外科
Volume 65, Issue 2, 2003
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特集 膵管内乳頭粘液性腫瘍 1.定義・病理
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1.国際分類における膵管内乳頭粘液性腫瘍の位置付け
65巻2号(2003);View Description Hide DescriptionIPMT は主膵管あるいは大型分枝に発生し,高齢者男性,膵頭部に好発する腫瘍である.診断学の進歩とともに本腫瘍の臨床病理学的性格が明らかになりつつあり,さまざまな病理学的分類が試みられている.病理学的国際分類および膵癌取扱い規約におけるIPMT の位置付けやWHO 分類の提唱するPanIN について概説を試みた. -
2.膵癌取扱い規約における膵管内乳頭粘液性腫瘍の位置付け
65巻2号(2003);View Description Hide Description『膵癌取扱い規約(第5 版)』では,膵管内腫瘍は漿液性胞腫瘍とMCT の胞性腫瘍と浸潤性膵管癌などの非胞性腫瘍の中間に位置付けられている.膵管内腫瘍はIPMT とITT に大別され,それぞれ良性と悪性に分類される.また,IPMT はしばしば混同されてきたMCT とは明確に異なる疾患として定義された.IPMT と上皮内癌も独立して分類され,両者の鑑別点も記載された.膵局所進展度分類でもIPMT に配慮した分類がなされている.本分類法は治療法の選択,予後予測が期待できる臨床上実践的な分類といえる. -
3.膵管内乳頭粘液性腫瘍の病理
65巻2号(2003);View Description Hide DescriptionIPMT の病理診断はMCT と混乱していたが,後者では女性の膵体尾部に好発し,胞壁に卵巣様間質が認められるなどの点から,これらの疾患概念がかなり明確になってきた.また,上皮の異型度から過形成,腺腫,癌など多彩であるが,異型の強い腺腫と腺癌との鑑別は困難なことが多く,さらに非浸潤性・浸潤性かどうかなどさまざまな問題が残されており,分子生物学的検討などのさらなる研究が必要である. -
4.外科病理学的見地からみた膵管内乳頭粘液性腫瘍
65巻2号(2003);View Description Hide Description過去22 年間に切除されたIPMT 52 例の外科病理学的検討から,腫瘍の局在別に癌の頻度をみると主膵管型89%,混合型78%,分枝型21%であり,主膵管型・混合型は高率であった.分枝型では大きさ3 〜 4 cm で5/13(38%),4 cm 以上で1/4(25%)であり,3 cm 以上になるとそれ以下に比べて癌の可能性が高い傾向がみられた.癌浸潤が膵内に限局して微小なものを微小浸潤癌として,他の膵管内腫瘍由来浸潤癌と区別すべきであると考えられた. -
5.膵管内乳頭粘液性腫瘍と通常型膵管癌の関連性
65巻2号(2003);View Description Hide Description近年,IPMT と通常型膵管癌を合せ,膵管上皮由来の腫瘍としてさまざまな角度からの研究が行われ,通常型膵管癌においては,腫瘍内に膵管内成分を多く認める症例が比較的予後良好とする報告がみられる.今回,IPMT と通常型膵管癌の臨床像を比較検討した結果,膵管内成分10%<の通常型膵管癌症例は,臨床経過・予後の点で膵管内腫瘍由来浸潤癌と同等であり,両者が類似した発癌過程をたどることが示唆された.
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特集 膵管内乳頭粘液性腫瘍 2.診断
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1.膵管内乳頭粘液性腫瘍の質的診断—CT,MRIを中心に
65巻2号(2003);View Description Hide Description膵管内乳頭腫瘍の拾い上げ診断にはMRCP がその簡便性,高い診断能の点で非常に有用である.また,その質的診断や鑑別診断に関してはMRCP を含めたMRI,そしてCT が有用ではあるものの,悪性度の術前診断は必ずしも容易ではない.質的診断および鑑別診断に関して代表的症例を提示しつつ解説した. -
2.経口膵管鏡による膵管内乳頭粘液性腫瘍の診断
65巻2号(2003);View Description Hide DescriptionIPMT は特異な形態を示す低悪性度の膵腫瘍として注目されている.IPMT の存在診断はUS やCT などの一般的な画像診断でも容易であるが,良悪性の鑑別はしばしば困難であり,正診率は60%前後にすぎない.われわれは従来,IPMT の診断にPOPS を用いており,その診断能を検討してきた.良悪性の鑑別能は70%以上であり,また主膵管連続進展も65%の症例で評価可能であった.術前診断に基づく縮小手術も約20%に行われた.POPS はIPMT の治療方針決定に有用と考えられる. -
3.膵管内乳頭粘液性腫瘍の質的診断—超音波内視鏡,細径超音波プローブ
