外科

Volume 64, Issue 7, 2002
Volumes & issues:
-
特集 乳癌の診断と治療—新しい展開から 1. 病態
-
-
1. 乳癌発症のメカニズム
64巻7号(2002);View Description
Hide Description
乳癌はホルモン依存性が強いという特徴をもっているが,他の癌同様に遺伝子異常の蓄積により発生する.乳癌の中でも,その約10% を占めるとされる家族性乳癌のBRCA1,BRCA2 や乳癌甲状腺癌を特徴とする遺伝性過誤腫疾患であるCowden病のPTENでは,その原因遺伝子や発癌機構が比較的よく解明されている.その一方で,乳癌の大部分を占めている孤発性乳癌ではその発癌機構にc-myc,erbB2,ccnd1,int2 などの癌遺伝子の増幅とp53,CDH1 などの癌抑制遺伝子の変異が複雑にかかわっており,また乳管癌と小葉癌とではかかわっている遺伝子が異なっているなど,その発癌機構の多くが依然として解明されていないのが実情である.本稿では乳癌関連遺伝子を紹介し,その発癌機構として解明されているものを紹介する. -
2. 乳癌のハイリスクグループと化学予防
64巻7号(2002);View Description
Hide Description
タモキシフェン(tamoxifen)による乳癌の化学予防の成功は,乳癌治療戦略の新しい展開,すなわち治療から予防の時代への転換を示唆するたいへん重要な出来事であるように思える.とくに乳癌罹患率の増加が著しい日本においては,乳癌予防は今後ますます重要になっていくものと想像される.本稿では,乳癌のハイリスクグループの同定と,それに基づく化学予防の可能性について概説する. -
3. 生体リズムからみた乳癌とホルモン
64巻7号(2002);View Description
Hide Description
“生体リズムからみた乳癌とホルモン”とのテーマに対し,女性の一生涯におけるエストロゲン環境の変化,環境ホルモン,ホルモン補充療法,月経周期と手術時期などの因子と乳癌発癌の関連について,これまでの報告に基づき解説する.乳癌は強いホルモン依存性をもち,その治療においてホルモンの関与を考慮に入れることは必須である.この分野にはこれからも多くの知見が示されるものと思われ,今後の新展開に期待したい.
-
-
特集 乳癌の診断と治療—新しい展開から 2. 診断
-
-
1. 乳癌の早期発見
64巻7号(2002);View Description
Hide Description
早期乳癌比率が40.3% である日本女性(1998年)に比べ,米国白人女性(1997年)が57%と高いのは,マンモグラフィ検診受診率の差による.マンモグラフィ検診は50歳以上では,死亡率減少効果を示す十分な根拠があり,40歳代については死亡率減少効果を示す相応な根拠があるとされている.マンモグラフィ検診が普及することにより早期乳癌がふえ,乳癌死亡率の上昇に歯止めがかかることが期待できる. -
2. ヘリカルCTによる乳癌診断
64巻7号(2002);View Description
Hide Description
ヘリカルCT による乳癌診断について,検査・読影を行っていくうえでの留意点と期待される診断精度について述べる.また,マンモグラフィ(MMG),超音波検査(US),MRI など他の検査法と対比し,乳癌診断の中でのヘリカルCT の役割,適応となる状況について述べる.ヘリカルCT は乳癌と,その乳管内進展巣にsensitivityの高い検査法であり,術前の拡がり診断を行ううえで有用である. -
3. MRIによる乳癌診断
64巻7号(2002);View Description
Hide Description
MRI 用造影剤Gd-DTPA を用いたdynamicMRI により乳癌の診断精度は目覚ましく向上している.現在では乳腺疾患の良性・悪性の鑑別のみならず,乳房温存術にさいし欠かすことのできない拡がり診断においてもMRI の有用性が認められている.さらにMRI 下マーキングや生検も実用化されつつあり,乳腺領域におけるMRI の役割は診断にとどまらず,将来的には治療にまで及ぶことが期待される. -
4. 乳癌におけるステレオガイド下針生検
64巻7号(2002);View Description
Hide Description
ステレオガイド下乳房針生検は,非触知石灰化病変の診断のためにいまや不可欠な検査法であり,持続吸引式針生検装置(マンモトーム(R))の登場により,低侵襲でより確実な検体採取が可能となった.この方法で診断される乳癌の多くが非浸潤癌であり,乳癌の早期診断,縮小手術の増加に大きな役割を果たすと考えられ,針生検標本を診断できる病理医の育成や早期の保険適用が望まれる.
