外科

Volume 65, Issue 8, 2003
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特集 肝細胞癌とどう戦うべきか 1.切除療法 vs 非切除療法
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1.全国原発性肝癌追跡調査よりみた治療成績の比較
65巻8号(2003);View Description
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日本肝癌研究会では,原発性肝癌について2 年ごとに全国原発性肝癌追跡調査を行っている.症例数は追跡調査ごとに増加しており,肝細胞癌新規登録症例は第15 回では17,885 例となった.この調査に基づく手術,PEI,TAE の成績の比較では,単発腫瘍は肝障害度A およびB では肝切除の成績が良好であり,多発腫瘍では一部を除き治療法による成績に差は認められなかった. -
2.小肝細胞癌に対する治療法の選択—肝切除か経皮的治療か
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3 cm 以下の小肝細胞癌に対して,肝切除,あるいは経皮的治療のどちらの治療法を選択すべきかを遠隔成績の面から比較・検討した.2 cm 以下では肝機能別,単発多発別,分化度別に亜分類して比較しても,肝切除と経皮治療のあいだに差をみなかったので,どちらの治療も選択可能である.しかし,2 cm を超えると有意に肝切除群が良好であり,経皮的治療(とくにPEI)の治療限界は2 cm と考えられた.したがって,2 cm 超の肝細胞癌には肝切除が推奨される. -
3.切除療法
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HCC の局所制御という観点からは,切除治療はほぼ100%のCR が達成可能であるのに対し,PEIT のCR は70 〜 80%,RFA のそれは85 〜 90%である.長期生存成績に関しては,RFA はまだデータのない実験的治療である.切除とPEIT との生存比較では,単発のHCC に関しては肝障害度,腫瘤径によらず切除療法が5 年生存率で10 〜 20%ほど優れているが,多発症例に対しては今後肝移植治療を加えて検討される必要がある. -
4.肝細胞癌に対する内科的治療
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肝細胞癌の内科的治療法は,腫瘍所見,肝障害度などに基づいて選択される.腫瘍が局在する場合は抗腫瘍効果の大きいRFA,PEI,放射線療法などの局所療法,腫瘍が広範に進展する場合はTAE,化学療法などの全肝的治療法が適応となる.肝硬変併存例では,局所治癒が得られても長期的には非治療部の再発をきたし,根治の可能性は低い.しかし,繰り返す再発も早期に診断し,治療することにより長期生存が可能となる.
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特集 肝細胞癌とどう戦うべきか 2.腫瘍栓に対する治療
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1.門脈腫瘍栓に対する切除療法
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肝癌は進行するにつれて門脈内へ浸潤し,経門脈的に肝内転移をきたす.また,門脈内に腫瘍栓を形成し門脈の閉塞をきたす.この門脈圧亢進症による静脈瘤の破綻や腹水を回避する目的で以前は姑息的に切除が行われていた.しかし近年,このような高度進行肝癌に対しても,症例を限定し肝動脈化学塞栓療法を加えることにより長期生存する症例を経験するようになった.どのような症例がこの治療法により延命効果を得られるのかを述べた.また,再発肝癌にみられる門脈浸潤に関しても最近の治験を示した. -
2.門脈腫瘍栓合併肝細胞癌に対するinterferonα併用動注化学療法
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門脈浸潤を伴う肝細胞癌は手術可能であっても予後不良である.手術不能例ではさらにわるく,余命数ヵ月であった.ここ数年,5— FUを中心とした肝動注化学療法が再びみなおされ,その奏効率が3 割を超えるようになった.とくに,IFN α併用の肝動注療法はいくつかの施設で施行され,約5 割の奏効率が確認されている.また,奏効例の予後は肝切除のそれを凌駕している. -
3.下大静脈腫瘍栓に対する切除療法
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下大静脈内腫瘍栓合併肝細胞癌は高度進行癌であり,また2 次的なBudd — Chiari 症候群,肺塞栓,肺転移,右心不全などをきたし,外科的切除が唯一の治療法となる.当科では9 例に対し切除療法を施行した.腫瘍栓先進部を画像診断や術中超音波にて正確に同定し,先進部位により肝上部下大静脈のテーピングの位置を三つに分類した.横隔膜下までに腫瘍栓先進部がとどまる例では腹腔内におけるTHVE の方法で切除可能で,横隔膜上まで腫瘍栓が進展し右房に達していない例では,横隔膜,心を切開し心内での下大静脈処理によりTHVE を施行し切除しうるが,右心房内に達する例では人工心肺を用い開心術下に摘除する必要がある.切除9 例は術死・在院死ともなく5 年生存率は26%であり,切除可能例においては積極的な外科的切除を施行すべきと考えられる.
