外科
Volume 64, Issue 8, 2002
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特集 良性胆道疾患治療の最前線 1. 胆嚢結石症の治療
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1. 腹腔鏡下胆嚢摘出術の新しい工夫
64巻8号(2002);View Description Hide DescriptionTwin-Port(八光メディカル,長野)と3mm 細径鉗子を使用した2孔式腹腔鏡下胆のう摘出術,vale knot を用いた胆のう管の結紮処理,ポートメルによるポートの固定など,腹腔鏡下胆のう摘出術(LC)におけるわれわれの工夫を紹介する.コンセプトは低侵襲,異物を残さない,低コスト,簡便性である. -
2. 腹腔鏡下胆嚢摘出術術後合併症とその治療
64巻8号(2002);View Description Hide Description腹腔鏡下胆のう摘出術は,適切な手術手技と解剖学的知識があれば安全な術式と考えられる.標準術式となった現時点でも多くの合併症が発生している.術中合併症としては,とくに胆管損傷には注意が必要で,解剖学的誤認を予防するためにもCalot三角部の十分な剥離が必要である.術後合併症としては胆汁瘻の早期発見が重要で,損傷の部位により手術・ENBD などによるドレナージ・経過観察などの治療方法を選択すべきである.術中から術後の合併症を熟知し,その合併症に対する対処方法を把握しておくことは必要である. -
3. 胆石症に対するday surgeryの現状
64巻8号(2002);View Description Hide Description胆のう結石症に対するday surgery(以下,DS)について,当科の症例から現状や問題点につき述べる.1999 年5月からDS を採用し,DS を希望し適応がある症例に施行した.2002年3月までに腹腔鏡下胆のう摘出術(以下,LC)は224例あり,DSを企図し施行したのは36例で,現在まで全例に遂行しえた.DS は,入院日数の短縮や入院費の減少に役立っており,患者は経済的・時間的・精神的負担も軽く満足度は高かった.しかしDS では,術後合併症が発症したさいの救急体制や十分なインフォームドコンセントが重要であると思われた. -
4. クリニカルパスとその効果
64巻8号(2002);View Description Hide Description腹腔鏡下胆のう摘出術はクリニカルパスの作成・導入しやすい治療である.クリニカルパスはスタッフが共同で作成した,患者の入院中のすべての診療予定をまとめた患者治療計画表である.クリニカルパス導入により,科学的根拠に基づいた医療が提供されることになり,医療の質と効率を向上させることが可能である.また,治療経過について患者自身に理解を求め患者中心の医療を行うことになり,患者の満足度を高めることが可能である.
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特集 良性胆道疾患治療の最前線 2. 胆管結石症の治療
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1. 胆嚢胆管結石—腹腔鏡下胆嚢摘出術+胆管切開切石
64巻8号(2002);View Description Hide Description胆管結石は胆のう結石手術にさいし10〜15%に合併する.腹腔鏡下胆のう摘出術が胆のう結石症に対する標準術式となった現在,胆管切石術を腹腔鏡下に施行するのは一期的な治療の完結という点から合理的な治療戦略といえる.手術成績は開腹手術に遜色なく,またT-tube例を除けば入院期間も腹腔鏡下手術の利点を損なわない.現時点で第一選択の治療法としてほぼ満足できる成績が得られている. -
2. 胆嚢総胆管結石—EST+腹腔鏡下胆嚢摘出術の成績
64巻8号(2002);View Description Hide Description総胆管結石症に対する内視鏡的乳頭切開術(EST)後腹腔鏡下胆のう摘出術(LC)の成績を検討した.術後早期合併症は軽度の肝機能障害,胆管炎など,おもにEST に起因するものが5.9% に認められたが,腹腔鏡下総胆管切石術(30%),開腹T-tube挿入術(18.8%),胆管十二指腸吻合術(22.2%)に比較して少なかった.また,術後入院期間も平均12.3日で,ほかの治療法より有意に短く,さらにクリニカルパスを利用して短縮化傾向である.術後3年以上経過観察例では,EST 後LC の結石再発率は4.2% とT-tube挿入術の10.3% より低く,ほかの消化器系愁訴もないことから,優れた術式であることが示唆された. -
3. 胆嚢胆管結石—経皮的乳頭バルーン拡張術併用腹腔鏡下胆嚢摘出術
64巻8号(2002);View Description Hide Description経皮的乳頭バルーン拡張術(PPBD)とは経皮的に乳頭を拡張し,胆管結石を十二指腸に押し出す手技である.黄疸,腹痛,発熱など胆管炎症状で来院した胆のう胆管結石患者にはただちに経皮経肝胆管ドレナージを施行し,肝機能の改善した4〜7日後に全身麻酔下筋弛緩薬投与下にPPBD と腹腔鏡下胆のう摘出術(LC)を同時施行する.胆管結石除石成功率100%(38/38),開腹移行率0%(0/38).電気水圧衝撃波を用いた砕石(EHL)を要しない場合,手技に要した時間は10±2分であった.いわゆるendoscopicIVR surgeryの一つである全身麻酔下PPBD 併用LC により胆のう胆管結石は非開腹,総胆管非切開,乳頭非切開下にしかも乳頭拡張時不快感なく治療できる. -
4. 急性膵炎を合併した総胆管結石の治療
