臨床精神薬理

Abstract

特発性正常圧水頭症(iNPH)は脳脊髄液の過剰貯留に伴い,歩行障害,認知障害,排尿障害の3徴を認め,シャント術による症状改善が期待できる,治療可能な認知症の1つである。他の認知症性疾患同様,行動・心理症状を認め,その中でも特にアパシーや抑うつは高頻度に発現し,介護負担や排尿障害に関係するだけでなく,機能維持のためのリハビリテーションの阻害要因となる可能性がある。iNPHに対するシャント術は3徴だけでなくアパシーや抑うつにも有効であることが報告されているが,その効果は限定的であり,シャント術後に残存したアパシーや抑うつへの介入は術後の機能維持のためにも重要になる。この残存したアパシーや抑うつへの有効な治療法は確立されていないが,現時点では,行動療法の一環として積極的にリハビリテーションを導入するなどの非薬物的対応を中心に,他の認知症性疾患でのアパシーや抑うつへの対応に準じた介入が望まれる。 Key words : idiopathic normal pressure hydrocephalus, ventriculo-peritoneal shunt surgery, lumbo-peritoneal shunt surgery, depression, apathy