外科

Volume 65, Issue 6, 2003
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特集 科学性に基づく外科学の将来展望—第103回日本外科学会記念号
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1.長期成績からみた新生児期開心根治術の治療展望
65巻6号(2003);View Description
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新生児開心術の救命率は周術期治療戦略の確立により飛躍的に向上し,遠隔期の長期生存例も増加している.完全大血管転位のJatene 手術(145 例),総肺静脈還流異常根治術(74 例)および大動脈縮窄・離断複合一期的根治術(74 例)の術後15 年生存率はそれぞれ93%,86%,89%であった.術後続発症としてJatene 手術では肺動脈狭窄の頻度が高く,術後15 年の再手術回避率は67%と不良であったが,術式の改良により最近10 年では96%に改善した.総肺静脈還流異常術後の肺静脈狭窄は7 例にみられ予後不良であった.大動脈縮窄・離断複合一期的根治術後には再建大動脈の再狭窄が10 例にみられたが,経皮的バルーン血管形成術により改善した. -
2.大血管外科手術の課題と将来展望
65巻6号(2003);View Description
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大動脈疾患患者は近年ますます増加し,高齢者や種々の全身合併症を有する症例に対しても手術適応が拡大されredo 手術もふえている.大動脈瘤手術の最大の課題は,手術による直接死亡をなくすることと手術に伴う臓器合併症を減少させQOL を維持することである.手術成績は向上しつつあるが,弓部および胸腹部大動脈瘤手術における脳脊髄合併症回避,ハイリスク症例,広範大動脈置換手術やredo 手術などは手術侵襲も過大となり解決すべき課題も多い.大血管外科のうち,とくに問題の多い弓部大動脈瘤,胸腹部大動脈瘤を中心に脳脊髄合併症回避と手術侵襲軽減のための集学的治療の展望について述べた. -
3.肺癌に対する低侵襲手術の有用性と問題点
65巻6号(2003);View Description
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肺癌の罹患率,死亡率の増加が著しいわが国では,一方高齢化傾向も著しく,そのような高齢者への手術の低侵襲化が求められている.肺癌低侵襲手術の内容としては肺部分切除,区域切除のような切除容量を少なくしたもの,リンパ節郭清をできるだけ省略したもの,開胸方法を可能な限り非侵襲としたものなどが考えられる.本稿ではそれらの内容を具体的に解説した. -
4.長期成績からみた食道癌に対する鏡視下手術の将来展望
65巻6号(2003);View Description
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上縦隔リンパ節郭清の徹底化と早期診断ならびにEMR の開発・普及により食道癌も治る癌の仲間入りを果たした.1994 年ごろから始められた食道癌の鏡視下手術も症例の蓄積とともに不十分ながら長期予後を論じうるにいたった.習熟度の向上と各種補助器具の開発により普及しつつある.現時点ではいまだ開胸術のリンパ節郭清度に一部及ばないところもあるが,近い将来その近接拡大の利点を生かし開胸術をしのぐ可能性もある.消化器外科手術の大部分が鏡視下で行われる時代もそう遠くないと思われる. -
5.胃癌術後化学療法の有効性に関するエビデンスと将来方向
65巻6号(2003);View Description
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胃癌の術後化学療法には長い歴史があり,さまざまな方法で検討されてきた.しかし,同一のStage,一定の術式による大規模なrandomizedcontrolled study の結果が少ないために,エビデンスをもって遂行されていないのが現状である.胃癌治療ガイドラインでは臨床研究の一つに分類されており,日常診療の治療には盛りこまれていない.以上の背景から,今後早急に術後化学療法の確立に向け大規模臨床試験の施行が臨まれる. -
6.大腸癌に対する鏡視下手術の適応と手術成績
65巻6号(2003);View Description
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RCT の成績を中心に,大腸癌に対する鏡視下手術の成績を概説した.MEDLINE の検索で得られた大腸癌に対する鏡視下手術の報告は26 報であった.短期成績に関しては,手術時間,合併症,手術侵襲などの点において鏡視下手術と開腹手術は同等かあるいは鏡視下手術のほうが優れているとする報告が大部分であった.一方,癌の根治性に関しては長期成績の検討が必要であるが,その報告はいまだ少数であった.2002 年に比較的規模の大きいRCT の結果がスペインから報告され,これによると鏡視下手術は有意な予後決定因子で,病期III 症例において鏡視下手術群の生存率が良好であった. -
