外科

Volume 64, Issue 6, 2002
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特集 膵切離法を考える—膵切離・断端処理と膵消化管吻合 1. 膵切離法
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1. 膵の用手切離—その理論と実際
64巻6号(2002);View Description
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膵の切離にあたって,その切離方法は切離端を閉鎖処理するか,消化管と吻合するかで異なる.前者の場合は,膵切離端からの膵液漏出を防ぐための確実な主膵管の処理が重要である.後者の場合は消化管との癒合が早期かつ確実に生じるよう鋭利な切離端が望まれる.さらに,膵病変が悪性であるか良性であるかにより切離の手技は異なり,悪性の場合には,切離時の膵液の流出による膵液中の悪性細胞の腹腔内散布を皆無にしなければならない. -
2. バイポーラシザースを用いた膵切離
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バイポーラシザースは,ハサミ刃間に高周波電流を通電して凝固切開する器械である.膵切離には,18W,5mm/秒で,凝固切開による切離組織の白色変色域を観察しながら使用し,膵組織に止血用鉗子をかけることなく出血なく膵切離が可能である.また凝固作用は,バイポーラの特性により周囲組織や切離組織に対する障害が少ないため,膵切離面での主膵管切離断端の検索が容易で,膵切離に適した器械である. -
3. ハーモニックスカルペルを用いた膵切離の有用性
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ハーモニックスカルペルは,電気エネルギーを55,500Hz の超音波振動エネルギーに変換して組織中の蛋白質を変性し,正確な切開と低温での凝固作用をもたらす.近年,腹腔鏡外科領域だけでなく,開腹手術にも広く応用され,とくに膵切除術では膵切離にさいして軽微な膵実質組織障害のみで高い止血効果が得られ,膵腸吻合および胃膵吻合においてまったく支障がなく,有用性がきわめて高い.機器の特徴を熟知し,使い慣れることで外科医の技術の差は狭まり,術後合併症の減少にも役立つものと考える. -
4. 超音波外科吸引装置(CUSA)による膵切離と膵管嵌入法による再建
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膵頭十二指腸切除術(PD),膵尾側切除術(DP)における膵の切離に超音波外科吸引装置(CUSA)を使用し,良好な結果が得られている.CUSA にて膵実質を破砕しつつ,出現する分枝膵管,血管を丁寧に結紮切離していく.DP では主膵管を同定後,確実に結紮する.膵断端の虚血,挫滅の原因となる膵実質縫合閉鎖は行わない.PD では,拡張のない主膵管は1cm 以上長く残し,再建は膵管嵌入法を行っている.この再建でも軟らかい膵実質に縫合糸はかけない.CUSA による膵の切離とその後の膵管嵌入法による再建は容易かつ安全性が高く,とくに膵液瘻や膵合不全の発生頻度の高い,膵管拡張のない非線維化膵には最適の手法である. -
5. 自動縫合器を用いた膵切離
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主として腹腔鏡下での自動縫合器を用いた膵切離の実際について概説する.自動縫合器を用いた膵切離は,従来の用手法に比較して膵瘻の発生が少なく,出血をきたさず,簡便かつ迅速に施行できる.問題となるのは自動縫合器による膵実質の裂傷であるが,これは膵実質を自動縫合器で均一にしめ込むことにより回避できる.腹腔鏡下手術の適応拡大などの背景もあり,自動縫合器を用いた膵切離は,用手法にかわる手技として定着すると考える.
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特集 膵切離法を考える—膵切離・断端処理と膵消化管吻合 2. 尾側膵切除における断端処理
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1. 尾側膵切除における断端処理のピットフォール
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尾側膵切除術は確実な止血と膵液瘻の防止のための膵管の閉鎖が重要である.従来からの魚口型あるいは垂直に膵切離を行った後に膵断端を縫合する方法の他に超音波凝固切開装置(ハーモニックスカルペル),超音波外科吸引装置CUSA),自動縫合器が使用されている.ハーモニックスカルペルは止血能に優れるが,膵管の結紮を要する.CUSAは現れる膵管,血管をすべて確実に結紮切離する必要がある.自動縫合器は裂傷を避けるため膵臓を扁平化し,ゆっくり把持するなどの工夫が必要である. -
2. 腹腔鏡下膵体尾部切除における膵切離と断端処理
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近年,腹腔鏡下膵体尾部切除は膵体尾部病変に対する手術術式の一選択肢として認識されつつある.膵切離には腹腔鏡用自動吻合器が使用されることが多い.その結果として20% 前後の症例で膵液瘻が発生している.本稿では鏡視下手術による膵体尾部切除後の膵液瘻などの合併症を防ぐ目的で,手技および術後管理上の工夫について述べる.
