Abstract
うつ病治療のゴールは完全寛解,そして完全な回復である。うつ病の寛解を目指すための戦術としては,治療ゴールの設定,患者教育,最初の治療薬の選択方法,適切な用量の決定,その薬物での治療期間,反応の乏しいときの薬物の切り替え,あるいは抗うつ薬の併用療法や抗うつ薬以外の薬物による増強療法,アドヒアランスの確保,精神療法との併用などが問題となる。しかしこれらの戦術もまだ十分なエビデンスは得られていない。近年,治療抵抗性うつ病に対して,SSRIに非定型抗精神病薬を付加する増強療法への関心が高まっているが,通常のうつ病治療における有用性はまだ確立されていない。うつ病の治療戦略として,単剤治療と併用治療,選択的抗うつ薬療法と複数の神経伝達物質に関係する抗うつ薬療法,副作用の少ない治療と副作用を含め積極的に抗うつ薬を活用する治療がある。これらの戦術,戦略を考慮して,うつ病の寛解を目指した戦略としてまとめ上げたものはまだない。 Key words :augmentation therapy, combination therapy, depression, remission, switching, titration