外科

Volume 65, Issue 9, 2003
Volumes & issues:
-
特集 外科におけるランダム化比較試験(RCT)の問題点 1.総論
-
-
1.外科におけるランダム化比較試験(RCT)の問題点
65巻9号(2003);View Description
Hide Description
現行のRCT は証拠に基づく医療(EBM)のためにもっとも有力なエビデンスを提供するとみなされている.しかし,他の治療と比べて有効というエビデンスが得られた治療を行ったにもかかわらず,大半の患者では他治療よりもその効果が劣るというパラドックスが起りうる.とくに,進行癌や再発癌に対する根治手術にはそのリスクがある.そのリスクを推定して説明責任を果たすためには,RCT や統計学の見直しが必要である. -
2.統計家からのランダム化比較試験(RCT)に関する助言
65巻9号(2003);View Description
Hide Description
医療分野において予防,診断,治療に関する標準的な技術を確立するためには,臨床試験による仮説の検証というプロセスが必須である.臨床試験においては,確率に基づく評価が欠かせない.臨床試験に携わる統計家は,試験実施計画書作成に深く関与し,データの信頼性を含めた統計的評価に責任をもつべきである.臨床試験は,統計家が臨床家の考えを理解し,臨床家が統計家の考えを理解することから始まる.
-
-
特集 外科におけるランダム化比較試験(RCT)の問題点 2.各論
-
-
1.食道外科
65巻9号(2003);View Description
Hide Description
食道癌においてもガイドラインの整備,EBM の普及に伴い,治療法の科学的根拠が必要となる.食道癌は症例数がそれほど多い疾患ではないため,有意差を検出可能な症例を集めることが多施設での研究でも困難となることも多く,手術に関するquality control もたいへん重要な要素となる.日本ではRCT の体制が整備不足であり,インフォームド・コンセントを得るのが困難であることが多い.日本から手術の有用性,新たな治療法を海外に発信していくために研究当初から最終段階をRCT にみすえた研究計画の作成と研究体制の整備が肝要である. -
2.胃外科
65巻9号(2003);View Description
Hide Description
胃外科はRCT が比較的数多く行われている分野といえる.胃癌に対するリンパ節郭清の意義に関する研究はいくつもの臨床試験が行われ,それらを通じて腫瘍外科におけるRCT のむずかしさと問題点が浮き彫りになった.消化管再建法の評価も数個のRCT が行われたが探索的試験に過ぎず,質は落ちる.胃癌の補助療法を比較する臨床試験は胃の分野でもっとも数多く行われたRCT であるが,手術の質により補助療法の意義は異なると考えるべきで,今後の試験において注意が必要である. -
3.膵臓外科
65巻9号(2003);View Description
Hide Description
膵癌患者にとってもっとも利益がある治療法を選別する試みとして,RCT が必要である.膵癌は他の消化器癌と違って難治性であるためにRCT を計画しにくい,RCT に対する患者のインフォームド・コンセントが得られにくいなどの問題点があった.施設ごとにさまざまな工夫を行い治療成績の向上を目指す試みが長年にわたって行われたが,21 世紀になってなお標準治療が確立していない現状に鑑み,積極的なRCT の遂行が必要である. -
4.胆道外科
65巻9号(2003);View Description
Hide Description
胆道外科のRCT はあまり行われていないが,治療方針が違うため欧米の成績を日本に導入するのは困難である.しかし日本でRCT を行うには,症例数が少ない,術前処置のオプションが多い,ブラインド化・手技統一がむずかしい,ランダム化に抵抗があるなどの問題がある.Cochrane Central Register of Controlled Study でbiliary tractsurgery をキーワードに検索すると62 件を認めたが,44 件は抗生物質と術後感染に関するもので,手術に関するものは6 件のみであった. -
5.肝臓外科
65巻9号(2003);View Description
Hide Description
