外科
Volume 64, Issue 13, 2002
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特集 知っておくべき周術期管理 1. 感染症の予防と対策
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1. 術後感染菌交代現象の予防—サイクリング療法
64巻13号(2002);View Description Hide DescriptionMRSA 感染を契機に,わが国でも抗菌薬の使用方法の見直しが始まり,一時のような抗菌薬の濫用とも思える状態は改善されている.耐性菌の出現を予防するには,抗菌薬の使用方法を厳重にすることがもっとも重要である.外科領域の抗菌薬の使用は,その目的が「術後感染予防」であるのか,「感染治療」であるのかを明確に意識することがまず必要である.加えて,新しい抗菌薬ばかりを使用するのではなく,臨床症状や宿主である患者の全身状態を考慮して,なるべく古い薬剤から使用することが重要である.現在,問題となる耐性菌はMRSA と緑膿菌であるが,VCM,TEICOなどの切り札が存在するMRSA に比べて緑膿菌は多剤耐性化がすすんでいる.新しい試みとして,サイクリング療法が紹介されており,今後の検討に期待される. -
2. 外科手術部位感染サーベイランスによる周術期感染対策
64巻13号(2002);View Description Hide Description術後感染症の中でもっとも多い手術部位感染を減少させる手法として,その発生に関するデータを集積・分析し継続的に監視するサーベイランスが有効である.そのデータは現場に適切にフィードバックされることにより有効に利用される.データの経時的推移によって自施設内での手術部位感染に関する評価が可能である.施設間の比較をするさいにはデータベースが必要であるが,サーベイランスが確立しているアメリカと異なり,日本は全国的データベースが構築途上にあるため,施設間の比較が困難である. -
3. 腸球菌感染症の現状とバンコマイシン耐性腸球菌感染症への対策
64巻13号(2002);View Description Hide Description欧米ではバンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin resistant :VRE)が1980年代後半から消化器外科病棟やICU で高頻度に分離され,難治性の院内感染原因菌として問題になっている.わが国でも最近しばしば集団発生例を認めるようになった.しかし,腸球菌の分離頻度のもっとも高い消化器外科では,今後の発症に備えて十分な対策を練るべきである.具体的には,㈰ 耐性菌防止のためancomycin(VCM)乱用をさける,㈪ 細菌検査室を含む病院スタッフに対してVRE 感染症の正しい教育を行い,院内感染防御対策を即座に実行できるように準備しておく,㈫ 転院患者を介した多施設へのVRE の拡散を防止することなどが必要である. -
4. 大腸手術における術前腸管処置
64巻13号(2002);View Description Hide Description最近日本では,大腸手術の術前腸管処置において経口抗菌薬を使用しない外科医がふえてきた.一方,アメリカでは術前日1日のみの投与により耐性菌の出現を最小限にし,かつ術中汚染を予防する方法が行われている.またアメリカでは術前腸管処置を患者宅で行い,手術当日に入院することが多く,sodium hosphate溶液による腸管処置が主流となりつつある.近年,機械的処置不要論もアメリカ以外から報告されている. -
5. 炎症性腸疾患手術における創感染の予防と対策
64巻13号(2002);View Description Hide Description炎症性腸疾患(IBD)患者は,一般消化器術後患者に比して術前の栄養障害やステロイド治療などにより術後創感染を併発する危険性が高いと考えられる.本稿ではわれわれの施設での現況をふまえて,その予防法・対策について紹介する.術前因子,手術因子(術式),術後予防的抗菌薬,さらに術後創より検出された細菌とその抗菌薬感受性などの検討から,IBD 患者の手術創はすでに感染した創と考えたうえでの特別なケアが必要であると考えられる. -
6. 肝切除術後の抗生物質投与
64巻13号(2002);View Description Hide Description肝切除術後抗生物質予防投与の有効性に関する無作為化比較試験はいまだ一つしかなく,その結果も術後抗生物質投与により感染症発生率は低下しないというものである.今回,肝切除術後抗生物質投与の有効性につき,感染症発生率と感染徴候発生率とを無作為化比較試験で検討した.感染徴候発生率は術後抗生物質投与により有意に低下した.感染症発生率は有意差がなかった.以上より,肝切除術後抗生物質投与は有効である.
