Abstract
基礎インスリンは,多くの糖尿病患者にとって重要な治療法の一つである.インスリンの効果を持続させるための最初の試みは懸濁液の開発であったが,注射前に均一化を要した.これら,1 日1 回または2 回の注射が必要なインスリンは,インスリン曝露量が大きく変動し,想定外の血糖降下作用をもたらした.過去20年間の進歩により,薬物動態的な曝露の変動が小さな長時間作用型の可溶性基礎インスリンアナログが開発され,とくに夜間低血糖の減少により基礎インスリンの有効性および安全性に改善が認められるようになった.しかし,低血糖への懸念や治療負担など多くの理由から,1 日1 回投与の基礎インスリンのアドヒアランスと継続性は依然として低かった.曝露の変動がより小さく,より作用時間の長いプロファイルを有する可溶性基礎インスリンであれば,薬力学的な変動を低減させるとともに低血糖を減少させ,1 日1 回投与の基礎インスリンと同程度の有効性で,投与方法の簡略化によりアドヒアランスを向上させる可能性がある.インスリン イコデク(Novo Nordisk)およびInsulin Efsitora Alfa(基礎インスリンFc,BIF,Eli Lilly and Company)は,週1 回投与となるように設計されたインスリンで,基礎インスリン補充療法をさらに進歩させる可能性がある.イコデクおよびEfsitora の第Ⅱ相臨床試験,ならびにイコデクの第Ⅲ相臨床試験で得られたデ-タから,週1回投与型インスリンが1 日1 回投与のアナログと同等の血糖コントロ-ルを示し,低血糖のリスクも同程度であることが示されている.本稿では,週1 回投与型基礎インスリンの開発に用いられたテクノロジ-,週1 回投与型インスリンの臨床的根拠およびベネフィットを述べるとともに,実臨床下での限界や課題の可能性についても考察する(図:Graphical abstract). [本総説は,Endocrine Reviews 誌で公刊された以下総説の二次出版(日本語訳)である. Julio Rosenstock, Rattan Juneja, John M. Beals, Julie S. Moyers, Liza Ilag, and Rory J. McCrimmon. The Basis for Weekly Insulin Therapy: Evolving Evidence With Insulin Icodec and Insulin Efsitora Alfa. Endocr Rev 2024;45 (3):379‒413. https://doi.org/10.1210/endrev/ bnad037. Translated and reproduced by permission of Oxford University Press on behalf of the Endocrine Endocrine Society. Translation Disclaimer:OUP and the Endocrine Society are not responsible or in any way liable for the accuracy of the translation. The Licensee is solely responsible for the translation in this publication/reprint. 日本語の監訳者として,居森 真(日本イ-ライリリ-株式会社)が関与した.]