-
-
特集 乳癌の診断と治療—新しい展開から 3. 治療
-
-
1. 乳房温存手術
64巻7号(2002);View Description
Hide Description
乳房温存手術は乳癌に対する標準的治療法としての地位を確立したが,放射線非照射症例の選別による治療の個別化,非浸潤性乳管癌に対する乳房温存療法,術前化学療法を用いた適応の拡大など,解決すべき問題が生じている.これら問題の解決により,患者のQOL はさらに向上するものと思われる. -
2. 乳癌におけるセンチネルリンパ節生検
64巻7号(2002);View Description
Hide Description
乳癌に対するセンチネルリンパ節生検は,腋窩リンパ節転移の正確な診断と郭清省略による術後QOL の大幅な改善ができる方法として乳腺外科医に不可欠な手技である.郭清省略は,その施設で精度の高い方法が確立されていることと,腫瘤径の小さな症例から始めて徐々に適応を拡大することが重要である.センチネルリンパ節生検は,微小転移の診断,局所麻酔下のday surgery,非浸潤性乳管癌の治療方針などいくつかの点で乳癌の治療体系を大きく変革しつつある. -
3. 乳腺内視鏡下手術
64巻7号(2002);View Description
Hide Description
乳腺に対する手術は良・悪性を問わずより高い整容性を要求される手術である.内視鏡手術は遠隔操作により手術瘢痕を目立たない場所への移動と縮小化により乳房上の手術瘢痕を最小限に留めることができ,より高い整容性が期待できる.現在,外側アプローチ,腋窩アプローチ,乳輪アプローチによる乳腺内視鏡下手術が施行されており,本稿ではそれらの術式の特徴と術式の実際について述べる.乳腺内視鏡下手術は本年度より保険適用となり今後ますます普及する術式と考えられる. -
4. 乳房再建手術とその適応
64巻7号(2002);View Description
Hide Description
乳房再建は,肉体的のみならず精神的なリハビリテーションとしてすでに認識されている.しかし一方で,再建術のインフォームドコンセントが外科医から行われないために,受けられずにいる患者も少なくない.本手術には人工物による再建,自家組織による再建,両者の併用があり,また時期も切除と同時に行う一期再建,期間をあけて行う二期再建がある.今後はこれらの情報を患者に正確に提示可能な外科との連携の確立が必要である. -
5. 乳癌の化学・内分泌療法
64巻7号(2002);View Description
Hide Description
乳癌術後補助化学療法は,CMF 療法からアンスラサイクリンを含んだ化学療法へとシフトしつつある.タキサンに関しては有望な薬剤ではあるものの,現時点では術後補助療法としての位置づけは確立されていない.術後補助内分泌療法に関しては,閉経前乳癌においてはGnRH アナログの重要性が認識され,閉経後乳癌においてはアロマターゼ阻害薬がtamoxifen(タモキシフェン)にかわり,今後,標準的内分泌療法となるものと思われる. -
6. 乳房温存における放射線治療と照射後障害
64巻7号(2002);View Description
Hide Description
乳房温存療法は近年増加傾向にあるが,この治療は長期予後を十分考慮した方法であるため,乳房温存術後の放射線治療(切線照射)は慎重に行う必要があり,照射後の障害についても注意を要する.一般的には切線照射は肺野の一部のみ照射され,ほとんどは臨床上問題になることはない.しかし時として照射野外に出現する肺障害(BOOP 様肺病変)については,非常にまれではあるが,知っておく必要がある. -
7. 再発乳癌への治療ガイドラインから新しい展開へ
64巻7号(2002);View Description
Hide Description
再発乳癌に対する治療法は,FDG-PET検査による全身検索での的確な再発部位の同定を基礎として,内分泌療法での選択的アロマターゼ阻害薬の使用と化学療法剤でのタキサン系薬剤を中心としたアンスラサイクリン併用やtrastuzumab併用による第一選択あるいは第二選択薬剤としての新しい展開がみられる.患者QOL を保つ投与法とともに,生存期間の延長に寄与しうるさらに新しい治療法への芽吹きがみられる.
-
-
術者の心構え
-
-
-
連載/外科医が知っておくべき麻酔管理の基礎知識(1)
-
-
-
臨床経験
-
-
-
新しい検査法
-
-
-
書評
-
-
-
連載/基本手術手技Q&A(19)
-
-
-
症例
-
-