Abstract
統合失調症の病因として,NMDA受容体機能低下仮説が注目されてきた。グリシン再取り込み阻害薬であるbitopertin(本薬)は,この受容体機能低下を改善することが期待される。そこで,日本人健康男性を対象として,プラセボ対照,単盲検下で,本薬3〜80mgを単回経口投与し,薬物動態,忍容性,安全性及び薬力学的特性を検討した。本薬の曝露量(AUC及びCmax)は用量依存的に増加し,海外試験での曝露量と類似していた。本薬を投与した被験者では,有害事象,生理学的検査,標準12誘導心電図,視力検査及び色覚検査において異常変動は認められず,良好な安全性プロファイルが示された。また,本薬は赤血球への3H-glycine取り込みを用量依存的に阻害した。以上より,本薬80mgまでの単回投与において,良好な忍容性,薬理作用,曝露量の用量依存的な増加が確認され,さらに薬物動態は日本と海外で実施した試験の間で類似していることが示された。 Key words : bitopertin, glycine reuptake inhibitor, glycine transporter 1, pharmacokinetics, schizophrenia