Abstract
双極性障害は遺伝的要因が強い疾患とされているものの,環境要因の影響も無視で きず,特に,経過や予後に関しては環境要因から生じるストレスの影響が強いとされてい る。本稿では,双極性障害におけるストレスの影響,ストレスと双極性障害を媒介する因 子,遺伝子との相互作用について,我々の研究を紹介しつつ,関連する論文を概説した。 ストレスのなかでは,幼少期のストレスの影響の重要性を報告する研究が増えており,発 症年齢の若年化や急速交代化,精神病症状,エピソード数の増加,自殺念慮や自殺企図な ど,双極性障害の様々な臨床症状の重症化との関連が示唆されている。また,我々は,幼 少期のストレスとの媒介因子として感情気質の変化に着目して研究を行っている。双極性 障害におけるストレスの影響を明らかにすることは,双極性障害の病態解明のみならず, 有効な治療の糸口になる可能性があると考えられる。 臨床精神薬理 21:457-464, 2018 Key words :: bipolar disorder, life stress, early life stress, affective temperament