外科

Volume 65, Issue 7, 2003
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特集 知っておくべき各種肛門疾患 1.肛門病変の診断—痔疾患の鑑別
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1.肛門病変の診断—痔疾患の鑑別
65巻7号(2003);View Description
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消化管の末端にあり,さまざまな疾患が発生する肛門を正しく把握するには,3 段階に分けて診察を行う.はじめに患者の訴えを詳しく聴取する.次に視診にて肛門周囲を観察し,指診を全周にわたって行う.3 番目は肛門鏡診で,何区間かに分けて観察する.基本的な診断を用いてその結果を総合的に判断し,鑑別診断の過程を経て最終的に正しい診断にいたる.的確な診断ができなければ正確な治療はできないので,問診と診察は非常に大切である.
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特集 知っておくべき各種肛門疾患 2.肛門疾患診療の実際
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2.肛門疾患診療の実際
65巻7号(2003);View Description
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肛門疾患の病態の認識に変化がみられ,治療法に新しい試みがなされている.従来の治療法以外に痔核には,脱出に適応の注射療法,内視鏡的ゴム輪結紮療法,circular stapler を用いた手術(PPH),コンピュータ制御の器械で痔核を切除閉鎖する方法(LigaSure),ICG 併用の半導体レーザー療法が試みられ,裂肛には薬物で内括約筋を弛緩させ治そうとする試み,痔瘻にはseton 法や軽度の侵襲があっても根治性を高めた括約筋温存術式の試みなどがみられる.
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特集 知っておくべき各種肛門疾患 3.肛門疾患のday surgery
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3.肛門疾患のday surgery
65巻7号(2003);View Description
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肛門疾患に対するday surgery はインフォームド・コンセントを十分に行い,症例を選択すれば痔核,痔瘻などほとんどの症例で行うことができる.仙骨硬膜外麻酔下に基本的な術式に半導体レーザー手術などを組み合せ,手術侵襲を軽減して行う.術後の合併症も従来の入院手術とほとんどかわりなく,患者の満足度も高い.
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特集 知っておくべき各種肛門疾患 4.痔核
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1.内痔核に対する結紮切除術(部分閉鎖法)
65巻7号(2003);View Description
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内痔核の手術は結紮切除法が標準的であるが,創治癒の短縮化,狭窄・出血・創感染などの合併症予防を目的として開放術式から半閉鎖,完全閉鎖法と各種の改良術式が行われている.われわれは,中枢粘膜の縫合閉鎖を,痔核処理数に応じて適宜加減する部分閉鎖法を行い,さらに,ゆるみや皮垂防止のために両側の創縁を創底に2 〜 3 ヵ所縫合固定する方法を行っている. -
2.経皮的粘膜下痔核手術(松田式)
65巻7号(2003);View Description
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現在広く行われている痔核手術は結紮切除術で,肛門内の粘膜を切開して痔核を除去する手技である.これに対し,経皮的粘膜下痔核手術(松田式)はまったく異なる経路を通り痔核を切除する術式である.これはフック型超音波メスを用いる.肛門周囲の皮膚面よりトンネルを掘ってすすみ粘膜下で痔核組織を凝固縮小させ切除する手術である.この術式の最大の特徴は肛門内の粘膜面には傷をつけないことである.そのため,術中の止血や縫合が不要となり手術時間も平均6.2 分と短い.術後の出血や排便時痛も格段に少ない.粘膜下手術のため術後狭窄などの合併症も少ないようである.この手術の手技と成績を併せて述べる. -
3.吸引式痔核結紮器を用いた内痔核治療
65巻7号(2003);View Description
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内痔核に対する吸引式輪ゴム結紮療法はGoligher のII 度のみならず,III 度以上の内痔核,I 度の出血性内痔核に対してもきわめて有用である.また,直腸粘膜脱や軽度の完全直腸脱にも応用でき,今後,適応の拡大が期待される治療法である.本治療法に入院の必要はなく,外来のみで治療が完了する.低コストで安全であり患者の苦痛もきわめて少ない.内痔核に悩む多くの人々が,仕事などを続けながら本治療法で楽に治療を受けられ,症状から解放されるならば,われわれのこのうえない喜びである. -
4.Circular staplerによる痔核手術(PPH)の術後成績—問診表による半閉鎖法との術後成績比較
65巻7号(2003);View Description
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PPH は従来の手術方法とは異なり,痔核クッションを吊り上げ固定する特徴がある.術後早期の排便時疼痛は少なく,早期社会復帰するのに有利であるとされている.術後中長期の成績について,患者への問診郵送法により各種の術後症状を集積し,PPH を半閉鎖法(SC)と比較検討した.術後6 ヵ月において,PPH 群はSC 群より排便時痛および排便時出血が有意に少なかった.排便状態,脱出感,便失禁,ガス漏出については,いずれの群も術後6 ヵ月,2 年で有意な差はなかった.PPH は術後中長期においても,SC と同等の手術成績が得られた.