65巻2号(2003);View Description Hide DescriptionIPMT は,組織学的には腺腫,腺癌,浸潤癌に分類されるが,必ずしも腺腫と腺癌の区別は容易とはいえない.また臨床的には,本腫瘍と類似の所見を呈する中に過形成病変によるものが多数存在する.現段階では,画像診断では「腺癌もしくは腺腫」と「過形成」の鑑別を行うことが主たるポイントであり,超音波内視鏡による結節状隆起(壁在結節)の評価がもっとも重要である.将来的には,長期間進展しない可能性のある腺腫を的確に経過観察と判定できることが望まれ,そのために長期経過観察例のさらなる検討が必要である. -
4.画像診断からみた膵管内乳頭粘液性腫瘍の悪性度診断
65巻2号(2003);View Description Hide DescriptionIPMT の画像診断とくにEUS,IDUS の重要性について述べた.一般的にはIPMT の手術適応は主膵管径,結節の高さ,拡張分枝膵管径により決定されることが多い.これらを正しく評価するにはEUS,IDUS は不可欠の検査である.主膵管径や結節の高さの評価,切除線の決定にはIDUS が優れていたが,全体像の把握にはEUS が不可欠であり,両方の検査をうまく組み合せて悪性度診断をすることが肝要であると考えられた. -
5.分子生物学的因子からみた膵管内乳頭粘液性腫瘍の悪性度診断
65巻2号(2003);View Description Hide Description膵癌で高頻度に認められたK— r a s, p 5 3, p 1 6, D P C 4( Smad4),テロメラーゼなどの遺伝子異常について,IPMT を対象とした解析が行われてきた. K— ras遺伝子変異は膵癌と同様に高頻度に検出されたが,悪性度との関連は認められていない. p53, p16, DPC4遺伝子異常の頻度は膵癌と比較して明らかに低い.しかし,adenomacarcimomasequence で後期に異常が生じると考えられているp53,DPC4遺伝子異常のうち,とくにDPC4はIPMT の悪性度と関連する可能性が示されている.テロメラーゼ活性については解析症例が少ないが,とくに膵液での解析結果がIPMT の悪性度と関連する可能性が報告されている.
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特集 膵管内乳頭粘液性腫瘍 3.治療
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1.嚢胞性膵腫瘍の外科治療—膵管内乳頭粘液性腫瘍と膵粘液性嚢胞腫瘍の鑑別困難例から
65巻2号(2003);View Description Hide DescriptionIPMT とMCT はともに粘液を産生するという大きな共通項をもってはいるが,形態的特徴は臨床的にも組織学的にも大きく異なり,病変部の形状や膵管との関係,年齢や性差や主病変部位,卵巣様間質の有無などに着目すれば,両者の鑑別は比較的容易であると考えられる.外科治療の取り扱いにおいては両者に大きな違いはなく,ともに浸潤癌症例では郭清操作を伴う膵切除が必要と考えられるが,MCT では腺腫以上の腫瘍性病変がほとんどであるのに対し,IPMT では過形成性変化にとどまる経過観察可能症例も少なくないため,膵管形態(隆起型・平坦型)や病変最大径や膵外浸潤などに着目し,それぞれの特徴を十分把握したうえで画像診断を評価することが重要である.また,術前にIPMT かMCT かの鑑別診断に苦慮する場合には,小さくても癌の可能性のあるIPMT に準じた対応が必要と考えられた. -
2.予後からみた膵管内乳頭粘液性腫瘍の治療
65巻2号(2003);View Description Hide DescriptionIPMT は予後良好とされてきたが,術後経過について必ずしもすべてが解明されたわけではない.本稿では,自験切除86 例の遠隔成績より,IPMT における予後からみた外科治療について考察した.IPMT の外科治療は,浸潤癌における癌再発への対策と多発病変や他臓器癌の合併という問題が検討課題として残されている. -
3.臨床病理学所見からみた膵管内乳頭粘液性腫瘍の治療方針
65巻2号(2003);View Description Hide DescriptionIPMT の手術適応は分枝型では拡張分枝膵管が3 cm 以上,壁在結節あり(1 cm 以上),主膵管拡張(1 cm 以上)で,主膵管型は全例手術適応となる.低悪性度病変や悪性病変でも非浸潤性のものは分枝膵管切除,膵分節切除,膵頭十二指腸第二部切除や十二指腸温存膵頭切除などの縮小膵切除が適応となる.一方,微小浸潤癌は1 群リンパ節郭清を伴う膵切除(幽門輪温存膵頭十二指腸切除など)が適応となり,IPMT 由来の膵管癌は通常の浸潤性膵管癌同様,D2 郭清を伴う拡大膵切除が適応となる. -
4.膵管内乳頭粘液性腫瘍の外科治療指針
65巻2号(2003);View Description Hide DescriptionIPMT は,予後のよい疾患群として知られるが,いったん浸潤した場合の悪性度は通常型膵癌と同様と考えねばならない.したがって,時期を逃さずに的確な手術切除を行うことが重要である.術前にIPMTの良悪性を判定することは困難であり,画像所見と臨床経過を総合的に判断して手術適応を決定する.
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連載/外科医が知っておくべき麻酔管理の基礎知識(8)
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