Abstract
基礎インスリンデテミル1 日1 回ないしは2回投与でインスリン強化療法施行中の糖尿病患者37例(1型17例,2型20例)を対象に,同単位の基礎インスリングラルギンに切り替えた後に,6 ヵ月間, 朝食後2 時間血糖値(PPG),HbA1c(本稿では,以下すべてNGSPで表示),体重,インスリン投与量の推移を調査し,インスリンデテミルとグラルギンの有効性を比較検討した。インスリングラルギンへ切り替え6 ヵ月後のHbA1c の変化は,1 型糖尿病で8.2±0.3から7.7±0.2%へ,また2 型糖尿病で8.4±0.3 から8.0±0.3%に,いずれも有意差をもって改善した。なお,外来で測定したPPGにおいては,インスリングラルギンへの切り替えにて有意な変化は生じなかった。インスリンの投与量に関しては,基礎インスリン投与量は,1 型糖尿病では変化がなかったのに対し,2 型糖尿病においては16.4±1.4 から20.0±1.7 units に有意に増加した。超速効型インスリン投与量は,1 型,2 型糖尿病いずれにおいても減少する傾向がみられた。体重の変化は,1 型糖尿病では変化がなかったのに対して,2 型糖尿病においてはインスリングラルギンに切り替えることによって,66.6±3.8から68.2±3.2 kgに有意に増加した。以上の結果から,インスリンデテミルからグラルギンに切り替えることによって,1 型糖尿病においては,基礎,超速効型インスリン量を変化させずにHbA1cを改善させるのに対して,2型糖尿病においては,空腹時血糖をより厳格にコントロールできるグラルギンの投与量を増量することで,HbA1cが改善することがわかった。したがって,インスリン強化療法において2 型糖尿病では体重増加に注意を要するものの,より持続性が長いインスリングラルギンのほうが,デテミルと比較して有効性が高いことが示唆された。