7.エビデンスに基づく肝細胞癌の治療法選択
65巻6号(2003);View Description
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肝切除,PEI,RFA,肝移植など肝細胞癌に対する治療は多岐にわたり,今までその治療法がほとんど医者側の意思により決定されていた.しかし各治療成績の蓄積から,肝切除可能症例ではもっとも治療成績良好である肝切除を第一に考えるべきである.肝機能不良で腫瘍因子,すなわち腫瘍の占居部位と個数により肝切除不可能の場合は,肝移植を考える.肝移植が不可能な場合にはじめてPEI,RFA などの非切除療法を選択する. -
8.肝門部胆管癌治療の現状と将来展望
65巻6号(2003);View Description
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肝門部胆管癌の外科的切除の歴史は約50 年前の局所切除から始まり,40 年前より肝葉切除,1970 年代より広範肝切除や肝移植が試みられ,1980 年代にはいって尾状葉切除の重要性が認識されてきた.その後,門脈合併肝切除術,肝膵十二指腸切除術,肝移植術など手術が拡大されたが,長期手術成績からみてその手術適応が再検討されている.リンパ節郭清の意義に関するprospective study が当面の課題である. -
9.膵癌に対する手術適応の再考と新しい治療法の開発
65巻6号(2003);View Description
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膵癌は非常に悪性度が高く,切除率は向上しているものの,その予後はいまだ不良である.Stage I 〜 III の症例は手術により長期生存が得られる可能性があり手術適応であるが,画像診断による正確なstaging を行うことが重要である.Stage IV に対しては,放射線療法や化学療法による再発の防止,down staging も検討されているが,いまだ確立されておらず,さらなる検討が必要である.また,分子生物学的手法が診断や治療に応用されつつあり,免疫療法とともに集学的治療の一翼を担って膵癌の予後が改善されていくことが期待される. -
10.乳癌におけるセンチネルリンパ節生検の現状と問題点
65巻6号(2003);View Description
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SLNB は,腋窩リンパ節郭清にかわる新しい乳癌の腋窩リンパ節転移診断法として近年注目を集め,今日,凄まじい勢いで日常診療に応用されつつある.SLNB を実施すれば,転移のない症例においては不必要な腋窩リンパ節郭清を省略することができ,その恩恵はきわめて大きいと思われる.しかし,SLNB の手技や結果の解釈についてはいまだ不明な点も残されている. -
11.小児外科治療の現状と将来展望
65巻6号(2003);View Description
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本邦の小児外科は欧米先進国に比べ数十年遅れて出発したが,戦後半世紀,目覚ましい進歩を遂げた.特記すべきは人工呼吸器による呼吸管理,中心静脈栄養を含めた栄養管理,出生前診断が可能にした周産期治療・胎児手術,鏡視下手術・ロボット手術の導入,生体肝移植の発展,再生医学の研究,さらには固形悪性腫瘍に対する遺伝子診断・治療などである.今後は現時点での問題点を明らかにし,さらなる発展が切望されている. -
12.癌遺伝子治療の将来展望
65巻6号(2003);View Description
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食道癌,膵臓癌,肺癌,神経膠腫,悪性黒色腫などの難治性固形癌に対する新しい治療戦略として遺伝子治療の臨床試験が開始され,その安全性と有効性が明らかとなりつつある.本稿では,当大学で進行中の食道癌p53遺伝子治療臨床研究の現状を含めたp53遺伝子治療臨床研究の現状と,次世代の治療戦略として最近注目されている腫瘍融解型ウイルス治療について概説し,その将来展望を述べる.
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連載/外科医が知っておくべき麻酔管理の基礎知識(12)
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