Abstract
不安症において偽幻覚を認める場合でも,そのことがすなわち精神症の診断を正当化するわけではない.社交不安症,身体醜形症,自己臭関連付け症,妄想症身体型を含む概念である対人恐怖症を例に,不安症における偽幻覚,不安症と統合失調症との鑑別,不安症における偽幻覚に対する治療について解説した.統合失調症を疑う特徴として,偽幻覚自体が特定の幻覚に限定されず多彩な症状を呈していること,偽幻覚以外の精神症症状を有していること,偽幻覚の内容に本人の性格傾向や生活史との断絶がみられることなどがあげられる.不安症に偽幻覚を伴う場合にも,基本的には不安症に対する薬物療法や認知行動療法などの精神療法を行うことが原則である.不安症に対する治療が無効な場合や,偽幻覚が多岐にわたったり,不安症の疾病構造が明確でなかったり,偽幻覚以外の精神症症状を併存していたりする場合などには,抗精神症薬の使用を考慮することも必要である. 臨床精神薬理 27:1217-1223, 2024Key words : pseudohallucination, anxiety disorder, at-risk mental state, Taijin-kyofu-sho, pharmacologicaltreatment