最近,内外からエビデンスにもとづく医療が求められている.そのエビデンスを確立するのにもっとも有用なRCT が肝臓外科領域でもさかんに行われるようになってきたが,その質は十分高いとはいえない.研究者側にも論文を読む側にもRCT に関する十分な知識が必要である. -
6.大腸外科
65巻9号(2003);View Description
Hide Description
大腸癌の外科手術に関する臨床試験,とくにRCT の意義と問題点に関して,1, 下部大腸癌に対する下腸間膜動脈の切離部位,2, 肛門温存手術の是非,3, no touch isolation technique の有用性,4, 器械吻合と手縫い法との比較,5, 直腸癌に対するtotal mesorectal excision やD3 側方郭清の効果,6, 腹腔鏡下手術の予後やQOL,コストに与える影響などについてRCT の結果を中心に検討し,補助療法や集学的治療における外科手術手技や方法のcritical な役割について考察を行った. -
7.乳腺外科
65巻9号(2003);View Description
Hide Description
乳腺外科の領域では,多くのRCT が行われてきた.乳腺外科の際立った点は,そのRCT の結果に基づき手術術式が変遷してきた点である.すなわち,現在注目されているEBM を外科領域の中でもっとも早くからとりいれ,実践してきた分野で,外科の他の分野のモデルとなりうる領域である.本稿では,現在までに行われてきたおもな乳腺外科領域のRCT をレビューし,今後の課題について考察した. -
8.内分泌外科
65巻9号(2003);View Description
Hide Description
内分泌外科領域における臨床試験の計画・実施における問題点について,原発性副甲状腺機能亢進症の臨床研究を例に具体的に論じた.1, 研究の準備として行う文献の系統的レビューではかなりの労力を要する,2, 自覚症状をアウトカムとする場合には手術のプラセボ効果というバイアスへの対処が必要となる,3, そうした症状を測定するための道具については開発・整理の余地がある,4, 人材や研究費をはじめとする研究実施のための環境には整備すべき点が多い. -
9.呼吸器外科
65巻9号(2003);View Description
Hide Description
これまでJapan Clinical Oncology Group(JCOG)の肺癌外科グループにおいてなされたRCT をとりあげ,その問題点と今後のRCTのあり方について論じた.これまでに八つの試験が企画され,うち3 報の論文にまとめられているものの,症例集積率の低さあるいは安全性の観点から試験半ばで打ち切られてしまったものもある.したがって,完遂できるRCT を行うためには,以下の事項が不可欠であろうと思われる.1, 試験の目的,臨床的仮説,エンドポイントの設定,解析方法とサンプルサイズの決定法などが明確にされた質の高いプロトコール作成,2, 時代のニーズにあった魅力あるレジメンの選択,3, 集学的治療に精通した外科医(surgical oncologist)の育成,4, 品質管理,品質保証を維持していくうえでのモニタリング,監査の徹底,5, クリニカルリサーチコーディネーター(CRC)やデータマネージャー(DM)を雇用できるincentive(研究費など)が付加された研究 -
10.心臓外科
65巻9号(2003);View Description
Hide Description
わが国ではこれまで心臓外科領域でのRCT はほとんど行われてこなかったが,その理由として,1, 大規模臨床試験を行うに見合った研究費の不足,2, RCT における手術手技の盲検性維持の困難さ,3, 各施設の症例数の少なさ,4, われわれ心臓外科医のRCT に対する知識不足,5, RCT の実施をサポートするシステムの未熟さがあげられる.しかし,近年,厚生労働科研やmillennium project においては,医師主導型の大規模臨床試験が可能な研究費が支給され始め,心臓外科領域でも国立循環器病センターを中心に二つのRCT が開始された.倫理性,科学性,信頼性の担保されたRCT を実施するには,生物統計家,データマネージャーやクリニカルリサーチコーディネーター(CRC)など,RCT の実施をサポートする人材の確保と試験の透明性や個人情報の保護を目的とした組織づくりが肝要である.
-
-
書評
-
-
-
連載/21世紀の外科的癌治療指針(2)食道癌治療
-
-
-
連載/外科医が知っておくべき麻酔管理の基礎知識(15)
-
-
-
臨床と研究
-
-
-
症例
-
-