでの手根管開放術
13, 6(2023);View Description Hide Description手根管症候群は上肢の絞扼性末梢神経障害のなかで最も頻度が高く,中年以降の女性に多いとされている1).自然軽快例も一定数存在するために,1 〜2 ヵ月の経過観察期間は重要だが,保存療法は無効なことが多く,手術療法を選択するのが一般的である. -
【上肢】3 WAHSによる肘部管症候群手術
13, 6(2023);View Description Hide Description筆者は2006 年以降,肘部管症候群に対する手術のみを行う場合は基本的にwide awake hand surgery(WAHS)で手術を行っている1).患者が術後の不安のために入院を希望する場合を除き,ほとんど外来手術である.主な対象はその原因が変形性関節症や特発性などである.スポーツ選手や労働者で肘の変形に対する骨棘切除術や授動術を同時に行う場合などは全身麻酔下に手術を行っている.WAHSは局所麻酔手術であるので麻酔に特別な技術を必要としない.外来におけるWAHSは簡便で,特に高齢者にとっては負担が少ない.本稿ではWAHSによる肘部管手術での局所麻酔のやり方と手術手技について解説する. -
【上肢】4 胸郭出口症候群に対する内視鏡下手術
13, 6(2023);View Description Hide Description胸郭出口症候群(thoracic outlet syndrome:TOS)は診断基準が確立されていないため,診断と治療に難渋する場合がある.Roosテスト1)は診断に有用であるが,偽陽性も多いので,診断の補助として用いる.Wrightテスト2)の肢位で手の色調変化や橈骨動脈の拍動が消失した場合,鎖骨下動脈が絞扼を受けている重要な所見である.超音波検査は診断に有用であり,前斜角筋と中斜角筋間の距離を測定し,狭窄の有無を確認し,鎖骨下動脈の血流も評価する3).肋鎖間隙が狭い所見も重要である3,4). -
【下肢】5 足根管症候群
13, 6(2023);View Description Hide Description足根管症候群は距骨後突起,踵骨および屈筋支帯で形成される足根管で生じる脛骨神経またはその分枝の絞扼性神経障害であり,1960 年のKopellら1)の報告がもっとも古く,その後1962 年にKeckら2),1967 年にLamら3)がそれぞれ“tarsal-tunnel syndrome”という名称で報告している. -
【下肢】6 モートン病
13, 6(2023);View Description Hide Descriptionモートン病は第2,3 趾間部に好発する,足底趾神経の障害による前足部痛を主訴とする疾患である. 病態については,1876 年にMorton がcase seriesで中足骨骨頭間における趾神経の絞扼が原因であると報告した1)が,いまだ一定の見解が得られていない.現在のところ,歩行などによる繰り返される微小外傷や,深横中足靱帯による趾神経の絞扼,中足骨間の滑液包炎,血管の変性に伴う虚血などが病態と考えられている2).したがって,「Morton 神経腫」,「Mortonʼs neuroma」と記載されていることもあるが,上記のような原因による,趾神経の病理学的な変性を伴う肥大や腫大が病態であるため,偽腫瘍である. モートン病と局所の解剖の関係について,まずは通過する趾神経に関しては,第1 から3 趾間を走行する総趾神経は内側足底神経から,第4 趾間を走行する総趾神経は外側足底神経から分岐し,第3と第4 総趾神経は51 %の症例で交通している(図1,図2)2).その後,総趾神経は隣接する各足趾の内側と外側に分岐する.次に通過する趾間部に関して,第2,第3 趾間部は第1,4 趾間部と比較して有意に狭い3).このことから,第2 と第3 趾間にモートン病が好発することが説明できる. -
【腰殿部】7 上殿皮神経障害・中殿皮神経障害の診断と治療
13, 6(2023);View Description Hide Description国民生活基礎調査によると腰痛は常に上位に位置する有訴者率であり,国民病ともいわれている.最新の令和4 年の調査結果(図1)においては男性,女性ともに首位の症状となっている1). 腰痛は特異的腰痛と非特異的腰痛に分類される.特異的腰痛は,腰椎椎間板ヘルニア,腰部脊柱管狭窄症,変形性腰椎症,椎体圧迫骨折などの腰椎疾患や腹部臓器の内臓疾患,血管障害などが原因とされている.一方,約85 %は非特異的腰痛で,CT やMRI などの画像診断では原因を特定できない腰痛とされていた2).しかし,本邦の整形外科専門医による調査によれば,腰痛の原因は椎間関節性,筋・筋膜性,椎間板性,腰部脊柱管狭窄性,腰椎椎間板ヘルニア,仙腸関節性などの75 %以上が診断可能で非特異的腰痛は22 %であったと報告された3).このように多くの腰痛は診断可能とはされたが,有訴者率の高い腰痛の一部では治療効果が十分に得られていないのが現状である.また,特異的腰痛の診断で手術を受けた患者の中には,術後に腰痛や下肢症状が残存,再燃する腰椎術後症候群(Failed Back Surgery Syndrome:FBSS)があり,その中には非特異的腰痛が併存している場合もある4).そのため,腰痛治療において,この非特異的腰痛を診断し治療することが肝要であると考えている. 筆者らは非特異的腰痛に分類される腰痛周辺疾患(上殿皮神経障害,中殿皮神経障害,中殿筋障害,梨状筋症候群など)に注目し腰痛治療を行っているが,これらの疾患はまだ十分に認知されているとは言いがたい.今回,非特異的腰痛の一部である,上・中殿皮神経障害について解説する.
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