外科

Volume 64, Issue 3, 2002
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特集 外科臨床と基礎医学—第102回日本外科学会記念号 巻頭言
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特集 外科臨床と基礎医学—第102回日本外科学会記念号1. 遺伝子技術の進歩と外科臨床
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1. 遺伝子技術(マイクロアレイ)と外科臨床
64巻3号(2002);View Description
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ゲノム・遺伝子研究およびDNA マイクロアレイの登場は医療研究に新たな展開をもたらした.外科関連領域でも,良悪性の鑑別・悪性度診断,手術,放射線や抗癌薬などの個別療法(オーダーメイド治療)など画期的な医療が登場する可能性がある.DNA マイクロアレイの最大の利点は超多量遺伝子の発現もしくは配列情報の提供にあるが,いまだ開発途上の技術である.DNA マイクロアレイとそれを用いた医療応用研究について概説する. -
2. HVJリポソームによる遺伝子治療
64巻3号(2002);View Description
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遺伝子治療が始まって約10年が経とうとしている.しかし研究室レベルでは大きな進歩はみられたが,未だに臨床研究では遺伝子治療の効果は確立されていない.この大きな原因の1つが遺伝子導入効率の低いことである.本稿では非ウイルス型ハイブリッドベクターであるHVJ リポソームを使用した治療法について述べる.HVJ リポソームは,これまでに大腸癌やメラノーマなどの癌細胞,あるいは血管や心筋,肝臓などの各臓器での良好な遺伝子導入が確認されており,治療効果が得られている. -
3. 遺伝子技術と免疫治療—テーラーメイド癌免疫治療:ゲノムからベッドへの先導役—
64巻3号(2002);View Description
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ヒトゲノムドラフト解明は画一型診断治療から個々に最適な医療すなわちテーラーメイド型の診断・治療を可能としつつある.癌の能動的特異免疫治療分野において,キラーT 細胞を誘導可能なペプチドを用いての臨床研究も急展開しつつある.われわれはこれまでに同定した癌拒絶抗原ペプチドの一部を用いて高度進行上皮癌症例に対するペプチドワクチン療法臨床試験を施行している.当初のレジメは従来(画一)型であり,安全性やCTL 誘導能は確認されたものの,抗腫瘍効果は認められなかった.そこで担癌患者個々の免疫反応特性に基づいたワクチンを選択投与するCTL precursor-orientedペプチドワクチン療法を開発開始した.本療法によって早期より特異免疫能の誘導や増強が惹起され,さらに抗腫瘍効果が評価可能症例の半数近くに認められるようになった.癌の免疫治療は,HLA 多様性やT細胞抗原レセプターレパトアの広さから,遺伝子技術の進歩を臨床へ導入するテーラーメイド癌治療開発の先導役を果たす分野と考えられ,今後の成果が期待される. -
4. 食道癌における遺伝子研究と外科
64巻3号(2002);View Description
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食道癌における下記の遺伝子研究について紹介した.1)CyclinD1とE-Cadherin が食道癌において予後因子であることが多施設共同研究により明らかとなったことから,この遺伝子解析結果をTNMstageに反映させたところ,予後をよりよく判定できた.2)微小転移検出により反回神経,気管周囲リンパ節の転移状況が頸部リンパ節転移,再発と関連することが明らかとったことから,術中反回神経周囲リンパ節に微小転移が認められる症例では頸部郭清を行い,微小転移が認められない症例では頸部郭清の追加をrandomizeするstudyを開始した.3)SCCmRNA のRT-PCR により食道癌の周術期血中癌細胞の検出を行い,入院時または術中に陽性である症例は再発の危険群であることが明らかとなった.4)腺癌のTGFbeta-TGFR-Smadの増殖抑制シグナル伝達系に対応する扁平上皮癌の新たな増殖抑制のシグナル伝達系としてEGF-EGFR -STAT を見出した. -
5. 複製可能型単純ヘルペスウイルスベクターを用いた遺伝子治療
64巻3号(2002);View Description
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遺伝子治療にはさまざまなstrategyが試みられているが,ほとんどは各種ベクターを用いて,有用遺伝子を標的細胞にdeliver するという方法である.しかしながら,癌細胞が標的となる場合は,標的自体が無秩序に増殖して行き,そのすべての細胞に目的とする遺伝子を導入することは不可能であるといわざるをえない.そこで,ウイルス本来の「複製」という特性を利用した複製可能型ウイルスベクターが癌に対する遺伝子治療の新しい武器として,最近期待されている.一方,その複製を如何にして標的である腫瘍細胞に限局させるかという点が安全性という観点から大きな問題となる.本稿では米国を中心に既に脳腫瘍に対する臨床試験が始まっている複製可能型単純ヘルペスウイルスの特徴を,われわれの研究結果を交えて紹介する.
