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【シンポジウム1 ●統計的意思決定に基づく柔軟な臨床試験デザイン】 2 分子標的薬を用いた医師主導治験におけるバスケット試験デザインの利用
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JPY
Abstract
1990 年代以降登場した分子標的薬は,特定のたんぱくや遺伝子といったがんの増殖に関わる分子を攻撃することで,がん細胞の増殖を抑える。有効性は,遺伝子変異のような分子マーカーの有無に応じて得られるものと考えられ,臓器横断的にみられる特徴がある。たとえば,PARP(ポリADP‒リボースポリメラーゼ)阻害薬では,BRCA1/2 遺伝子変異を有するがんに効果があるとされる。PARP は細胞増殖におけるDNA の複製におけるDNA 一本鎖切断を修復する酵素であり,阻害されれば,DNA 二本鎖切断に至る。正常細胞とは異なり,BRCA1/2 遺伝子変異を有するがん細胞では二本鎖切断修復が行われない。こうしてPARP 阻害薬は,BRCA 関連遺伝子変異を有するがんに特異的に作用するメカニズムをもつ。 複数の臓器に有効性が期待でき,治療方法や評価項目が同一であるにもかかわらず,従来の臓器別に評価する臨床試験の枠組みでは,別々の試験として計画せねばならず,非効率である。そこでいくつかの臓器に対し,共通する分子マーカーを有する患者集団において単一のプロトコルを用いて実施するバスケット試験デザインが提案された。試験遂行のための手順を共通化して効率化を図るだけでなく,臓器間で同様な有効性が確認された場合には類似性を考慮した解析手法によって統計的効率を向上させることも可能である。有効性を左右する分子マーカーを有する対象者の割合は,臓器,分子マーカーおよび人種のような集団の特徴に応じて大きく異なる。たとえば,BRCA 関連遺伝子変異は日本の卵巣がん患者ではおよそ15%にみられる1)一方,消化器がんではまれにみられる程度である。希少性のある対象集団であれば,統計的効率が良いデザインを採用し,サンプルサイズを小さくできれば,開発意欲を高めることにつながるであろう。 本稿では,バスケット試験を含む,分子マーカーと臓器の組み合わせを部分試験としてとらえ,全体をひとつのプロトコルに表すマスタープロトコル試験について述べた後,医師主導治験の適用を念頭に置いた数値例を用いながらバスケット試験デザインを紹介する。さらに近年登場したデザインであるために,バスケット試験デザインを採用するにあたり,スポンサー内および規制当局との検討した経験はあまり共有されていない現状を踏まえ,とくにfamily‒wise error rate を制御する観点を紹介し,バスケット試験デザインの利用を積極的に進めるうえでの課題について検討したい。
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