外科
Volume 67, Issue 8, 2005
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特集【遠隔転移にどのように対応するか】
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I.序論:1.遠隔転移の機序
67巻8号(2005);View Description Hide Description遠隔転移の機序解明を試みる最終目的は,転移の予防,早期診断,治療の手段を模索し明らかにしていくことにある.遠隔転移が成立する過程には多くの複雑なステップが存在するため,各ステップごとに有効な手段を模索するチャンスがある.本稿では,おもに原発巣に存在する多様な癌細胞の中で「遠隔転移をきたしやすい癌細胞の特徴」を中心に最新の知見をまじえて概説し,新規の診断法・治療法開発のための一助としたい.
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I.序論
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2.微小遠隔転移の病理と診断
67巻8号(2005);View Description Hide Description微小転移は術後の遠隔転移による再発の主たる原因と考えられ,その診断は治療法とならんで術後再発の予防にとってきわめて重要である.近年,リアルタイムRT — PCR 法を中心とした遺伝子診断法を用いて,この微小遠隔転移を高感度かつ定量的に検出することができるようになり,一部では再発予測因子としての評価がほぼ確立され,治療法選択のための有用なツールとなりつつある.本稿では,腹膜転移,リンパ節転移および血行性転移のそれぞれについて微小転移診断の最近の進歩と治療適応への応用について述べる.
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II.原発巣からみた対応—— 診断と治療
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1.乳癌の遠隔転移
67巻8号(2005);View Description Hide Description乳癌は根治手術+術後補助療法を施行しても約3 割が10 年以内に再発し,そのうち治癒や長期生存が得られるものは1 割以下であるため,症状の緩和,QOL の維持または向上,生命予後の延長が治療目標となることが多い.再発転移乳癌は全身病であり,全身状態,ホルモン感受性,閉経状況,HER2 発現状況などを考慮した薬物療法(化学療法,内分泌療法,免疫抗体療法)を中心に,放射線治療,外科的手術による集学的治療が選択される. -
2.食道癌の遠隔転移
67巻8号(2005);View Description Hide Description食道癌遠隔転移,とくにリンパ節・肺転移は積極的追加郭清術,鏡視下手術,化学放射線療法などを駆使して局所・領域制御を図り,さらに全身化学療法を組み合せることで予後の向上が得られ,早期に発見されれば長期生存・治癒の可能性もある.肝転移も化学療法に反応する症例では制御の可能性がある.他の臓器転移の制御は依然困難である.さらなる治療成績の向上のために,多様な治療法に対する効果予測法の開発が待たれる. -
3.胃癌の遠隔転移
67巻8号(2005);View Description Hide Description胃癌の主要な遠隔転移は肝臓と腹膜であるが~どちらに転移しやすいかは原発巣から比較的予測が可能である.なかでも~筆者は癌の発育様式を示すと考えられる間質反応(髄様型と硬性型)がもっとも影響することを見出した.また分子生物学的検討からも~両者の転移で関連する遺伝子が異なることが判明した.このように~原発巣から遠隔転移を予測し~それぞれを予防する術中治療を開発し~ある程度再発予測あるいは再発の遅延に成功した. -
4.Gastrointestinal stromal tumor(GIST)の遠隔転移
67巻8号(2005);View Description Hide Description消化管間質腫瘍(GIST)の遠隔転移は肝と腹膜に多く,腹腔外臓器に生じる頻度は低い.転移性GIST 治療の現在の第一選択はimatinib mesylate による分子標的治療である.KIT 陰性GIST やKIT 遺伝子変異をもたないGIST ではimatinib mesylate が奏効する可能性は低く,切除可能な腫瘍においては外科治療が優先される.Imatinib mesylate 奏効例への外科的介入が患者予後を改善するかどうかは現時点では明らかでなく,データの蓄積が待たれる. -
5.大腸癌の遠隔転移
67巻8号(2005);View Description Hide Description大腸癌遠隔転移臓器としては,肝,肺,骨,脳が代表的であり,なかでも肝転移は経過中に大腸癌の約1/4 の症例に認められる.肝転移治療の第一選択は外科的切除であり,外科的切除の適応とならない場合は,熱凝固療法,肝動注化学療法,全身化学療法などを行う.肺転移も積極的に外科的切除を考慮し,適応とならない場合は全身化学療法を行う.脳転移は他臓器の転移がコントロールされている場合は外科的切除または放射線療法を考慮すべきである. -
6.肝細胞癌の遠隔転移