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特集 知っておくべき周術期管理 2. 輸液・栄養管理
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1. 食道切除術後の輸液・栄養管理
64巻13号(2002);View Description Hide Description当科の食道癌切除後の管理の基本方針は早期抜管・早期離床であり,おのずと術中からドライサイドの管理となっている.術後の循環動態に影響を与える因子の中で,もっとも着目しているのが胸管切離の有無である.術後管理は周術期管理の一要素であって,術前より個々の症例で全身状態を把握しておくことが周術期管理においてもっとも肝要なことである. -
2. 膵頭十二指腸切除術後の輸液・栄養管理—経腸栄養による周術期栄養管理
64巻13号(2002);View Description Hide Description当科では膵頭十二指腸切除術施行時に腸瘻造設術を付加し,術後第2病日より経腸栄養を開始し,周術期の栄養管理を簡便かつ良好にしている.経腸栄養による術後栄養管理を行うことにより,経静脈的栄養に頼ることなく維持輸液のみで十分な栄養管理ができ,catheter fever の危険も少ない.術後体重減少を抑えることができ,食事開始も早く入院期間も短縮できると考えられた.
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特集 知っておくべき周術期管理 3. 合併症の予防と対策
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1. 非心臓手術における心疾患合併症
64巻13号(2002);View Description Hide Description非心臓手術の周術期心疾患合併症回避の要点は,術前併存疾患としての心疾患の発見とその重症度の評価が第一である.さらに,日常生活の活動度から患者の手術耐容能を推定し,予定されている非心臓手術のリスクからさらなる非侵襲的検査や冠血管造影の適応が決定される.冠疾患併存例では,術前に冠動脈インターベンションやバイパス術(CABG)を要することがある. -
2. 術後肺合併症の予防と対策
64巻13号(2002);View Description Hide Description全身麻酔を用いた手術後には少なからず呼吸抑制が発生することを考慮して,術後肺合併症の予防のために適切な術後管理を行う.① 術前気道の浄化を目的とした禁煙,およびネブライザーの指示が重要である.② 術後の除痛は呼吸器合併症の予防に有効であり,NSAIDs,持続硬膜外鎮痛,patient-controlled analgesia(PCA)などが用いられている.③ 術後呼吸器合併症に対する処置としては,気管支内視鏡による吸痰以外に最近ではミニ気管切開や経皮的気管切開セットなどが駆使されている. -
3. Shear stress理論からみた肝切除後肝障害のメカニズムとその対処法
64巻13号(2002);View Description Hide Description肝硬変肝癌,成人生体肝移植においては,術前・術後の過剰な門脈圧亢進状態が術後の病態に大きな影響を及ぼしている.われわれは肝切除後の肝障害のメカニズムをshear stress理論と過剰な免疫炎症反応の観点から解析してきたが,本稿ではshear stress理論に沿った術後の病態解析と,過剰なshear stressを緩和するための術前・術後の内科的・外科的工夫について述べた.術前・術中・術後の病態を的確に把握し,これらにあらかじめ対処することにより,過剰なsplanchnic circulation が緩和され術後肝障害が予防されるものと考えている.過剰なshear stressの持続は,術後のbacterialtranslocation や高ビリルビン血症を引き起す誘因ともなり,術後の予後を左右するものと思われる.われわれの試みが術後管理に携わる者の一助となることを期待する. -
4. 腹腔鏡術後における肺塞栓症
64巻13号(2002);View Description Hide Description腹腔鏡手術は体位や気腹による腹腔内圧の上昇などから,気腹時間が長くなれば下肢の静脈還流障害が起り血栓の形成や肺塞栓症を誘発することが懸念される.腹腔鏡術後の肺塞栓症を中心に,術後肺塞栓症の診断・治療および予防について述べる.肺塞栓症の3徴は呼吸困難,呼吸促迫,頻脈である.臨床的に発症が疑われた場合,できる限り迅速に診断・治療を行うことが重要である.検査はまず,心電図,動脈血血液ガス分析,胸部X 線検査を行う.肺塞栓症の急性期はヘパリンによる抗凝固療法が第一選択となる.重症例には血栓溶解療法も行われる.予防策として,間欠的下肢加圧装置(IPC)を導入している.腹腔鏡手術の適応拡大を図っていくさいにはとくに,むやみな気腹時間の延長は避けて発症予防に努めるべきである. -
5. 腎機能低下例の周術期管理—透析に移行しないために
64巻13号(2002);View Description Hide Description腎機能が低下している患者は血圧調節機能も低下していることが多いので,不用意な管理をすると脱水により容易に低血圧をきたし,さらに腎機能が悪化してしまう.一般にI〜III 期の場合は,Na欠乏による脱水に注意する.IV 期の場合は,体重増加,肺水腫に気をつけなければならないが,血管内脱水にも注意する.当日午前0時から朝までの輸液を忘れない.腎毒性のある薬剤を使用しない.使用する薬剤を,Ccr に合せて減量する.ドパミン(DOA)やfurosemideを適宜使用する.
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連載/外科医が知っておくべき麻酔管理の基礎知識(6)
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連載/EBMに基づく外科治療(3)
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症例
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臨床と研究
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症例
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