外科

Volume 63, Issue 4, 2001
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特集 食道表在癌のすべて 1. 病理
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1. Dysplasia(異形成)と食道扁平上皮癌の病理
63巻4号(2001);View Description
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食道扁平上皮のdysplasia(異形成)と癌の関係について述べた.Dysplasiaと癌の病理学的な鑑別診断が困難な例があり,国内外での病理医間での診断の差がある.本来のdysplasiaは前癌病変としての意味を持つが,現在では癌か否かの診断のつかない病変について用いられている.したがって,実際のdysplasiaという病理診断の中には,炎症による異型,その他の反応性の異型,真の意味での前癌病変,異型の弱い扁平上皮癌が含まれている. -
2. Barrett 食道と食道表在腺癌の病理—最新の話題
63巻4号(2001);View Description
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Barrett 食道と食道表在腺癌の病理に関する最新の情報について論述した.Barrett 食道の定義に関連して,食道胃接合部を食道下部の柵状血管の下端とすることに日本食道疾患研究会で定義付けされ,内視鏡検査のみで診断できることになった.切除標本での食道胃接合部の定義に関しては検討中であり,Barrett 食道腺癌の病型分類では,胃癌と食道癌の病型分類を用いるべきとの異なる意見がある.Barrett 食道内の癌の深達度に関して議論があり,食道本来の粘膜筋板から表層までの癌を粘膜内癌とするとの意見があることを報告した.
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特集 食道表在癌のすべて 2. 診断
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1. 食道表在癌の内視鏡診断??
63巻4号(2001);View Description
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表在型食道癌を拾い上げるポイントは,光沢の消失した粗な粘膜,血管透見像の途絶,発赤である.0-I 型や0-III 型はsm 癌と考えてよく,隆起性病変では高さと大きさ,辺縁の立ち上がりの形状に注意する.IIc型の診断にはトルイジンブルー・ヨード二重染色法が有用である.微細顆粒が多数見られたり,顆粒が目立つ場合はm3以上の所見である.深い陥凹,粗大結節,皺襞や絨毯状の肥厚はsm浸潤を考える.深達度を決定する部分を見極め,二重染色所見と対比する必要がある. -
2. 食道表在癌の超音波内視鏡診断
63巻4号(2001);View Description
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食道表在癌(sm)の深達度,リンパ節転診断は,治療方針選択の大きな指標となる.すなわち胸部・腹部・頸部の3領域徹底郭清術,2領域郭清術,鏡視下手術によるless invasive surgery,そして内視鏡による治療まで幅を持った治療法の選択肢が深達度と転移リンパ節診断から選択される.超音波内視鏡の最近の進歩として,よい画像の描出法の工夫のほか,3次元画像表示,および転移の有無の判定が治療法に大きな変化を及ぼす表在癌症例には超音波内視鏡下穿刺の手段が開発され治療方針決定に効果をもたらしている. -
3. 食道表在癌のX 線診断—拾い上げ診断と深達度診断—
63巻4号(2001);View Description
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X 線診断の立場から食道表在癌の拾い上げと深達度診断について述べた.拾い上げ診断の方は高濃度バリウムの採用により間接集検の場でもm 癌の発見が可能になった現状を紹介した.深達度診断に関しては治療法の選択に対応するため表在癌の側面像の変形を7型に分類し,その側面変形と正面像の各所見の組み合せによって亜分類レベルの診断法を試みた. -
4. 食道表在癌の病理学的・分子生物学的診断
63巻4号(2001);View Description
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食道表在癌の特徴は粘膜癌(M 癌)と粘膜下層癌(SM 癌)の間にリンパ節転移,予後に大きな差が存在することである.このような大きな差が生じる原因を分子生物学的に検討した.食道癌の予後に影響を与える癌遺伝子ならびに癌抑制遺伝子異常としてc-erbB2,erbB,hst1/int2,cyclinD1,c-myc,MDM2,Rb,p53,p16,p21,p27などや細胞間接着分子(E 型カドヘリン,カテニンなど)の減弱発現,血管新生因子,増殖因子などの過剰発現が報告されている.今回これらの分子について検討したが,解析症例が少ないこと,全体の予後が良好なことから明解な差異を見いだすことができなかった.癌そのものが粘膜下層に浸潤するとともに何らかの遺伝子変化を遂げるとは考え難い.粘膜下層に存在する各種の細胞からの刺激物質により癌細胞がその機能を変化させると考えるのが妥当のようである.今後の研究の発展を待ちたい.