67巻8号(2005);View Description Hide Description進行肝細胞癌は経皮的肝灌流をはじめ新治療法の導入により肝内病変の制御が向上した一方で,改めて肝外病変の制御が次の課題としてクローズアップされている.しかしこれに対する有効な治療法はいまだ確立されていない.遠隔転移では肺転移がもっとも頻度が高いが,多発性のことが多く,肺切除の適応となる症例は少ない.リンパ節転移は skip metastasis を認めることがあり,孤立性であれば切除で予後の改善が得られるとの報告が散見され,筆者らも積極的切除に肝病変を経皮的肝灌流で制御することで中〜長期生存例を経験している.副腎転移も他部位がコントロール可能であれば切除により予後の改善が得られる.骨転移や脳転移は手術の対象となる場合は少なく,放射線療法や全身化学療法に委ねるべきと考える.いずれにしても遠隔転移は進行肝細胞癌の終末像であるが,従来積極的な治療の対象にならなかった症例でも,肝内病変の強力なコントロールにより遠隔転移巣が次の治療課題として認識される時代が到来している. -
7.膵臓癌の遠隔転移
67巻8号(2005);View Description Hide Description現時点では,膵癌の肝転移,肺転移,癌性腹膜炎,骨転移などの遠隔転移例はきわめて予後不良であり,末期状態といわざるをえない.遠隔転移巣の切除や肝動注療法の治療成績に関してはいまだ不明である.しかしgemcitabine などによる全身化学療法が効果的で,tumor dormancy が得られる症例もあり,QOL が保たれるように外来で副作用のない投与法が推奨される.また腹水,浮腫,癌性疼痛に対する緩和医療にも配慮を行う必要がある.
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III.転移巣からみた対応—— 診断と治療
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1.転移性脳腫瘍
67巻8号(2005);View Description Hide Description原発巣コントロールが不十分である癌患者に転移性脳腫瘍を併発することが多く,われわれ脳神経外科領域でも比較的よく目にする疾患である.脳表病変は基本的に外科的摘出が望ましいが,深部病変や多発性病変,そして全身麻酔下での開頭手術が困難な例が多く,これらに対してきわめて低侵襲なガンマナイフが最近よく使われるようになった.本治療を中心に,転移性脳腫瘍治療に関して,最近の知見を交え解説していく. -
2.転移性肺腫瘍
67巻8号(2005);View Description Hide Description転移性肺腫瘍に対する診断および外科治療について最近の知見をもとに解説を試みた.標準的な診断法および鑑別疾患について概説し,外科治療の適応基準の変遷について述べた.術式については肺切除の範囲および腫瘍への到達経路,すなわち開胸術と胸腔鏡手術の比較検討を行った.術後成績ならびに生命予後に影響を及ぼす臨床的・病理学的因子について述べた.また近年外科切除にかわる新しい肺転移局所療法について述べた. -
3.転移性骨腫瘍
67巻8号(2005);View Description Hide Description転移性骨腫瘍治療は,原発科,整形外科,放射線治療科が密に連携をとり,集学的に診療を行い,未然に骨折や麻痺を防ぐことがQOL 保持のためにはもっとも有効である.そのためには,1. 原発科での骨転移の危険についての患者教育と綿密な経過観察,2. 疼痛の原因精査,骨転移時の骨折危険性の診断など早期の日常的整形外科紹介,3.癌治療施設専門施設(放射線治療設備のある病院)の充実が必要である. -
4.転移性肝腫瘍
67巻8号(2005);View Description Hide Description転移性肝癌を認めた場合,従来は消化管造影や内視鏡,胸部CT,頭部MRI,骨シンチなど多くの検査が施行されてきた.しかし,近年はFDG—PET を行い異常集積の認められる部位について他の画像診断により精密検査をするのが,患者の経済的・肉体的負担も減り,医療経済効果も上がる診断マニュアルと考えられる.一方,治療に関しては大腸癌を原発巣とする場合は積極的に肝切除を選択するべきであるが,非大腸癌の場合は全身転移の一部と認められることが多く,切除に関しては慎重とすべきである.
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連載/外科医のための輸血医学講座 (15)
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臨床と研究
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手術手技
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Procedure for prolapse and hemorrhoids(PPH)による痔核手術の手技上の注意点と適応について
67巻8号(2005);View Description Hide Description
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症例
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書評
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