外科

Volume 65, Issue 4, 2003
Volumes & issues:
-
特集 胆のう癌治療の基本方針 1.術前・術中診断の進歩と限界
-
-
1.胆のう癌画像診断の最近の進歩
65巻4号(2003);View Description
Hide Description
最近の胆癌画像診断の進歩について概説した.超音波,CT,MRI といった診断機器の進歩に伴いさまざまな工夫がなされ新しい診断機器の開発がみられているが,胆癌の診断においては進展度診断もさることながら,重要なことは比較的早期の,従来では診断がつきがたかった胆癌をいかに診断するかということであり,またどこの施設でも普遍的に診断できることと思われる.そういった意味で最近進歩した診断機器の中では,tissue harmonic imaging(THI)とパワードプラ法がもっとも診断に寄与しているものと思われる. -
2.胆のう癌の深達度診断と手術方針
65巻4号(2003);View Description
Hide Description
胆のう癌の外科治療成績はその進行度に応じている.術前および術中所見から得られる肉眼的胆のう周囲進展度T 因子は手術成績にほぼ相関しており,手術方針を決定するさいに有用である.T1 胆のう癌に対しては通常の胆のう摘出術でも良好な予後が期待される.T2 胆のう癌は予後良好群・不良群が相半しており,バランスよい手術術式としてS4aS5肝亜2 区域+リンパ節郭清術が行われる.T3 およびT4 胆のう癌はいまだ予後不良であるが,その進展様式に応じて,拡大右葉切除や他臓器合併切除が選択される. -
3.術前・術中診断による胆のう癌の術式選択
65巻4号(2003);View Description
Hide Description
胆のう癌のもっとも重要な予後因子は深達度とリンパ節転移である.胆のう癌の手術方針はこの二つの重要な予後因子によって大きく左右されるが,それらの正確な切除前診断は必ずしも容易ではない.自験例における術前診断の精度をretrospective に検討し,その誤診率を認識したうえで術中key となるリンパ節(No.12b,c とNo.13a)の術中迅速診断を加えて,手術方針決定に役立てることができるようになったので報告する.
-
-
特集 胆のう癌治療の基本方針 2.手術方針についてのエビデンス
-
-
1.潜在胆のう癌に対する二期的根治手術の適応と手術
65巻4号(2003);View Description
Hide Description
胆のう摘出術後,病理組織診断で癌の診断が得られる,いわゆる潜在胆のう癌は0.23 〜 2.85%にみられたと報告されている.壁深達度は予後の期待できるm やmp の早期癌が多いが,ss やse の進行癌も認められる.手術にさいしては癌の占居部位・壁深達度・進展様式に対応した二期的根治手術の必要性を総合判断し,十分なインフォームド・コンセントを得たうえで治療方針を決定する必要がある. -
2.ss胆のう癌に対する根治手術
65巻4号(2003);View Description
Hide Description
進行胆のう癌は一般に予後不良であるが,ss 癌では切除により治癒が期待できる.当科では,1981 年以来,ss 癌の根治術式として胆摘+肝床切除+胆管切除+D2 郭清(Glenn 手術変法)を基本とし,膵頭周囲リンパ節転移が高度な症例では膵頭十二指腸切除を追加してきた.1999 年7 月までにss 癌49 例に根治術を施行し,良好な成績(累積5年生存率87%)を得てきた.本稿では,この治療経験を基にss 胆のう癌の根治手術について考察する. -
3.胆のう癌に対する肝切除範囲についての理論的根拠
65巻4号(2003);View Description
Hide Description
胆のう癌の進展様式は多彩であり,癌の胆のう周囲進展度に応じてエビデンスに基づく理論的な手術術式の選択が必要となる.T1 では拡大胆のう摘除+リンパ節郭清を基本とする.明らかにT1 でIp 型の場合は胆のう摘除のみでもよい.術前診断がT2 であれば症例によっては拡大胆のう摘除が選択しうるが,原則としてS4a+S5 肝切除+胆管切除+D2+No.16 リンパ節郭清を行う.T3,T4 であれば拡大肝右葉切除術を選択し,膵頭十二指腸切除の付加も検討する.Stage I 〜 III は癌の存在部位や進展度に基づく適切な術式の選択で予後の改善が望める.Stage IVは外科的切除のみでは限界があり,手術適応や集学的治療法など今後の検討課題が多い.できるだけ早期の拾い上げ診断と,正確な進展度診断,そのうえでの適切な根治手術の選択がきわめて重要である. -
4.肝浸潤形態からみた胆のう癌の手術方針
65巻4号(2003);View Description
Hide Description
癌深達度ss 以上の進行胆のう癌を,その肝浸潤形態に着目し,1,肝浸潤の認められない胆のう限局型,2,肝床部を中心に肝実質浸潤をきたす肝床型,3, 肝門部浸潤をきたし,肝門部Glisson を介して肝内へ進展し,閉塞性黄疸を合併する肝門型の三者に分け,進展様式や治療成績を対比するとともに,肝浸潤形態からみた進行胆のう癌の治療方針について検討した.胆のう限局型では,血行性肝転移の予防や十分なsurgicalmargin の確保を意図したS4a,S5 切除+徹底郭清のための胆管切除の併施により,また肝床型では,S4a,S5 切除以上の各種肝切除+胆管切除に他臓器合併切除を加えた積極的切除により長期予後が期待できる.一方,肝門型では拡大右葉切除+胆管切除を基本とし,これに血管合併切除やPD を併施することにより治癒切除が期待できるが,かかる拡大手術は術後肝不全のリスクが高率であり,その適応は厳重にとるべきである. -
