Abstract
うつ病は,疾病によって引き起こされる生活障害(disability)の主要な原因の1つである。近年,休職や失職,労働生産性の低下,さらに自殺を引き起こす要因として社会的に大きな問題となっており,その対策が強く求められている。うつ病の治療において,症状レベルで寛解しても,機能レベルでの回復は容易には達成できないことが報告されており,社会機能の改善を目標とした包括的な介入が求められると同時に,治療薬が惹起する副作用や認知機能障害によって結果的に社会機能を損なわないようにする配慮も求められる。以上を踏まえ,本稿では,うつ病患者の社会復帰において問題となる社会機能障害を概説した上で,厚生労働省が発表している就労可否の判断基準を参照し,社会復帰を考える際に期待される薬物療法について述べる。 Key words : depression, pharmacotherapy, social functioning, absenteeism, presenteeism