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特集 膵切離法を考える—膵切離・断端処理と膵消化管吻合 3. 縮小手術における膵切離のテクニック
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1. 膵鉤部切除における膵切離のテクニック
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低悪性度あるいは良性である膵管内乳頭腫瘍が発見される機会が増すに応じて,膵の縮小(局所)切除術に対するニーズが生じてきた.われわれはとくに好発する膵鉤部における術式を考案し報告してきた.その手技におけるおもな注意点は十二指腸の血流保持と主膵管の損傷回避であり,基本的には腫瘍に対して必要最小限の切除で十分であることを念頭に置くことである.本稿ではその具体的なコツにつき示した. -
2. 膵頭十二指腸第II部切除術(PHRSD) における膵切離のテクニック
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機能温存をめざした縮小手術として,膵頭部と十二指腸第II 部を大小乳頭を含んで3〜4cm 切除する膵頭十二指腸第II 部切除術(pancreatichead resection with segmental duodenectomy:PHRSD)を施行している.十二指腸第I 部の血流維持と術後縫合不全による出血防止のため,胃十二指腸動脈はできる限り温存している.十二指腸第III 部の血流維持のため前下膵十二指腸動脈を温存する.十二指腸端々吻合,総胆管十二指腸端側吻合,膵胃吻合にて再建する. -
3. 胆道・十二指腸温存膵頭切除術(DpPHR)における膵切離のテクニック
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当科では1985年以来DpPHR を導入し,胆道および十二指腸機能温存に配慮した改良術式として報告してきた1)〜4).本術式において胆道温存のポイントは,第一には胆管前面に沿った剥離を行って胆管に分布する後上膵十二指腸動脈(PSPDA)を温存することである.第二には主膵管離断のさいに,右背側に近接する胆管の損傷を回避することである.十二指腸温存のポイントは,十二指腸第III 部で前下膵十二指腸動静脈(AIPDA, V)の温存のため膵被膜に沿って切離をすすめることである.
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特集 膵切離法を考える—膵切離・断端処理と膵消化管吻合 4. 膵頭十二指腸切除術における膵消化管吻合
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1. ステントを用いない膵管空腸粘膜吻合法
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ステントを用いない膵管空腸粘膜吻合法(no-stent 法)では,主膵管壁と空腸全層をwatertight に吻合することによって消化活性をもつ主膵管膵液と本来非活性の断端漏出膵液を完全に分離することが肝要である.確実な粘膜吻合が行われた症例ではステントは必要とせず,ステントの有無による早期手術成績に差はなかった.長期遠隔時にはむしろ耐糖能低下や膵管拡張の点でno-stent 法が優れていた. -
2. ステントを用いる膵管空腸粘膜吻合法
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膵臓手術において,膵消化管吻合は手術の成否を決定する重要な手技である.ステントを用いる膵管空腸粘膜吻合法は膵管と空腸粘膜をwatertightに吻合する方法であり,特別な器械を必要とせず確実な縫合を行える.われわれは1997年以降,膵頭十二指腸切除術の全例に本法を施行しているが,縫合不全発生率は4% で,臨床的に問題となる膵液瘻はない.本法は膵管非拡張症例や尾側膵非萎縮症例においても安全に行える吻合法である. -
3. ステントを用いる膵空腸端側吻合法 —膵管空腸吻合+膵空腸密着縫合
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膵消化管吻合術後の縫合不全は,重篤な合併症を招きやすいため,古くより吻合法の工夫が試みられてきた.筆者らは,1984年4月より2001年12月までに,幽門輪温存膵頭十二指腸切除(PpPD)266例,PD37例を経験し,膵空腸吻合法につきほぼ満足すべき成績を得ている.本稿では,2001年以来採用している,手技が容易で,安全性と吻合口の開存性を兼ね備えている“膵管空腸吻合+膵空腸密着縫合法”の実際につき記述した. -
4. 二期的膵空腸吻合術
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膵頭十二指腸切除後のもっとも安全な再建法としての二期的膵空腸吻合術の手技を紹介する.一期手術ではChildの変法で再建し,膵断端と挙上空腸脚の漿膜筋層を縫合して膵管を外瘻とする.約3ヵ月後に二期手術として膵空腸吻合を完成させる.吻合部の状況や膵管径によってステント法または外瘻法を選択する.大量肝切除を伴う膵頭十二指腸切除や肝硬変症例,正常膵で膵液中の酵素値の高い例などのハイリスク症例に対する膵頭十二指腸切除がこの安全な再建方法のもっともよい適応である. -
5. 非拡張膵管に対する膵胃吻合—嵌入+直視下膵管胃粘膜吻合法
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膵頭十二指腸切除後の膵再建のさい,残膵が機能的・形態的に正常な非拡張膵管症例に対しては,安全性と長期膵管開存を目的に,膵断端を胃内に嵌入させ膵管と胃粘膜とを直接吻合する膵胃吻合を施行している.手技は胃の前後壁を切開し,膵断端を胃内に嵌入し垂直マットレス縫合後,胃内で直視下に膵管と胃粘膜を吻合する.術後胃内容停滞が問題ではあるが,縫合不全は4% と低率で,長期の膵管拡張と胃粘膜への影響も軽微である. -
6. 膵胃物吻合—膵穿通外列縫合+膵管胃粘膜吻合法
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われわれは1987年より,膵胃吻合法と膵腸吻合法の比較検討から膵胃吻合法の高い安全性および膵内外分泌機能が膵腸吻合法に劣らないことなどを明らかにしてきた.本稿では,現在われわれの行っている膵穿通外列縫合+膵管胃粘膜吻合法についてその手技を中心に述べる.本法の特長は,正常膵にみられる滲出性膵液漏を防止するための胃後壁と膵との穿通外列縫合にある.すなわち,吻合面に死腔を形成しないように確実に密着させることが大切である.
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術者の心構え
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連載/外科医のためのクリニカルパス実践講座(18)
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連載/基本手術手技Q&A(18)
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臨床と研究
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臨床経験
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症例
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◇Mesh-plug法による内鼠径ヘルニア術後に発症した大腿ヘルニアに対しmesh-plugを用い大腿法にて修復した1例
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