外科
Volume 67, Issue 2, 2005
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特集【外科領域の感染制御】
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I.総論:1.外科感染制御の現状と問題点
67巻2号(2005);View Description Hide Description近年の周術期感染の特徴・問題点として,コンプロマイズドホストにおいて,多剤耐性菌や日和見感染菌がしばしば複数菌感染を起し,病院感染のかたちで拡大するという図式が成り立つ.感染管理上,「無菌法・清潔操作の徹底」と「standard precautions の遵守」の2 点を厳密に適用した交叉感染対策と,常在細菌叢の温存を考慮した抗菌薬の適正使用が重要である.今後は,本邦独自の精度の高いエビデンス確立がわれわれに課せられた大きな課題である.
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I.総論
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2.術後感染対策のリスクマネジメント
67巻2号(2005);View Description Hide Description医療機関の感染制御に対する姿勢が厳しく評価される時代となっている.各施設は周術期の管理に関して独自のマニュアルを整備することが求められている.また病院で勤務する者は,その職種にかかわらず感染対策に関しての正しい知識をもち,それを忠実に実践していくことが求められている.手指消毒と手袋着用を徹底し,患者に「感染管理にとても気を使っていますよ」という姿勢を常にみせ,安心感を与えていく努力が必要である. -
3.手術室の感染制御
67巻2号(2005);View Description Hide Description手術室における感染制御について,手術器材の処理,手術室の空調,手術室環境整備を中心に,エビデンスに基づいて見直してみる必要がある.手術室では,環境からの感染を防止するために,従来のような一律的な清掃や消毒を行って環境の無菌性を追及するのではなく,感染経路の遮断を中心とした対策を行うべきである.手術器材の滅菌法ならびに日常的な手術環境の整備法などについてまとめる. -
4.手術時の感染対策—— universal precaution の重要性
67巻2号(2005);View Description Hide Description近年,すべての患者の血液には感染の危険が存在するとの認識(universal precaution)を基本とした,観血的医療行為時の対応が必要となっている.またHCV やHIV,さらにはAIDS 感染者の増加,結核の再興と年次的にそれらの動向の変遷がみられている.当院では,これらの事実をふまえ各感染症に取り組み,感染症の有無にかかわらず手術時の対応を統一している.しかしながら完全な感染の阻止は困難であり,患者背景に合せた,かつすべての医療従事者にわかりやすい指針と対策が必要と思われる. -
5.手術前の手洗い
67巻2号(2005);View Description Hide Description手術時手洗いの目標は,手指の通過菌叢を完全に除去・殺菌し,常在菌叢は感染を生じさせない程度まで減少させることにある.かつては固いブラシを用いた長時間の手洗いが有効と信じて長く行われたが,正しい科学的根拠に基づいてはおらず,逆に皮膚を損傷し細菌の定着・増殖を促す可能性が指摘されている.近年は手洗い時間を短縮し,ブラシを省略するなど簡素化の大きな潮流の中にあるが,単に流されるのではなく,その根拠とされるいわゆる“エビデンス”が真のエビデンスであることを確認しつつすすむことが肝要である. -
6.ドレーンの適応~選択~使用法
67巻2号(2005);View Description Hide DescriptionCDC のガイドラインでは,もしドレーンが必要なら閉鎖式ドレーンを使用し,できるだけ早期に抜去するようにと述べられている.欧米では,胆嚢摘出術や結腸手術ではドレーンは不要とされており,消化管穿孔性腹膜炎でのドレーンの有効性も認められていない.またドレーンを使用した場合でも,排液量が少なければ第2 病日に抜去される.ドレーンは感染のリスクを高めるため,今後日本でもメリット,デメリットを考慮したドレーン使用法を検討していく必要があると考える. -
7.術後の呼吸器感染対策
67巻2号(2005);View Description Hide Description生体に過大な手術侵襲が加わると,生体は易感染性状態に陥りやすい.とくに呼吸器系感染症発症は,それ以外の合併症を誘発し,ときに致死的な合併症となりうる.この術後呼吸器感染症,つまり術後肺炎発症のリスクファクターをポイント化する試みがなされている.また術後集中治療や重症救急患者管理の中で人工呼吸管理が長期に及ぶ場合は,人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発症リスクが高くなる.本稿では,術後肺炎のリスクファクターインデックスの解説と,VAP の予防対応策をエビデンスから評価し,何が一番推奨されるのか,あるいは臨床的に意味がない処置は何かなどについて解説する.