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特集 外科臨床と基礎医学—第102回日本外科学会記念号 2. 難治癌に対する挑戦
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1. 組織像からみた膵癌の難治性について
64巻3号(2002);View Description
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広範な外科手術を試行しても通常型膵管癌は難治癌である.その最大の理由は膵周囲浸潤が高頻度・高度で,術後も癌が遺残することにあった.膵癌に特徴ともいえる周囲組織浸潤は膵の正常組織構造そのものが癌の進展を容易にしている点にあった(開放系構造).さらに,膵管癌が胃型の粘液表現型をとることが低分化型癌への移行,すなわち,周囲組織浸潤へ関連する可能性も示唆された. -
2. 胃癌の発生と生物学的態度—新しい視点から
64巻3号(2002);View Description
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胃癌はその形質発現により,胃型,腸型,胃腸混合型形質癌に分類が可能で,各々20%,20%,60% の頻度に認められる.この形質発現と胃癌の組織型は相関があり,胃癌の発生初期は分化型腺癌であるが,胃型形質をゆうした腺癌が,未分化型腺癌に移行する.また腸型形質の分化型腺癌は組織型の変化を来す頻度は低い.今後,胃癌は形質別に個別化し遺伝子変異あるいは悪性度の関係などを検討する必要がある. -
3. 難治癌の早期診断技術の進歩—膵管癌早期診断の現状—
64巻3号(2002);View Description
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各種画像診断の進歩により,小膵癌の診断は専門医の精査によって可能となってきている.しかしながら,拾い上げが難しく,何らかのhigh risk groupの設定やスクリーニング法の確立が必要である.現段階では,血清膵酵素の上昇,US での間接所見の拾い上げが重要であり,常に膵癌を念頭に置き,MRCP,EUS,ERCP を積極的に施行していくべきである.また,ts1膵癌・上皮内癌の全国的な規模での画像解析・病理学的解析を行うことが必要であり,専門機関,専門医の育成も重要な課題である. -
4. 癌転移巣形成における遺伝子異常の役割
64巻3号(2002);View Description
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癌転移巣の形成には癌細胞をとりまく微小環境が重要な役割を演じており,血管内皮細胞や接着分子,サイトカイン,増殖因子等の関与が明らかになってきた.癌細胞の遺伝子変異により癌細胞自体の増殖能が変化するのみならず,癌細胞を取り巻く局所環境のコントロールが破綻し転移巣形成が促進されることが判明してきた.P53やSMAD4などの癌抑制遺伝子異常は血管新生や細胞浸潤を亢進させているためMMP inhibitor などの治療効果が期待できる. -
5. 膵癌外科治療の問題点と今後の展望
64巻3号(2002);View Description
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難治癌である膵癌に対する外科切除術は,治療法としてほぼ完成しているが,治療成績は向上していない.膵癌外科治療の問題点を基に,治療成績向上のための戦略について考察した.遺伝子治療を含む分子標的治療の道を模索するとともに,臨床的には小膵癌の発見に努め,さらに病期診断,手術適応を厳密に行い,外科治療全体の成績の底上げを目指すことが当面の課題であると考えられた. -
6. 肺癌に対する分子標的治療戦略の成果
64巻3号(2002);View Description
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肺癌が難治癌である要因として,診断時7〜8割は進行癌であり,多くは化学療法に反応しない.近年,肺癌発症と増殖,浸潤,転移に関わる分子機構が明らかになり,それらが格好の分子標的として創薬が飛躍的に進んでいる.ここでは,欧米での分子標的治療薬の開発状況と難治性非小細胞肺癌に対する治療戦略としてEGF レセプター阻害薬,血管新生阻害薬,MMP 阻害薬などを取り上げ,最新の成果を報告する.
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書評
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連載/外科医のためのクリニカルパス実践講座(15)
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連載/基本手術手技Q&A(15)
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臨床と研究
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術者の心構え
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症例
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