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Therapeutic Research
- Author: 和田健太朗1
Abstract
背景:高リン(P)血症を呈する保存期の慢性腎臓病(CKD)患者の予後は不良であり,高P血症と高カルシウム(Ca)血症による血管の石灰化やそれに伴う心血管疾患が問題となっている。Ca非含有P吸着薬はCa含有製剤と比較して全死因の死亡リスクが低く,また,血管石灰化の進行予防の観点から,Ca非含有P吸着薬の使用が推奨されている。今回,当院で保存期CKD患者に対するCa非含有P吸着薬である炭酸ランタン(ホスレノール®)の臨床使用経験を得たので報告する。方法:CKDステージG3a,3b,4,5 の心血管イベント既往のない保存期CKD患者で,血清Pが2 回以上の検査で3.5 mg/dL以上であった患者20例を対象として,炭酸ランタンを投与した。炭酸ランタン投与開始時および投与開始後に毎月1 回,血清P,血清補正Ca,尿中P排泄量,血清intact副甲状腺ホルモン(iPTH),血清1,25–(OH)2D,腎機能などの各種検査(CKD–mineral and bone disorder:CKD–MBD関連マーカーを含む)値を測定し,6 ヵ月間の推移を検討した。結果:対象患者は,男性12例,女性8例の計20例,年齢は平均61±10歳であった。併用薬は,アルファカルシドールが7例(35.0%),スルホニル尿素(SU)薬が1例(5.0%),dipeptidyl peptidase4(DPP4)阻害薬が3 例(15.0%),球形吸着炭が14例(70.0%)であった。炭酸ランタン開始時の血清Pは4.5±0.3 mg/dLであったが,1 ヵ月後に4.0±0.2 mg/dLへと有意に低下した(p<0.001)。その後も,有意な低下を維持し,6 ヵ月後は3.8±0.3 mg/dLであった(p<0.001)。CKDステージ別の血清Pは,対象患者のすべてのステージで類似した挙動を示した。血清補正Caは炭酸ランタン開始時に9.2±0.4 mg/dL,6 ヵ月後は9.2±0.3 mg/dLであり,有意な変動を認めなかった。血清iPTHは,炭酸ランタン開始時に157.9±117.4 pg/mL であったが,6 ヵ月後は132.1±104.2 pg/mLと有意に低下した(p<0.001)。尿中P 排泄量および血清1,25–(OH)2Dに関しては,炭酸ランタン開始時と6 ヵ月後で有意な変化を認めなかったが,血清Pの変化量と血清1,25–(OH)2Dの変化量に関しては,有意な負の相関を認めた。推算糸球体濾過量,血清クレアチニン,血中尿素窒素に関しては,いずれも炭酸ランタン開始時と6 ヵ月後で有意な変化を認めなかった。また,観察期間中,特記すべき有害事象を認めず,服薬アドヒアランスは良好であった。結論:炭酸ランタンの6 ヵ月間の使用により,血清Pおよび血清iPTHの有意な低下を認め,腎機能の悪化は認めなかった。以上より,炭酸ランタンによる高P血症の改善がCKDの進展抑制に繋がる可能性が示唆された。
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