Abstract
国民が抱えている症状として痛みはランキング上位であり,また痛みの患者に対応すべき精神症状が多いことを考えると,精神科医として痛みを扱う意味は大きい.最近,国際疼痛学会が痛覚変調性疼痛という考え方を導入し,臨床的にも使われるようになってきた.これは色々な感覚過敏や認知機能障害などを含めた概念であり,ICD-11 の慢性一次性疼痛と重なるが,心因性とは全く異なることを理解する必要がある.さて,慢性疼痛を呈する患者に対しては,抗てんかん薬,抗うつ薬,抗不安薬など精神科医が習熟している薬を用いることも多い.本小論ではガバペンチノイド,抗うつ薬の鎮痛基礎薬理から始め,一次性疼痛の線維筋痛症と身体症状症を例にその臨床薬理を整理する.さらにそれらを踏まえ,慢性疼痛の薬物療法の限界,問題点についても触れる.臨床精神薬理 27:793-800, 2024Key words : chronic primary pain, nociplastic pain, gabapentinoids, antidepressants, pharmacologicaltreatment