Abstract
高齢者の気分障害,特にうつ病は,しばしば不安や心気的傾向が強く,時に心気妄想,貧困妄想,罪業妄想を伴い,さらには否定妄想や不死妄想も伴ってコタール症候群を呈する場合がある。適切な量の抗うつ薬を投与されても84%の高齢うつ病患者は最初の6〜12週間で適切な反応を示さず,最終的に20〜30%が完全な回復に至らず,これらの患者は機能障害を残し,生活の質も低下し,死亡率も高かったという。このような事態を打開する戦略の1つは,増強療法をうまく使うことである。本稿においては,まず治療抵抗性うつ病に対する増強療法一般に関して最近のネットワーク・メタ解析の結果を紹介する。その上で,高齢者の難治性うつ病における増強療法にしぼり,lithiumやaripiprazole,quetiapineによる増強療法を紹介する。その際に,できるだけ具体的に症例を提示するようにした。最後に,適応外使用であるがmemantineによる増強療法についても言及する。 Key words : elderly depression, geriatric depression, lithium, Cotard syndrome, memantine