外科
Volume 67, Issue 6, 2005
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特集【鼠径ヘルニア治療のすべて】
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1.鼠径ヘルニア手術における局所解剖と術式の変遷
67巻6号(2005);View Description Hide Description鼠径部の局所解剖について,主として成人男子の右側鼠径ヘルニアを中心に述べた.外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋,横筋筋膜,腹膜前筋膜,腹膜,鼠径靱帯,腸骨恥骨靱帯(iliopubic tract),およびCooper靱帯それぞれの相互の位置関係,さらに鼠径部の神経走行を理解する必要がある.また,tension-free の術式の普及に伴って,筋膜前腔の知識の重要性が高まった.なお,鼠径ヘルニアに対する術式の変遷にも言及した. -
2.メッシュプラグ法
67巻6号(2005);View Description Hide Descriptionメッシュプラグ法は,その再発率の低さと手技の簡便さからヘルニア手術の約60%を占める標準的手術法となった.手術のポイントは,プラグやメッシュの挿入にさいし十分に広く剥離(高位剥離)することと,メッシュの下端を恥骨結節に固定することである.しかしながら,onlay メッシュでありunderlay メッシュに比して解剖学的修復としては劣る点と,メッシュは異物である点に問題があり長期にわたり慎重に経過観察する必要がある. -
3.Lichtenstein 法
67巻6号(2005);View Description Hide Description鼠径部腹壁は腹膜,横筋筋膜,腹横筋(腹横筋腱膜),内腹斜筋,外腹斜筋(外腹斜筋腱膜)からなるが,機能的には外腹斜筋(外腹斜筋腱膜)とその他の2 層に分けられる.内腹斜筋前方にメッシュを敷くLichtenstein 法は,昨今流行している腹膜前腔にメッシュを置く方法と本質的にはかわりはなく,簡便性,普遍性,再現性,安全性,経済性に優れており,世界標準にふさわしい術式として,広く行われている. -
4.Kugel 法
67巻6号(2005);View Description Hide DescriptionKugel 法は成人鼠径ヘルニアに対するtension-free による修復術の一つである.独特なかたちのunderlay patch により,鼠径管を開放することなく腹腔鏡下の腹膜外到達法と同様に腹膜前腔を補強することができる.腹膜前腔の剥離に少々慣れが必要であるが,手術そのものは煩雑なものではなく,術者からの視野は比較的良好であり,手術時間も短時間で出血量も少なく患者側,医療者側ともにストレスが少ない手術である. -
5.Bilayer patch device(PHS)
67巻6号(2005);View Description Hide DescriptionBilayer patch device を用いた術式は,鼠径管を前方から開き,内鼠径輪あるいは鼠径管後壁から腹膜前腔に到達しunderlay patch を腹膜前腔(腹膜前筋膜浅葉と深葉のあいだ)および腹膜と精管・精巣動静脈をおおう腹膜前筋膜深葉のあいだに配置し,myopectineal orifice 全体を後方から被覆し,さらにonlay patch で鼠径管後壁,内鼠径輪を含む外側三角を広く被覆する.横筋筋膜と腹膜のあいだの筋膜構成の解剖の理解が重要である. -
6.経腹腔的アプローチによる腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術
67巻6号(2005);View Description Hide Description経腹腔的アプローチによる腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(transabdominal preperitoneal repair:TAPP)は,気腹下に鼠径床を観察し腹膜を切開・開放してメッシュによる鼠径床全体をカバーする手術法である.TAPP は腹腔内からの観察により再発ヘルニアの確定診断と不顕在性ヘルニアの診断が可能となる.鼠径床全体をメッシュでおおうことで大腿ヘルニアや膀胱上ヘルニアにも対応でき,同一手術創から両側ヘルニアの治療も可能となる.鼠径ヘルニアの修復にさいして身につけておきたい治療法の一つである. -
7.腹膜外アプローチによる腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術
67巻6号(2005);View Description Hide Description腹膜外アプローチによる腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(TEPP)の手術手技の実際を図を用いわかりやすく解説した.鼠径床解剖を完全に把握しながら行うTEPP により,限りなくゼロに近い低い再発率と迅速な回復が約束されることはいうまでもない.TEPP の明解な術野を通してはじめて,前方からでは難解な鼠径床解剖や各種鼠径ヘルニアの複雑な病態が,いとも簡単に理解できるのである.サージカル・サイエンスに基づく,理論的かつ実践的な術式TEPP の完成度の高さと普遍性を読者が実感できるよう詳述した. -
8.鼠径ヘルニアに対する個別化治療
67巻6号(2005);View Description Hide Description成人鼠径部ヘルニアの手術はtension-free の概念のもとに,腹腔鏡下手術,人工修復材(メッシュ)を用いた前方アプローチ手術など,この15 年間でさまざまな術式の変遷がみられた.その手術術式の選択にはNyhus 分類を基準にして,再発率,術後疼痛,日常生活復帰,手術の難易度,経済性などを考慮に入れた選択が重要である.当科でのNyhus 分類に応じた個別化治療について概説した. -
9.再発鼠径ヘルニアに対する術式選択
67巻6号(2005);View Description Hide Description再発鼠径ヘルニアに対する術式には従来法,腹腔鏡下手術を含めた各種tension-free repair が行われているが,再々発を起さないための術式の選択のポイント,最適な術式は何かを再発の原因,到達法などから述べ,筆者らが行っている術式につき利点や禁忌を含めて論じた. -
10.小児鼠径ヘルニア治療の現況
67巻6号(2005);View Description Hide Description日本における鼠径ヘルニアの治療は,成人領域ではメッシュの出現により術式が大きく様変わりし,治療成績も向上している.一方,小児においては,1970 年代にヘルニア嚢の高位結紮のみによる修復術が標準的な術式となり,現在も長期間定着している.近年,一部の施設においては腹腔鏡を用いたヘルニア修復術や,日帰り手術による入院期間の短縮が試みられている.しかし,腹腔鏡下のヘルニア修復術にはその有用性を検討すべきであり,これらの新しい試みの普及には問題点も多い.
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連載/外科医のための輸血医学講座 (13)
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