外科
Volume 67, Issue 3, 2005
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特集【医療の安全対策と法—トラブルにまきこまれないために】
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I.序論:外科領域の安全管理
67巻3号(2005);View Description Hide Description医療におけるリスクは患者側と医療側の両者に存在するものであり,医療事故予防を中心とする患者安全管理と医療事故発生時の危機管理の両面が存在する.外科手術では,術前のインフォームド・コンセントがもっとも重要であるが,術中・術後の安全管理についても細部にわたる配慮が必要である.さらに,医療事故が起った場合の具体的行動指針について十分理解しておくとともに医事紛争防止についても細心の配慮が必要である.このようなすべての過程において,医療側と患者側が情報を共有し,お互いの信頼感を維持することが何よりも重要である.
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II.各施設の取り組み
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1.特定機能病院における医療安全対策
67巻3号(2005);View Description Hide Description特定機能病院は,一般の病院における医療安全対策に加え,専任の安全管理者の配置,安全に関する管理を行う部門の設置,医療機関内に患者からの相談に適切に応じる体制の確保の3 項目が義務づけられている.さらに,医療事故を第3 者機関である医療機能評価機構に報告することも義務づけられた.特定機能病院は危険性の高い先進的な医療を行うために,高度な安全管理体制を整備しておく必要がある. -
2.一般病院における医療安全対策
67巻3号(2005);View Description Hide Description一般病院での医療安全対策の第一歩は,院内の事故事例の報告制度とその事例検討結果から病院システムの継続的改善を推進することである.標準化とクリニカルパスの整備で,患者参加も含めて安全な医療の構築をすすめることである.医療従事者の知識,マナーの向上のために継続的な教育が大切であるとともに,職種間の並列なコミュニケーションが安全文化の醸成には重要である.確認作業などにIT 化を促進することが必要である. -
3.看護師からみた医療安全対策
67巻3号(2005);View Description Hide Description医療安全対策について特別に他の医療者と異なる点はないと思うが,看護職として次のような特徴はあげられるであろう. 1.看護師は病院の中でもっとも人数の多い職種であり,患者にかかわる時間がもっとも多い, 2.他職種のとの調整も含め多様な業務をこなしている.このような特徴から, 1.看護師がインシデントにかかわる可能性がもっとも多い, 2.看護師が医療安全活動に力を入れることが医療安全にとって重要である.具体的には, 1.データによって労務管理と労働環境を見直す, 2.看護業務を見直して並行仕事をなくすことがあげられる.そのうえで,患者参加型の医療安全活動をすすめていく必要がある.
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III.教育に関して
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1.学会として医療安全教育にどう取り組むべきか
67巻3号(2005);View Description Hide Description学会として医療安全教育にどう取り組むべきかにつき,私見を述べる.この課題は日常臨床の現場で恒常的に修練されるべきものであるが,学会としては実践に役立つガイドラインを作成して指針を立てたうえで,専門医,指導医の認定基準の整備を急ぎ,医療安全対策に関する知識,技能を点検すべきである.そうして育成された中堅あるいは上級指導医,管理者が自ら現場に立って,全職員に医療の安全こそ医療人の最大の使命であることを問い続ける姿勢が肝要である. -
2.内視鏡外科医養成と安全対策のためのクオリティ・コントロール—— ことに日本内視鏡外科学会技術認定制度に関連して
67巻3号(2005);View Description Hide Description内視鏡外科手術の安全性の向上には内視鏡外科医の養成が必須である.このたび世界に先駆け発足した日本内視鏡外科学会技術認定制度は,高水準の技術的到達目標をクリアした外科医の技術を認定する単なる技術評価システムであるが,これに向けてトレーニングを積み,生まれてくる指導能力をもつ医師が義務として教育にも力を費やすならば,クオリティ・コントロールは可能となり,安全対策の一翼を担う役目を果たすものと考えられる. -
3.研修医および指導医に対する教育
67巻3号(2005);View Description Hide Description2004 年度からの新しい卒後臨床研修制度の中での,研修医と指導医に対する医療安全の教育に関して論じた.とくに,研修医の労働時間と医療安全の問題,研修医が一人で行ってよい医行為とそうでないものの区分けなどについて述べた.安全な医療を目指すうえで,教育はきわめて大きな役割をもつものであり,教育内容,教育方法など早急に整備していく必要があると考える.
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IV.法律関係
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1.医師法21 条をめぐる諸問題
67巻3号(2005);View Description Hide Description医師法21 条の異状死の届出義務は,医療過誤の存在が明らかな場合に限定されるものではない.したがって,臨床医が外科学会のガイドラインの範囲外であるとして異状死の届出をしなければ,同条違反の責任を問われる可能性がある.最高裁判所は,都立広尾病院事件判決において,同条の届出義務が憲法38 条1 項の自己負罪拒否特権に反するものでないことを明らかにした. -
2.医療裁判における診療録の役割
67巻3号(2005);View Description Hide Description患者から医療行為に関して医師の責任が問われる医療裁判において,診療録は,患者の症状,治療経過,医療行為の適否,医師の過失の有無などを判断するための最重要証拠である.しかしながら,医療裁判において提出される診療録をみると,偽造,変造,虚偽記載,記載内容の齟齬,不十分な記載,不明確な意味内容などと問題点も多い.これらの問題点を克服し診療録の記載を充実させることは,患者の治療の適正を図るためにも,医療裁判の適正迅速な審理を実現させるためにも重要である. -
3.医事紛争への対応—— 医師がトラブルにまきこまれたとき
67巻3号(2005);View Description Hide Description患者(家族・遺族)の納得が得られず,医事紛争が発生することがある.また医療事故発生時に,患者やその関係者のみならず,公的機関,警察,マスコミ関係者への対応も含め,さまざまな関係者との「リスク・コミュニケーション」が必要となっている.その基本は, 1.事前のインフォームド・コンセント, 2.患者(家族・遺族)への共感, 3.揺るがぬ事実認識,そして 4.公正な医学的評価である.
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V.総括
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医療安全対策は実効をあげたか
67巻3号(2005);View Description Hide Description医療安全対策が本格化して以来5 年以上を経たが,医事訴訟数や医療事故報道数の推移などの状況を考えると,医療事故が減少傾向にあるとは考えがたい.インシデントレポート,院内安全対策マニュアル,研修セミナーなど,現在まで行われてきた諸施策を検証し,新たな視点での対策を検討する時期にきているといえる.医療機関の経営がむずかしさを増すなか,保険診療報酬面での裏づけや,公的な資金援助など,医療安全対策のための財源が必要と考えられる.
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連載/外科医のための輸血医学講座 (10)
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治療方針
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臨床経験
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症例
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書評
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SHORT SEMINARS 水・電解質と酸塩基平衡—— Step by Step で考える(改訂第2 版)
67巻3号(2005);View Description Hide Description
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