Abstract
リエゾン・コンサルテ-ションの場面では,自殺企図後の診察依頼が少なくない.自殺未遂歴は最も強力な自殺の危険因子であり,その対応には慎重を期す必要がある.自殺企図の背景には複雑な心理社会的要因が存在し,この課題に多職種で包括的なアプロ-チを行うことが理想である.一方で,患者数の増加に伴い,時間的制約や人員不足が生じ,このようなアプロ-チを常時提供するのが難しい現実もある.そのため,場合によっては,簡便な薬物療法に頼ることを避けられない場面もあるだろう.薬物療法を行う際には,その適否や薬剤選択を十分に考慮することが不可欠である.また,本人・家族との治療同盟や連携も重要である.本稿では,過量服薬や自殺企図後の患者に対する薬物療法を実施する際の注意点について,私見を交えて論じる.ただし,薬物療法に偏重するのではなく,心理社会的な支援を組み合わせた治療が重要であることを繰り返し強調しておきたい. 臨床精神薬理 27:811-816, 2024Key words : suicide attempt, overdose, pharmacotherapy, psychiatric emergency, suicide prevention