外科

Volume 64, Issue 2, 2002
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特集 腸閉塞—手術のタイミングと手術術式 1. 総論
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1. イレウスの原因と病態生理
64巻2号(2002);View Description
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イレウスは機械的イレウスと機能的イレウスに分けるのが一般的であるが,外科治療上からは機械的イレウスが重要である.機械的イレウスはさらに単純性イレウスと複雑性イレウスに分けることができる.単純性イレウスでは,腸管内ガス,液体の貯留,腸管内圧上昇,水分・電解質の喪失が主な病態となる.病態の進行に伴う腸管の循環障害から重要臓器不全やショックなど重篤な病態への移行も考慮した治療が必要である.イレウスの病態における消化管ホルモンの関与については,VIP はイレウスの病態における重要なメディエーターとなる可能性があると考えられている.またソマトスタチンや,その類似物質であるoctreotideはイレウスの薬物治療として注目されている.複雑性イレウスでは腸管の血行障害が主たる病態で,発症と同時に腸管の血流障害が出現し,SIRS,BT までの一連の病態はきわめて急速な経過で進行し重篤化するので,早期の診断治療が不可欠となる.BT の原因は,腸管内の常在細胞叢の変化,腸管上皮細胞の防御能低下,宿主免疫防御機能の低下,の3点があげられるが,複雑性イレウスではBTは必発で,エンドトキシン対策,抗メディエーター療法はこれからの重症イレウスにおける大切な治療であり,早期の外科的治療と同時に外科感染症としてのこれら周術期管理が必要となる. -
2. イレウスの画像診断
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イレウスの画像診断では,イレウスの基本として先ず機能的と機械的イレウス,機械的イレウスでは大腸と小腸イレウス,とを鑑別する.機械的イレウスでは,既往歴・現病歴・腹部理学的所見・腹部単純X 線検査などからその原因を特定し,US,CT,注腸検査などの特徴的画像所見から診断可能なイレウスを鑑別する.小腸絞扼性イレウスの画像診断では,両端閉塞となった絞扼腸管を腹部単純X 線検査・US・CT で捕らえることが重要である.単純性イレウスでは,保存的減圧治療と平行した早期の消化管造影からその重症度診断を行うが,この消化管造影で絞扼性イレウスの早期拾い上げも可能となる. -
3. 機械的イレウスの初療と手術適応
64巻2号(2002);View Description
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腹痛が機械的イレウスによると診断したら,次には単純性イレウスか,絞扼性イレウスかを鑑別することである.それには発症,現病歴の問診,身体的所見の視診,触診,打診,聴診,さらにはX線写真の所見を正しく把握することである.これらの所見から絞扼性イレウスならば,ただちに緊急開腹手術となる.一方,単純性イレウスでは一般的には,イレウス管を用いて腸管の減圧を試み,全身状態の改善に努めながら,保存的治療の効果を刻々と把握する.改善があればよいが,改善がなく,腹膜炎が増悪すれば,いつでも開腹手術となる. -
4. 麻痺性イレウスの治療
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麻痺性イレウスは開腹術後などに遭遇するが,原因としては神経性および液性の腸管蠕動調節因子が関与している.局所の炎症による麻痺では腸管壁内のマクロファージが重要な役割を果たしている.術後麻痺性イレウスの予防は,全身管理,愛護的手術,術後疼痛管理などが重要である.治療は蠕動亢進薬を中心に保存的に行い,手術療法は極力回避する.高圧酸素療法も試みるべき治療法である.