64巻8号(2002);View Description Hide Description胆石性膵炎では軽症例は胆石は乳頭から十二指腸へ自然排出することが多いが,重症膵炎では胆石の乳頭部嵌頓が持続したり総胆管内に長くとどまることが多い.したがって,重症膵炎や黄疸・急性胆管炎合併例では早期の内視鏡的逆行性胆管膵管造影[ERCP(EST)]による総胆管切石が必要である.軽症膵炎では胆石に対する早期の治療は不要であり,膵炎消退後に腹腔鏡下胆摘術を行う.術中胆道造影で総胆管結石を認めた場合は,腹腔鏡下総胆管切石か術後ERCP を行う. -
5. EST vs EPBD—RCTによる治療成績の比較
64巻8号(2002);View Description Hide DescriptionEST とEPBD による胆管結石の治療成績をRCT の結果から総括する.これまで単独施設,多施設共同によるRCT の成績がいくつか報告されている.それらを治療成績,早期偶発症の観点から検討する.比較的小型の結石(10mm 程度)に対しては,いずれの方法でも同等の治療成績が得られ,偶発症発生率にも差がないという結果であった.したがって,このような結石をもつ症例に対してはEST,EPBD のいずれでも対応可能と考えられる.偶発症の内容には両者間に差があり,EST で出血,EPBDで急性膵炎の発生にとくに留意する必要がある.
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特集 良性胆道疾患治療の最前線 3. 総胆管嚢腫の治療
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1. 総胆管嚢腫の治療
64巻8号(2002);View Description Hide Description現在,総胆管のう腫の治療には,初回治療と長期合併症の治療という二つの面がある.初回治療時に,肝門部で広く吻合口を確保し狭窄を残さないことが術後合併症を避けるうえでもっとも重要である.長期合併症は10年以上経過してから発症することも多く,長期にわたる経過観察が必要である.MRCP が診断上大きな位置を占めるようになっているが,治療上は直接胆道造影も欠かせない.また,鏡視下手術による長期成績の評価は未決である. -
2. 胆管非拡張型膵・胆管合流異常の治療
64巻8号(2002);View Description Hide Description1972年4月〜2002年3月までに当科で経験した膵・胆管合流異常症74症例中,胆管非拡張型の15例を検討し,その治療について考察した.平均年齢は46歳で,女性8例,男性7例であった.胆道癌の合併は4例(26.7%)で,胆のう癌が3例,肝門部胆管癌が1例であった.癌を合併していない11例のうち9 例に対し胆摘のみが行われ,平均観察期間14年で胆管癌を発生したものはなかった.Type cの1例は慢性膵炎(膵石)を合併しており,胆摘,十二指腸温存膵頭切除,胆管十二指腸吻合,膵管空腸側々吻合して術後8年経過は良好である.1例に分流手術が行われ,術後10ヵ月経過は良好である.胆摘のみ施行し,最長22年の経過で胆管癌の発生はみていないが,62歳男性の肝門部胆管癌を経験しており,高齢者は別として将来性のある若い人では分流手術(胆摘,肝外胆管切除,肝管空腸吻合)が無難である.
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特集 良性胆道疾患治療の最前線 4. 肝内結石症の治療戦略
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4. 肝内結石症の治療戦略
64巻8号(2002);View Description Hide Description肝内結石症はまれな疾患であるが,しばしば再発・再燃を繰り返すため,その治療には非常に難渋する.本症の成因には細菌感染を伴った胆汁うっ滞が深く関与していると考えられ,従来われわれは結石の除去と胆汁うっ滞の解除を目的として,おもに肝切除術や拡大胆管切開切石術を行い,それに胆汁うっ滞解除を目的とした付加手術を行ってきた.しかし,近年は内視鏡的切石術に代表される非手術的な治療法も重要な位置を占めるようになってきており,今後はそれぞれの病態に応じてこれらの治療法を組み合せ,集約的に治療をすすめていくことが重要であると考える.
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特集 良性胆道疾患治療の最前線 5. 原発性硬化性胆管炎の治療
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5. 原発性硬化性胆管炎の治療PSCの治療選択—PSCに対する肝移植
64巻8号(2002);View Description Hide Description原発性硬化性胆管炎は,胆管周囲の非特異的な炎症性細胞浸潤と線維化により肝内外胆管の硬化,狭窄ないし閉塞をきたす原因不明の肝疾患である.治療として肝移植が有効とされるが,移植時期の決定,胆管癌や潰瘍性大腸炎の合併ならびに移植後の再発などさまざまな問題があげられる.本邦における原発性硬化性胆管炎の肝移植報告はあまり多くないが,欧米の報告と自験例を中心に,今後の治療選択について考えたい.
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連載/外科医が知っておくべき麻酔管理の基礎知識(2)
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連載/基本手術手技Q&A(20)
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