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特集 肝細胞癌とどう戦うべきか 3.肝移植
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1.生体肝移植治療
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肝移植はウイルス性慢性肝疾患をも根治する肝細胞癌の理想的な治療法であり,なかでも生体肝移植はグラフトの個人性やその即時性から脳死肝移植よりも適している.当科では術前診断5 cm 以下,5 個以下という適応基準に従って肝細胞癌に対して生体肝移植を施行し,その治療成績は2 年生存率84%と良好であった.今後,ドナーの絶対的安全性の確保,レシピエントの合併症死率の可及的低下を達成しつつ,生体肝移植独自の適応基準を確立することが必要である. -
2.肝移植治療—切除療法と比較して
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肝細胞癌の治療として,肝切除と肝移植は適応がほとんど重なる部分のない治療であるが,報告者によっては,これまで肝切除のよい適応とされてきた1 〜 2 個の小さい肝細胞癌こそが肝移植の絶好の適応であると報告する者もある.しかし,担癌肝硬変患者で,かつ肝機能上肝切除に耐えない症例に対する肝移植の適応を考えるときの条件を示したと考えるのが妥当であり,ほとんど生体肝移植しか移植臓器供給の道がないわが国の現状では,硬変肝に発生した肝細胞癌に対しては,まず移植以外の適応可能な治療法を行い,肝機能や腫瘍の進展をみながら移植を考慮する方針が妥当と思われる.ドナー不足に関しては,異種グラフト,ティッシュエンジニアリングによる同種再生組織の開発に期待がかかる.
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特集 肝細胞癌とどう戦うべきか 4.再発治療とその予防
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1.再発肝細胞癌に対する治療
65巻8号(2003);View Description
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肝細胞癌は再発率の高い疾患であり,再発に対する治療法の選択が生命予後を決定する.しかし,肝硬変を背景とする肝機能不良症例が多く,その治療方針の決定は,腫瘍の大きさ・局在などの腫瘍因子のみでなく,肝機能の保持を考慮した治療法を選択する必要がある.本稿では,再肝切除を含め再発肝細胞癌に対する治療法とその成績について述べる. -
2.化学療法
65巻8号(2003);View Description
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肝細胞癌は,肝切除術や経皮的局所壊死療法などの根治的な治療が行われた患者においても治療後早期に再発することが多い.また,診断時にすでにこれらの治療が困難な状態で発見される患者も少なくない.これらの患者の予後を改善するためには局所療法のみでは限界があり,化学療法をはじめとする全身的な治療法の発展が必要である.現在,肝細胞癌に対して確実な効果のある抗癌薬はなく,延命効果の明らかなレジメンは確立していない.治療効果の高いレジメンの開発を目指して,現在多くの臨床試験が行われている. -
3.抗ウイルス薬による予防—根治的治療施行後の肝細胞癌再発とその予防
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ウイルス性慢性肝疾患に伴う肝細胞癌は,根治的な切除やablationを行った後は,原疾患に対する治療により新規発癌を予防することが大切で,再発予防の大きな決め手となる.2 回以上の発癌をきたして根治治療を行ったB 型慢性肝疾患に対するパイロット・スタディでのIFN 長期投与は発癌抑制的であり,またC 型肝炎関連肝癌に対して行ったIFN 投与のランダム化比較試験でも,IFN の再発抑制効果が示された. -
4.免疫療法による予防
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癌に対する免疫療法,とくに養子免疫療法は,分子生物学的な進歩に伴って研究が急速にすすめられるようになった.養子免疫療法にはLAK 療法,CTL 療法,TIL 療法,DC 療法がある.高山ら19)は肝癌216 切除例において免疫群(術後5 回の自己活性化T リンパ球の投与)と対照群のランダム化比較試験を行った.無再発生存は免疫群が対照群に比べ有意に良好で( p=0.008),養子免疫療法により肝癌の術後再発を抑制できる事実が証明された. -
5.レチノイドによる予防
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肝細胞癌は根治治療後も2 次発癌率がきわめて高く,このことが予後を規定する大きな要因となっている.われわれは,肝発癌を予防する目的で合成レチノイドの開発にとりくんでおり,良好な臨床成績を得ている.その機序として,硬変肝に潜在する癌を消去するclonaldeletion の概念を提唱している.
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連載/21世紀の外科的癌治療指針(1)乳癌治療
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連載/外科医が知っておくべき麻酔管理の基礎知識(14)
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