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特集 腸閉塞—手術のタイミングと手術術式 2. 各論
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1. 癒着性イレウス
64巻2号(2002);View Description
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癒着性イレウスに対する手術適応とタイミングをA. 直ちに手術,B. 早期に手術,C. 慎重に手術,D. 手術しない,に分けた.全身状態,腹部所見,画像診断,チューブ減圧の状況などから,的確な判断が要求される.手術術式は主にA. 索条物の切離,B. 癒着剥離による屈曲・捻転などの解除,C. 腸切除,D. バイパス,があり,癒着の状態やリスクに応じた選択を行う.癒着剥離はハサミや電気メスによる鋭的操作を基本とし,層に忠実な剥離を行うトレーニングが望まれる. -
2. 大腸機能的イレウス
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機能的イレウスは,腹部膨満,腹痛,便秘を主症状とし,特徴的な形態をであるmegacolon を呈する.診断は器質的原因疾患の除外であり,障害部位の的確な診断が重要となる.大腸機能的腸閉塞の外科治療の適応は,あくまでも他の保存的治療が存在しない場合である.Ogilvie症候群の症状は一過性でり,減圧などの保存的治療が原則である.CIIPは成因が不明で今のところ有効な治療法はない. -
3. ヘルニア嵌頓
64巻2号(2002);View Description
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ヘルニアは日常最もよく遭遇する疾患の1つであり,その嵌頓は内容が腸管であるときにはイレウスの原因となる.さらにヘルニア内容の血行障害を伴う場合には急速に全身状態の悪化を引き起し,緊急手術を必要とする外科救急疾患であるため,その診断と治療には細心の注意が必要である.本稿ではヘルニア嵌頓の診断,手術適応および手術術式について要点を概説した. -
4. 腸重積症
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成人腸重積症では血行障害が疑われるときには緊急手術が必要となるが,その他ではイレウス管などで保存的治療を行うとともに,重積腸管の部位や原因疾患を把握した上で待期手術を行う.手術は可能ならば整復後に切除するのが望ましいが,用手的整復が困難であったり,重積腸管のviabilityが疑わしいときには重積腸管とともに切除する.腸重積をきたす大腸癌は比較的早期の症例が多く,全身状態が許すならばリンパ節郭清を伴った一期的切除を選択すべきである. -
5. 炎症性腸疾患におけるイレウス
64巻2号(2002);View Description
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炎症性腸疾患,とくにCrohn 病においてイレウスは大きな合併症である.Crohn 病は若いときに発症することが多く,イレウスを繰り返し長期入院が必要になると患者のQOL を著しく低下させる.このような場合手術が選択されることがあるが,外科医は再発,再手術の可能性と患者のQOL を考え,適切な時期に必要最小限の手術を選択すべきである. -
6. 腸間膜動静脈閉塞症
64巻2号(2002);View Description
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腸間膜動静脈閉塞症による腸閉塞は広範囲の腸管壊死に至り,予後不良の疾患である.血管造影などによる早期診断と経カテーテル的血栓溶解,動注療法,抗凝固療法など適切な治療が行われれば手術に至らないで軽快することもあるが,腹膜炎をきたしたり保存的治療にて悪化する場合には緊急手術の適応となる.広範囲の腸管切除は短腸症候群をきたすために,できるだけ血行再建を行い,予後の改善を計るべきである. -
7. 腹腔鏡下イレウス解除術—診断と治療—
64巻2号(2002);View Description
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低侵襲性の利点を有する腹腔鏡下イレウス解除術は開腹手術との間において差の大きな術式のひとつである.術前の動態下超音波癒着診断と小腸造影にて癒着部位を推測し,3〜4ヵ所のトロカール孔で癒着剥離を行えれば,低侵襲手術としての利点ばかりでなく,再癒着防止の点で有利である.自験例33例のうち術後平均入院日数は腹腔鏡下癒着剥離術(25例)の7.8日,腹腔鏡補助下小腸切除吻合術(5例)の11.3日と短期であり,後者であっても本法の利点は損なわれなかった.合併症で腸損傷は1例に発生し,再イレウスの発生は1例であった.
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特集 腸閉塞—手術のタイミングと手術術式 〈トピックス〉
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(1) 外科的イレウス防止法
64巻2号(2002);View Description
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外科的イレウス防止法としては,Noble手術,あるいはその変法であるChilds-Phillips手術などがある.これらは,漿膜欠損部など癒着を生じる可能性の高い部分が存在する場合,あらかじめ癒着による通過障害を生じないように腸管を固定してしまう手術である. -
(2) 吸収性薄膜(セプラフィルム)による腸管癒着防止法
64巻2号(2002);View Description
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セプラフィルムは,癒着防止に関する有効性と安全性が確立された合成吸収性癒着防止材である.腹部および骨盤腔の手術であれば疾患に関わらず2枚まで保険請求可能なため当科では2000年10月よりセプラフィルムを積極的に使用している.小児外科領域を含め89 例に使用し6例(6.7%)に腸閉塞をきたした.そのうち開腹に移行した3例の所見では,正中切開創部の癒着が軽度であったため,イレウスの減少,再手術時の剥離操作を容易にするなどの効果を期待できると思われた.
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臨床と研究
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手術手技
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臨床統計
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新しい検査法
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連載/外科医のためのクリニカルパス実践講座(14)
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連載/基本手術手技Q&A(14) 開腹,閉腹
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術者の心構え
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症例
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