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Therapeutic Research
Abstract
エスシタロプラムはデンマークのルンドベック社が開発した選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)であり,海外においては「大うつ病性障害」,「パニック障害」,「社会不安障害」,「全般性不安障害」,「強迫性障害」および「月経前不快気分障害」の適応を取得している。わが国においては2011 年4 月に「うつ病・うつ状態」,2015 年11 月に「社会不安障害」の適応を取得した(国内販売名:レクサプロ® 錠10 mgまたはレクサプロ® 錠20 mg)。今回,「うつ病・うつ状態」の患者を対象に本剤の使用実態下における安全性および有効性の検討を目的とした使用成績調査,特定使用成績調査を実施した。本調査においては医薬品リスク管理計画に基づく安全性検討事項についてあわせて検討した。本調査の副作用発現割合は16.30%(630/3866例)で,承認時までの大うつ病性障害患者を対象とした国内臨床試験の副作用発現症例割合74.36%(409/550 例)と比較し,低値であった。本調査で認められたおもな副作用(1%以上)は,悪心187 例(4.84%),傾眠115 例(2.97%)および倦怠感39 例(1.01%)であり,承認時までの国内臨床試験で認められた事象と大きく異ならなかった。医薬品リスク管理計画書で設定した安全性検討事項のうち,「QT 延長,心室頻拍(torsades de pointes を含む)」について検討した結果,副作用発現割合は0.62%(24/3866例)であり,その中で死亡に至った症例はなかった。本調査で収集された心電図データより,QT/QTc 間隔測定値の絶対値の閾値,およびベースラインからの変化量の閾値を確認し,承認時までの臨床試験時の評価を超えるリスクは認められないと判断した。「自殺行動/自殺念慮」に該当する副作用は0.23%(9/3866 例)で認められ,自殺既遂3 例は死亡に至った症例であった。自殺既遂の3 例に共通する患者背景因子は認められず,いずれも報告医師によって原疾患や併用被疑薬の交絡が疑われた症例であった。本調査において,24 歳以下の患者における「自殺行動/自殺念慮」の発現割合は295 例中3例(1.02%)であり,25 歳以上の患者の発現割合3571 例中6 例(0.17%)と比較して高くなる傾向が認められた。この結果は,すでに記載し注意喚起している傾向と異ならなかった。 有効性については臨床全般改善度(CGI‒I)により評価した結果,52 週までの最終評価の改善率が52.82%(2005/3796 例)であり,投与52週時(OC)の改善率は,71.68%(1078/1504 例)であった。また本調査において,国内長期投与試験の対象患者と重症度が同程度となる開始時臨床全般重症度(CGI‒S)4 点以上の集団におけるCGI‒S を評価したところ,投与開始時から投与52 週時(OC)の変化量(-2.2±1.24,1237例)は,国内長期投与試験の投与開始時から投与52 週時(OC)のCGI‒S の変化量(-2.4±1.0,66 例)と同程度であった。 以上,本調査において,承認時までの国内臨床試験結果と比べ安全性および有効性に関して新たに懸念となる事項は認められなかった。
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