5.胆のう癌手術における胆管切除の意義
65巻4号(2003);View Description
Hide Description
胆のう癌根治切除における肝外胆管切除の意義を組織学的な胆管浸潤がなかった症例で検討した.stage III までの症例では,胆管切除を加えることによる長期予後への寄与をまったく認めることができなかった.少なくとも,胆管浸潤がなく進行度の高くない症例では胆管切除を行うことの利点はないと考えられた. -
6.胆のう癌のリンパ節転移様式
65巻4号(2003);View Description
Hide Description
胆のう癌のリンパ節転移経路についての研究の進歩により系統的郭清が行われるようになった.しかし,リンパ節転移が2 個以上の症例の治療成績は不良である.今後はリンパ節郭清の個別化が必要であり,胆のう癌においてもsentinel node concept の導入が望ましい.そのためには,術中に確実にsentinel lymph node を同定する手段と,転移陰性であることを診断できるツールの開発が急務である. -
7.進行胆のう癌に対する拡大リンパ節郭清の適応と意義
65巻4号(2003);View Description
Hide Description
進行胆のう癌に対しPD やNo.16 を含む拡大郭清を行ってきた結果,n1 はn0 と同等の予後が,n2 やn3 でも5 年生存例が得られた.しかし,郭清が過剰であった症例もあり,画一的予防的郭清にかわる「個別化による過不足ない郭清」が望まれる.そこで,リンパ節転移マップをもとにsentinel node concept を応用して術中色素を用い,No.12bc の青染リンパ節,key node(No.13a,No.8)の転移の有無からPD の適応やNo.16 郭清範囲を決定すべく見直しを行った.
-
-
特集 胆のう癌治療の基本方針 3 .進行胆のう癌に対する挑戦と限界
-
-
1.胆のう癌に対する膵頭十二指腸切除の意義
65巻4号(2003);View Description
Hide Description
膵頭十二指腸切除が有効となる可能性がある進行胆のう癌は,二村らの進展様式の分類で,局所進展が軽微なリンパ節転移型に分類される症例と,肝十二指腸間膜へ高度に浸潤したBinf2,3 症例であると考えられる.前者はBinf0,1 でありながら膵周囲リンパ節に明らかに転移があって,ここから膵臓の実質に直接浸潤が疑われるような例であり,胆のう癌の中ではまれな症例である.後者は切除断端陰性とするために,併せて拡大肝右葉切除を必要とする例である.しかしながら,胆のう癌に対する拡大肝右葉切除兼膵頭十二指腸切除後5 年生存例が,これまで文献的にも5 例内外という少なさを考えると,後者の適応のうち長期生存が期待できる症例とは,きわめてまれな症例だけと考えられる.つまり,拡大肝右葉切除で長期生存が得られる病態に,前者のまれな要素(局所進展が軽微なリンパ節転移型)が重なった場合である. -
2.進行胆のう癌に対する肝膵同時切除の意義
65巻4号(2003);View Description
Hide Description
臨床病理学的検討から進行胆のう癌におけるHPD の意義を検討した.ss 以上の進行癌216 例を対象とし,HPD の好個の適応を検討するためにHPD とD2 以上の郭清を行ったnon-HPD 群の遠隔成績をn,binf2 因子の有無から比較した.結果は,1, 治癒切除例の遠隔成績が有意に向上した.2, binf(−)n(−)ではHPD とnon-HPD の生存率,再発様式に有意差がなかった.binf(−)n(+)では,non-HPD の5 年生存率17%に対し,HPD 87%と有意に遠隔成績が良好でNo.12,No.13 リンパ節再発が減少した.binf(+)ではHPD の遠隔成績が不良で,局所再発が60%を占めた.binf 高度の場合はHLPD を施行したが,高い手術死亡率や合併症発生率の割には早期に血行転移やNo.16 転移が生じた.HPD の意義は,進行癌胆のう癌において治癒切除を得ることである.リンパ節郭清に関するPD 付加は,binf(−)n(+)の肝床型胆のう癌が好個の適応である.一方,binf(−)n(−)ではnon-HPD が,binf(+)ではnon-HPD と補助療法を組み合せることが遠隔成績の向上につながると思われた. -
3.高度進行胆のう癌に対する積極的切除療法の意義——t因子に着目して
65巻4号(2003);View Description
Hide Description
当科では過去22 年4 ヵ月間,進行胆のう癌に対して積極的な切除を行い,その結果t3 で60%,t4 で22%の3 年生存率を,またt3 で40%,t4 で17%の5 年生存率を得た.その反面,t3,t4 合せて17%の在院死亡を認めた.進行胆癌に対しては今後も外科的切除が唯一の根治的治療法として行われるであろうが,在院死亡率をさらに低下させること,再発後の治療法を開発することなどが重要な課題である.
-
-
書評
-
-
-
連載/外科医が知っておくべき麻酔管理の基礎知識(10)
-
-
-
書評
-
-
-
臨床と研究
-
-
-
臨床経験
-
-
-
症例
-
-
-
-
-
◇左半結腸合併切除によって切除しえた十二指腸空腸曲の巨大な悪性gastrointestinal stromal tumorの1例
65巻4号(2003);View Description
Hide Description
-
-
-
-