Abstract
エプレレノンは,ファイザー社(旧ファルマシア社)で開発された,ミネラロコルチコイド受容体(MR)に結合し,レニン−アンジオテンシン−アルドステロン系(RAAS)の最終生成物のホルモンであるアルドステロンの結合を受容体レベルで選択的に阻害する新規の降圧薬である。アルドステロンは,アンジオテンシンII(AII)により分泌が促進され,腎の遠位尿細管に作用してナトリウム(Na)や水の再吸収,カリウム(K)の排泄作用を促進することで体液量を増加させて血圧を上昇させる。また,結腸や汗腺における同様の作用のほか,心血管系への直接作用により,高血圧,心肥大,心室性不整脈,さらに心不全や腎障害をもたらすことが明らかにされている。エプレレノンはこれらの諸作用に拮抗して利尿効果と心血管収縮の抑制作用により降圧作用および心血管障害阻止作用を発揮すると考えられている。一方,従来から K 保持性利尿薬スピロノラクトンは MR への選択性が低く,同じステロイドホルモンであるプロゲステロンやアンドロゲン受容体をも遮断するため,内分泌・性腺系の副作用として男性では女性化乳房,インポテンツ,乳頭部の痛み,女性では生理不順などの副作用の発現が知られている。これに対しエプレレノンは,MR への選択性が高く,プロゲステロンおよびアンドロゲン受容体への親和性が低いため,このような副作用の発現頻度の低いことが明らかにされている。臨床的には,エプレレノン 50〜100 mg 1 日 1 回の経口投与で,軽・中等症の本態性高 血圧症患者で 24 時間良好な降圧作用が期待でき,長期投与においても安定した血圧コン トロールを示す。海外で実施された二重盲検比較試験でエプレレノンはエナラプリル,ア ムロジピンと同等,ロサルタンとは有意に優る降圧効果が得られている。また,サイアザ イド系利尿薬,β遮断薬,Ca 拮抗薬,RAAS 抑制薬との併用が有用と考えられている。さ らに,米国,欧州の高血圧ガイドラインで,心疾患を伴う高血圧治療に推奨されている。しかし,K 保持性の特徴から高 K 血症の発症に注意が必要である。腎機能障害や糖尿病 合併例では K 値が上昇しやすいので少量からの使用が原則とされており,さらに中等度以 上の腎機能障害患者や糖尿病性腎症,重度の肝機能障害患者,K 製剤,K 保持性利尿薬投 与中の患者,高 K 血症の患者,相互作用の観点から強力な CYP3A4 阻害薬であるイトラコ ナゾール,リトナビル,ネルフィナビル投与中の患者には禁忌であるが,禁忌以外の CYP3A4 阻害薬と併用する場合には,投与量を 1 日 25 mg とする必要がある。また,併用 薬では ACE 阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)との併用には血清 K 値の 上昇に注意が必要である。