Abstract
臓器移植医療の進歩によってこれまで救命できなかった末期臓器不全患者が回復することが多くなった.このような移植患者に併存する精神疾患は長期予後に影響を及ぼすとされ,精神医学的な評価および治療,患者や家族の心理社会的サポ-トが重視されている.また,臓器移植患者に対して精神科薬物療法を行う場合,末期臓器不全の状態を鑑みながら,身体への安全性,免疫抑制薬等との薬物相互作用,服薬アドヒアランスに十分配慮する必要がある.さらに,移植医療は,移植外科医,内科医,看護師,レシピエント移植コ-ディネ-タ-,心理士などの多職種チ-ムで実施されるため,患者の精神医学的問題をできるだけ共有し,移植チ-ムと協働することが重要になる.本稿では,一般的に臓器移植患者やその家族に生じる心の変遷を踏まえた上で,コンサルテ-ション・リエゾンにおける精神科薬物療法の実践について概説する. 臨床精神薬理 27:801-809, 2024Key words : transplant psychiatry, transplantation, psychopharmacology, consultation-liaison