Full text loading...
薬理と治療
Abstract
背景 日本では臨床研究・治験活性化 5 か年計画 2012 で臨床試験を推進し,臨床試験の科学的および倫理的な質に関する支援を唱えている。企業主導臨床試験と比較して研究者主導臨床試験は研究者への支援が特に必要であるとされている。しかし,研究者主導臨床試験の実態に関して調査は十分に行われていない。そこで,研究者主導臨床試験プロトコルの記載の質に関して,2013 年に提案されたSPIRIT(Standard Protocol Items:Recommendationsfor Interventional Trials)2013 checklist の調査項目に対して,その記載の有無を評価し,改善点を検討する。方法東京大学医学部附属病院臨床試験審査委員会にて過去 3 年間に承認された(2009 年 4 月~2011 年 3 月)医師主導の臨床試験(治験を除く)のなかから,対象候補の 130 試験を抽出し 113 試験で本研究への協力の同意を取得し,プロトコルへのSPIRIT 2013 checklist の項目の明確な記載の有無等を評価した。結果 113 試験のうち, ランダム化比較試験(RCT)は 45 件,63 件が RCT 以外の介入試験(うち 62 件が単群の試験),5 件が観察研究であった。ほとんどのプロトコルで必須項目を満たしていたが,SPIRIT 2013 の項目に照らし合わせると 1 試験あたりの項目記載数は共通項目と考えうる 44 項目中平均 29.4 項目(66.9%)であり,最低は 23 項目,最高は 36 項目であった。特に記載が少ない項目(10%未満)として 3 項目(WHO 臨床試験登録データセット,データにアクセスできる権限を有する者,データの公開)が確認された。これらは最近導入された項目である。10~40%の試験でのみ記載のあった項目は 7 項目(プロトコル策定への貢献者の役割と責任,資金提供者の役割,研究組織と委員会,研究実施の環境,リクルートメント方法,中間解析,監査)であった。また,試験期間の延長を 32 試験(28%)で認め,うち症例集積の遅れが原因となった試験は 18 試験であった。結論対象プロトコルの半分は単施設の比較的少数例の試験であり,44 項目のなかにはそれらにとって必ずしも必要ではない記載項目も含まれることを考慮すると,ほとんどの試験ではプロトコルに必要な基本的事項を満たしているとみなされた。しかし一方,新しく導入された項目や信頼性に係る項目等では改善の余地が認められた。これらの項目については,今後手引きを改訂し周知していく必要性がある。また,多くの試験で試験期間の延長がなされており,リクルートメント方法について事前に十分な検討を行う必要性が示唆された。
Data & Media loading...