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特集 知っておくべき各種肛門疾患 5.痔瘻
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1.痔瘻手術の歴史的変遷
65巻7号(2003);View Description
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痔瘻の手術は古く,Hippocrates が現在のSeton 法に当たるapolinose と称する開放法を行って以来この手術は連綿と続けられ,種々の改良が加えられた.また古代インドや中国でも薬物による開放術が行われ,その原理は現在に伝わっている.わが国にもこの方法が伝えられ,とくに華岡流の痔瘻手術は中国古来の薬物腐食法とSeton 法を組み合せ,最後に外科的切開開放を行う独特の手法を開発した.しかし,これらの方法は肛門管筋群の機能を考慮することなく離断してしまうため,術後肛門機能不全の後遺症は避けられなかった.1900 年にはいり肛門括約筋庇護を主眼とする痔瘻手術が開発され,また肛門腺が痔瘻の原発であるとする説が提唱されて治癒率は向上し,現在ではいかにして痔瘻を切除するかの時代を過ぎ,いかにして肛門機能を保持するかが治療の焦点となっている. -
2.痔瘻の診断と治療—Parks変法括約筋温存術
65巻7号(2003);View Description
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痔瘻の診断は,瘻管の走行,原発巣の位置を確実に同定することが重要である.手術の原則は,1,1 次口および原発巣の切除,2, 効果的なドレナージ創の作製,3,肛門括約筋の損傷を最小とすることである.われわれが行っている主たる術式は,Parks 法1)に準じ,1 次口から原発巣,2 次口にいたる瘻管を一塊として切除すること,2, 創傷治癒の遷延が予測される場合は,切除部に細いチューブを留置し,ドレナージ効果を高め治癒機転の促進を図る括約筋温存術式である. -
3.Crohn病に合併した痔瘻の病態と治療
65巻7号(2003);View Description
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Crohn 病に合併した痔瘻は患者のQOL を著しく低下させる.本症にはCrohn 病自体の潰瘍性病変を主体とするprimary lesion から発生する難治性痔瘻と,cryptoglandular infection による通常の痔瘻がある.まずこれらを正確に診断し,難治性痔瘻には大腸病変を緩解に導入しながら低侵襲で肛門機能も温存できるSeton 法を行い,通常の痔瘻には括約筋温存術などの通常の手術を行う.局所に対する外科治療が効果のない症例にはQOL の向上のために人工肛門造設術を行う.痔瘻に対する抗TNFα抗体は有効との報告があるが,長期予後と呼吸器感染症などの副作用の検討が必要である. -
4.骨盤直腸窩膿瘍(IV型痔瘻)の診断と治療—MRI T2強調脂肪抑制画像法の有用性
65巻7号(2003);View Description
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IV 型痔瘻はまれであるが,適切な診断と治療が困難で再発率の高い疾患である.注意深い診察とともにMRI T2 強調脂肪抑制画像法で膿瘍腔の広がりと瘻孔の走行を術前に正確に把握することが的確な治療を行うための第一歩である.本疾患は二期分割手術が必要で,膿瘍腔の適切なドレナージ手術(初回手術)を行った後に原発口の処置(二期手術)を行う.一期手術後の経過観察に,また術後再発症例の把握にもMRI検査は有用である. -
5.炎症性腸疾患に合併した肛門腟瘻
65巻7号(2003);View Description
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潰瘍性大腸炎やCrohn 病に伴う難治性肛門腟瘻の手術について述べる.肛門周囲の炎症が鎮静した状態で,単純な瘻孔の場合には腟口辺縁切開によるlocal repair を行い,瘻孔が複雑で組織欠損を伴う場合にはgluteal fold flap を用いた手術を行い良好な結果を得ている.手術は,良好な視野で確実な瘻孔壁の切除と組織の縫合,充が重要である
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特集 知っておくべき各種肛門疾患 6.腫瘍
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1.肛門腫瘍の鑑別診断
65巻7号(2003);View Description
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肛門腫瘍自体がまれであるうえ,その組織診断別疾患はさらにまれである.しかし,肉眼的にも明らかな内痔核や肥厚肛門乳頭を腫瘍と誤診するようなことがあってはならない.肛門狭窄を痔瘻や慢性膿瘍と診断して切開排膿で満足していてはならない.難治性化膿性汗腺症や肛門Crohn 病を皮膚癌と間違えることもある.肛門管に発生する腫瘍は約30 種類も存在するので,その組織型を通覧しておくことは臨床をすすめるうえでも重要である. -
2.肛門管癌の診断と治療
65巻7号(2003);View Description
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肛門管癌は組織型が多彩で,組織型によって治療法が異なる.また,痔瘻癌など管外性に発育する腫瘍の診断には注意を要する.扁平上皮癌では放射線治療が選択されるが,他の癌では外科治療を基本とする.標準術式は直腸切断術であり,リンパ節郭清は直腸癌に準じて行われるが,鼠径リンパ節転移に対しては鼠径リンパ節の郭清が必要である.最近,直腸型の肛門管癌では括約筋切除低位前方切除術(肛門温存術)が試みられている.
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書評
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連載/外科医が知っておくべき麻酔管理の基礎知識(13)
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臨床と研究
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症例
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◇大量の下血で発症し,腹部血管造影にて診断された空腸原発gastrointestinal stromal tumorの2例
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症例
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症例
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