Abstract
パーソナリティ障害に対する薬物療法は,非特異的で,対処的に過ぎないものであると共に,リスクとベネフィットが拮抗してそのバランスを図るのが困難なところが特徴である。その中で境界性パーソナリティ障害は,多くのエビデンスがあり,諸外国でガイドラインも頻回に改訂されていることからこの障害を中心に論考したい。本障害に関するリスクとベネフィットを検討してみると,基盤障害をどのように考えるかという課題と,我が国の医療システムの中で外来を中心に治療する困難さの課題の2つが浮かび上がってくる。海外のガイドラインの推奨する単剤,危機管理のための限定使用を行うには,その背後に構造化された心理社会的接近が不可欠である。我が国のように,外来診療の短時間の枠組みで患者を支えていくには,リスクとベネフィットを考慮しながら,薬物療法は基盤障害を見据えつつギリギリの選択を迫られるというのが現実ではないだろうか。そこで本小論ではそうした現状に資するよう,最新のエビデンスを整理し,今後の展望について検討した。 Key words : personality disorder, risks, benefits, pharmacological interventions, borderline personality disorder