外科
Volume 65, Issue 13, 2003
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特集 新しい膵臓手術の適応と問題点—術式選択の標準化を目指して 1.基礎
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新しい膵臓手術に必要な膵管系の解剖と膵区域
65巻13号(2003);View Description Hide Description膵管系ならびに膵の区域は膵の発生・解剖をふまえて理解される.すなわち,膵は腹側と背側の二つの原基が癒合したものであり,膵管系もそれに伴って導管が癒合し,形成される.したがって,膵管の癒合形態や変異にはさまざまなものがあり,さらに膵管癒合不全,分枝癒合も認められる.膵の区域は従来より繁用されている膵頭・体・尾部の区分に膵の発生を加味した,膵頭部を前面・後面に分けるのが一つの方法である.
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特集 新しい膵臓手術の適応と問題点—術式選択の標準化を目指して 2.膵頭部手術
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1.十二指腸温存膵頭全切除術(胆管切除術)の適応と術式
65巻13号(2003);View Description Hide Description十二指腸温存膵頭全切除術は膵頭部の郭清を必要としない低悪性度病変や良性疾患に対する機能温存手術である.術式の要点は,膵頭部を十二指腸とmesoduodenum から離して下部胆管,前・後上膵十二指腸動静脈, 前下膵十二指腸動静脈とともに切除する.Mesoduodenum とその中を走行する後下膵十二指腸動静脈を温存すれば,Kocher 授動を行っても十二指腸の静脈還流は保たれる.膵と胆管は十二指腸へ吻合し本来の形態に近く再建する.膵頭部の全膵管系膵組織を切除することが本術式の特徴である. -
2.膵頭十二指腸第II部切除術の適応と術式
65巻13号(2003);View Description Hide Description膵頭部領域腫瘍の中で粘液産生腫瘍を中心とした良性腫瘍や低悪性度病変に対し,機能温存を目指した縮小手術として膵頭十二指腸第I I 部切除術(PHRSD)を施行している.十二指腸第I 部の血流維持と術後縫合不全による出血の危険性も考慮し,胃十二指腸動脈はできる限り温存している.膵胃吻合,十二指腸端々吻合,総胆管十二指腸端側吻合にて再建している -
3.膵頭上部切除術の適応と術式
65巻13号(2003);View Description Hide Description粘液産生膵疾患に対する標本整理の経験から,膵頭上部を切除することで上頭枝の病変を完全に切除できる症例があることに気づき,1990 年2 月以降4 例に膵頭上部切除を行った.この術式では主膵管も切除するため,膵体尾部をRoux-en-Y で空腸と吻合した.利点は十二指腸と胆管,膵頭下部を温存できることである.膵液瘻などの術後合併症を高率に認めたものの全例保存的に軽快し,退院後のQOL は良好であった. -
4.膵鉤部切除術の適応と術式
65巻13号(2003);View Description Hide Description膵縮小手術としての膵鉤部切除術につき手技と成績を示し,適応について考察を加えた.当科で施行した8 例(IPMA 3 例,IPMC 5例)で,術後膵液瘻を3 例(37.5%),胃うっ滞を4 例(50%)に認め,1例は永久瘻化したため再手術にて膵体尾部切除を行った.切除断端は4例(50%)で陽性となり,局所的な切除の限界を示した.主たる対象疾患である分枝型のIPMT を中心に,画像,病理学的な背景をもとに手術適応につき考察した.とりあえず腫瘍径が25 〜 30 mm 以上で,主膵管の拡張が軽度で,分枝基部が4 mm 以下の症例と判断された.しかし,年齢や画像の他の条件に応じた適応が今後とも積極的に認められる余地があると考えられた. -
5.腹側膵切除術の適応と術式
65巻13号(2003);View Description Hide Description膵頭部病変に対する縮小膵切除術の一つである腹側膵切除術は,膵頭部のWirsung 管領域に発生した膵管内腫瘍を代表とする膵病変に対して適応されることが多く,習得しておくべき術式である.Wirsung管の処理にあたっては,Wirsung 管での切離,共通管での切離,Vater乳頭部を含めた切離など十二指腸側の処理法だけでなく,Wirsung 管での切離,Wirsung 管とSantorini 管との合流部での切離,Santorini 管の損傷など膵尾部側での処理法にもさまざまな方法があるが,術前・術中の膵胆管像や,疾患や術中の状況に応じて臨機応変に対応していくことが重要である.また,胆管や膵管の再建が必要な場合も少なくないが,十二指腸や空腸を適宜利用して無理のない吻合法を選択すべきと考えている. -
6.膵横断切除術の適応と術式
65巻13号(2003);View Description Hide Description近年,臓器欠損によるQOL 低下を軽減することを目的としてさまざまな膵縮小手術が施行されるようになった.本稿では,われわれが行っている膵横断切除術にかかわる手術適応および術式について概説するとともに,術後合併症およびその対策,術後機能評価についても言及した.現在のところ,再建可能である限り尾側膵の温存を図っているが,症例集積とともに意義ある温存手術たりえる基準を設定することが可能になるものと考えている -
7.膵温存十二指腸全摘術の適応と術式
65巻13号(2003);View Description Hide Description膵温存十二指腸全摘術(PPTD)は,欧米では1995 年以来,主として家族性ポリポーシスに対して実施されてきた.本邦ではじめてわれわれが行ったPPTD 新法の術式を紹介した.将来MEN — 1 型患者の多発性十二指腸ガストリノーマなど適応患者がふえると思われるので,解剖学的注意点についても詳しく述べた.
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特集 新しい膵臓手術の適応と問題点—術式選択の標準化を目指して 3.膵体尾部手術
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1.全胃温存・腹腔動脈合併切除を伴う膵体尾部切除術の適応と術式
65巻13号(2003);View Description Hide Description腹腔動脈近傍に浸潤する膵体部癌に対し,われわれは全胃を温存した腹腔動脈合併切除を伴う膵体尾部切除術を1987 年以降行っている.本法は,上腸間膜動脈,下膵十二指腸動脈,胃十二指腸動脈経由で胃・肝への血流を維持する術式である.合併症が少なく術後のQOL も良好な本術式は,補助療法の充実化が図れ,従来このような症例に行われていた胃全摘や膵全摘を伴う過大侵襲手術にとってかわる術式である. -
2.脾温存膵体尾部切除術の適応と術式
65巻13号(2003);View Description Hide Description脾動静脈および脾臓を温存した膵体尾部切除術は着実な広がりをみせている.適応は,慢性膵炎,膵体尾部の良性あるいは良悪性境界腫瘍性病変,IPMT などである.手技の要点は,Toldt の癒合筋膜を脾静脈の長軸方向に沿って切離し脾静脈後面を露出し,脾静脈を膵から離する操作を,想定膵切離線あたりから脾臓に向かって行うことである.安全で確実な方法であり,今後とも広く施行されていく術式である. -
3.腹腔鏡下膵切除術の適応と術式
65巻13号(2003);View Description Hide Description現状ではいまだ報告例の少ない腹腔鏡下膵体尾部手術の適応と術式について概説した.術式には腫瘍核出術と尾側膵切除術がある.開腹手術の場合と同様に,主膵管から離れた部位にある良性腫瘍は腫瘍核出術の適応である.良性腫瘍でも主膵管に接しているものや慢性膵炎は尾側膵切除術の適応である.腫瘍核出術にはLCS を用い,尾側膵切除術には腹腔鏡用自動縫合器を用いる.膵液漏出の予防にフィブリン糊を塗布する.
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連載/21世紀の外科的癌治療指針(5)胆道癌治療
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