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II.各論
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1.食道切除における感染対策
67巻2号(2005);View Description Hide Description食道癌患者はリスクを有する症例が多く,手術侵襲も多大である.呼吸器合併症の中でも術後肺炎の頻度は高く,不幸な転帰をたどることも少なくない.原因菌は緑膿菌,MRSA が多いとされている.術後肺炎のリスクファクターは多岐にわたる.食道手術に特有のリスクとして,術前化学放射線治療,手術侵襲に伴う免疫抑制状態,気道周囲リンパ節郭清があげられる.対策として術前からの呼吸トレーニング,輸血に伴う免疫能低下防止のための自己血貯血,術前immunonutrition,周術期口腔ケア,リスクに応じた手術手技選択による侵襲コントロール,術後抗生物質投与の工夫,術後呼吸リハビリテーション,術早期からの経腸栄養,交叉感染・接触感染の予防を行っている.術後肺炎の予防のためには,綿密な周術期管理,リスクと手術侵襲のバランスのとれた手術術式の選択が重要である. -
2.胃切除における感染対策
67巻2号(2005);View Description Hide Description胃切除における周術期の感染症対策について,とくに胃癌を中心に概説した.感染の予防に関しては,第一世代セフェム系薬を術中から3 〜 4 日間静注するとともに,閉腹時に腹腔内を大量の生理食塩水で,腹部創も20 ml の注射器を用いて洗浄する.術後感染症が発生した場合には,感染巣の細菌検体を用いてGram 染色・培養を行い,細菌を早急に同定し感受性のある治療的抗菌薬を投与することが肝要である.さらに術野感染に対しては速やかにドレナージを行う必要がある. -
3.大腸切除における感染対策
67巻2号(2005);View Description Hide Description大腸切除術は大腸癌に対するもっとも確実な治療法として確立され,手術手技および麻酔技術の向上により安全に行われるようになってきた.SSI は感染性合併症の一つで,入院期間が延長することから医療経済的にも問題となる合併症であり,大腸切除術の20 〜 30%に起るとされている.術前抗生物質の投与,術前腸管処置の臨床的有用性はいまだ議論がある問題である.また,近年の腹腔鏡下大腸手術により低侵襲手術が可能になったが,創感染を含めて術後感染を予防する研究が今後必要である. -
4.肝切除における周術期感染対策
67巻2号(2005);View Description Hide Description感染防御に重要な役割をもつ肝臓に侵襲を加える肝切除術では,感染予防対策は重要である.術前はCDC のガイドラインに示す危険因子(患者特性)を考慮し,栄養状態の改善,糖尿病のコントロール,禁煙,遠隔臓器感染のコントロール,術前入院期間の短縮などを行う.術中は,切離法(CUSA と滴下式バイポーラ電気メス)・阻血法(間欠的流入血遮断)を駆使した出血量の減少,壊死組織発生を予防するために静脈還流も考慮した系統的肝切除術の実施,リークテストによる胆汁漏の予防,閉鎖式ドレーンの使用,肝切離面を含めて吸収性合成糸の使用を徹底することである.術後は,予防的抗菌薬として第二世代セフェム(とくにFMOX)の術中から約2 日間投与で十分と考えられた.また術後感染ハイリスク症例には早期経腸栄養が有用である. -
5.胆・膵切除における感染対策
67巻2号(2005);View Description Hide Description膵・胆道系手術は多岐にわたるが,膵頭十二指腸切除術に代表されるように,概して侵襲度の高い手術となることの頻度は高い.開腹時間が長いため空気感染や各種手術操作に伴う接触汚染の機会を生じやすく,さらに術後の生体防御能を一時的に低下させるため易感染性となりがちである.手術侵襲に加え,重要臓器の部分的欠損による生理的状態の急変も招くことから免疫系の一時的破綻をきたすこともある.したがって,可能な限りの感染防止対策が要求されており,メスを加える以前からの感染症発生を念頭に置いた周術期管理が重要といえる.
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連載/外科医のための輸血医学講座 (9)
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治療方針
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臨床経験
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症例
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早期胃癌手術時の術中検索にてガストリノーマの局在が判明したZollinger-Ellison 症候群の1 例
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書評
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