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Therapeutic Research
- Author: 平田 昌義1
Abstract
背景:早期ステージの保存期慢性腎臓病(CKD)患者では,血清リン(P)値は正常範囲内に保たれているが,骨・ミネラル代謝の異常がステージの進行に伴い出現することから,P制限食やP 吸着薬によりCKD ステージにかかわらず各施設の基準値内にP 値を保つことが推奨されている。従来使用されてきたカルシウム(Ca)含有P 吸着薬は,Ca 非含有P 吸着薬よりも血管石灰化への影響が大きいことが問題視されている。2013 年からCa 非含有P 吸着薬である炭酸ランタンが使用可能となったことから,炭酸Caからの切替え例も含め,保存期CKD 患者に対する炭酸ランタンの有用性について検討した。方法:2013 年10 月から2014 年2 月の間に炭酸ランタンの投与を開始した,血清P 値4 mg/dL 以上のP 吸着薬新規投与患者19 例,および炭酸Ca からの切替え例4 例の保存期CKD 患者計23 例を対象に,血清P,Ca,腎機能のパラメータを測定し,6 ヵ月後までの推移を検討した。結果:観察期間の平均値は245±35 日,中央値は252 日であった。CKD ステージは,G5 が69.6%を占め,炭酸ランタン投与開始時の血清P 値は4.5±0.5 mg/dL,血清Ca 値は8.4±0.8mg/dL であった。炭酸ランタンの開始時投与量は,全例750mg/日で,6 ヵ月後の平均投与量は1370±583mg/日であった。血清P 値は,2 ヵ月後には4.1±0.8 mg/dLへと有意に低下し,6 ヵ月後まで低下を維持する傾向が認められた。CKD ガイドラインが推奨する基準値2.5~4.5 mg/dLを達成した患者は,投与開始時には56.5%であったが,6 ヵ月後には73.9%に達した。血清Ca 値も5 ヵ月後には8.1±0.7 mg/dL へと有意に低下した。血清クレアチニン(Cr)値は投与開始時の3.79±1.36 mg/dL から6 ヵ月後には4.4±2.1mg/dL と有意に増加,eGFR 値は投与開始時の13.9±6.0 mL/min/1.73 m2から6 ヵ月後には12.6±6.3 mL/min/1.73 m2と有意な低下が認められた。尿蛋白/Cr 値を測定しえた8 例では,開始時の6.50±7.99 mg/gCr から大きな変動は認められなかった。炭酸Ca からの切替え例と炭酸ランタン新規投与例との比較では,血清P 値は,炭酸Ca からの切替え例では有意な低下は認められなかったが,新規投与例では1 ヵ月後に有意な低下が認められ,以降低下が持続した。血清Ca 値は,炭酸Ca からの切替え例,新規投与例のいずれも有意な低下が認められた。血清P 値低下例と非低下例の比較では,非低下例で血清Cr 値の有意な増加,およびeGFR 値の有意な低下が認められた。観察期間中,4 例に嘔気が認められた以外には特記すべき有害事象は認められなかった。結論:6 ヵ月間の使用経験から,炭酸ランタンは保存期CKD 患者の血清P 値の管理に有用と思われ,なかでも血清P 値を厳格にコントロール可能であった患者ではCKD の進展を抑制できる可能性が示唆された。
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