Abstract
肺がん治療は,免疫チェックポイント阻害薬(ICI)や分子標的薬の登場により大きく進歩した.しかし,同じ治療を行っても効果や副作用には大きな個人差がある.その要因の一つとして,近年「腸内細菌叢」と「gutlungaxis(腸肺軸)」が注目されている.腸内細菌叢の多様性が保たれ,Akkermansia,Bifidobacterium,Faecalibacterium などの有益菌が豊富な患者ではICI の奏効率が高く,抗生物質やPPI,喫煙などによるディスバイオ-シスはICI 効果の低下と関連することが報告されている.また,腸内細菌由来の短鎖脂肪酸やトリプトファン代謝物は,T 細胞活性化やTreg 制御を通じて腫瘍免疫微小環境を変化させ,治療応答を多層的に修飾する.EGFRTKIをはじめとする分子標的薬でも,腸内細菌叢は治療効果や下痢などの消化器毒性に影響し得る.さらに喫煙は肺がんの原因であるだけでなく,腸内細菌叢を乱し,炎症促進菌の増加と有益菌の減少を介して免疫環境を悪化させる可能性がある.一方で,禁煙により腸内細菌叢が部分的に回復することも報告されている.近年,高食物繊維食やプロバイオティクス,糞便微生物移植(FMT)など,腸内環境を整える介入によりICI の治療成績を改善し得る可能性が示され,肺がん領域でも臨床試験が始まりつつある.腸内細菌叢は,治療効果・毒性の予測マ-カ-であると同時に,食事・生活習慣介入を含む新たな治療標的としても期待されており,肺がんにおける個別化医療の精緻化に大きく貢献し得る.