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特集 食道表在癌のすべて 3. 治療
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1. 食道表在癌の内視鏡的治療
63巻4号(2001);View Description
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食道表在癌に対するEMR は,日本が世界をリードする代表的な治療法の一つである.1988年代より始められ,手技も確立し,安全かつ確実に施行されるようになった.EMR の最大の利点は外科手術と異なり低侵襲で食道が温存される点である.このような,大きな利点を有するが故に,適応も徐々に拡大される傾向にある.本稿では,われわれの施行しているEMR の実際と治療成績について,また根治性を損わない適応拡大は如何にあるべきかについて述べる. -
2. 食道表在癌の手術的治療
63巻4号(2001);View Description
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食道癌の診断技術の向上に伴い適切な進行度診断が行われ,治療方針においても従来の標準的治療から個別化した治療,つまりオーダーメイド化したものに変貌してきている.食道表在癌の治療において,リンパ節転移を有しないm1〜m2癌に対する治療法は,主病巣の切除すなわち内視鏡的粘膜切除術が中心であり,m3〜sm1癌に対する治療法は施設によってさまざまであり,縮小手術か標準手術かで議論を呼ぶところである.sm2,sm3癌では30%以上のリンパ節転移を有するため,一般に進行癌に準じた根治術ないし胸腔鏡下手術の適応とされている.食道表在癌に対する手術的治療法を中心に概説する. -
3. 食道表在癌の鏡視下手術
63巻4号(2001);View Description
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食道表在癌に対して,鏡視下食道切除・再建術(HALS 併用)を施行している.鏡視下食道切除・再建術(HALS 併用)におけるリンパ節郭清は,腹部操作ではHALS の導入により開腹術に較べても遜色がなくなった.症例による差が解消して,むしろ食道裂孔部の良好な視野展開という意味では鏡視下手術のほうが優れているとも考えられる.一方,胸部操作は,現状では開胸術の郭清に較べると,鉗子の種類,軸制限の問題が残り,まだ不充分になりやすいと考えている.とくに縦隔左側の郭清が制限される傾向にあると考えている.しかし,今後,手技の工夫や器具の工夫により,これらの点が解決され,やがて食道表在癌に対する標準手術になる時が来ると考えている. -
4. 食道表在癌の放射線治療
63巻4号(2001);View Description
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深達度が粘膜下層までのいわゆる食道表在癌は放射線治療のよい適応である.ただし同じ表在癌であっても深達度によりリンパ節転移の頻度に明らかな差が見られ,それらを考慮した治療戦略を立てる必要がある.具体的には深達度mm2までの症例では原発巣のみの治療を,深達度mm3以上の症例では原発巣に加えて所属リンパ節領域に対する照射も行う.外照射に加えて腔内照射を併用することにより局所制御を向上しうることが示唆されている.sm3症例やリンパ節転移陽性例は進行癌と同等の治療を要し,化学放射線療法などの強力な治療を行う. -
5. 食道表在癌の治療成績
63巻4号(2001);View Description
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胸部食道癌ではSM 癌といえども頸部,上縦隔,胃噴門部を含む3領域郭清が必要であり,郭清することにより良好な予後を得られるといえよう.MM およびSM 浸潤が200μm 以下の病変については,リンパ管侵襲や血管侵襲を認めなければリンパ節転移の可能性は非常に低いと考えられ,EMR を施行することは,確立された治療法と考えられる.放射線単独療法は化学療法を併用できない患者にのみ施行すべきと考えられる.放射線化学療法は外科手術療法に匹敵する治療法である可能性があり,臨床試験の結果が待たれる.
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特集 食道表在癌のすべて 4. 食道表在腺癌の診断と治療
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4. 食道表在腺癌の診断と治療
63巻4号(2001);View Description
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食道腺癌の大半はBarrett 食道を発生母地とするが,表在癌は内視鏡的に病変部を特定することが困難なため欧米では早期診断を目的に内視鏡的サーベイランスをBarrett 食道症例に行っている.Dysplasiaは食道腺癌の前癌病変とされるが治療方針にコンセンサスは得られていない.サーベイランスで発見される食道腺癌は早期癌が多く良好な治療成績が得られている.
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書評
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術者の心構え
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連載/外科医のためのクリニカルパス実践講座(4)
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連載/基本手術手技Q&A(4)
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