Abstract
一般科で使用される治療薬(薬剤)による精神症状(特に気分に関連した)は,あらゆる分野のあらゆる薬剤において起こるといっても過言ではない.しかし,実際の臨床場面では,その精神症状が薬剤によるものと判断されず見過ごされる場合も多い.本稿では,薬剤による精神障害(薬剤性精神障害)の診断,とらえ方,特徴,頻度,経過,発現機序,および治療と対策に関して,インタ-フェロン(以下IFN)を通して述べる.IFNは極めて副作用の頻度が高く,副作用の種類も多岐にわたる薬剤である.IFN 療法中に最も認められるのは抑うつ状態で,C 型慢性肝炎患者の場合,約30%に軽度の抑うつ状態が,約10%に重度の抑うつ状態がみられる.ところが,長年肝炎治療の中軸を担ってきたIFN が,C 型慢性肝炎,B 型慢性肝炎いずれにおいても第一選択から外れている.おそらく精神科医がIFN 誘発性うつ病に関してコンサルトを受けることは,今後,稀となると考える.しかし,IFN 誘発性うつ病の研究が精神医学にもたらした貢献度は大きく,ここに改めて総括しておく. 臨床精神薬理 27:833-840, 2024Key words : drug-induced psychotic disorder, side effect, interferon, cytokine, depression