外科
Volume 67, Issue 11, 2005
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特集【周術期管理の原理と原則】 I .周術期管理の基礎
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1.麻酔の術前評価と管理 —— 麻酔科医の視点から
67巻11号(2005);View Description Hide Description[手術や処置(とくに侵襲的な検査なども含めて)の前に患者の術前状態を把握することは手術操作などの侵襲が加わったさいの対処のために必須である.とくに呼吸循環系の合併症を把握しておくことが重要で,手術・検査時の麻酔や鎮静・鎮痛のための薬剤をいかに使用していくかに肝要である.これらの情報把握には問診や既往歴・現症のチェックが有用で,一般的ないわゆる術前検査よりも重きを置くべきである., 手術や処置(とくに侵襲的な検査なども含めて)の前に患者の術前状態を把握することは手術操作などの侵襲が加わったさいの対処のために必須である.とくに呼吸循環系の合併症を把握しておくことが重要で,手術・検査時の麻酔や鎮静・鎮痛のための薬剤をいかに使用していくかに肝要である.これらの情報把握には問診や既往歴・現症のチェックが有用で,一般的ないわゆる術前検査よりも重きを置くべきである.] -
2.周術期栄養管理における栄養サポートチーム(NST)の役割*
67巻11号(2005);View Description Hide Description[栄養サポートチーム(NST)活動の全国的広がりにより,本邦の周術期栄養管理も大きな変遷がみられている.術後合併症を起す術前の栄養学的危険因子としては,低栄養,高齢者における微量栄養素の低下などがあげられる.このためNST を中心に確実な初期評価を行い,さらに周術期にNST が積極的に介入し,症例個々に応じたimmunonutritionや抗酸化栄養療法などを駆使し,合併症発生を予防することが重要である.また術後感染防止には,CDC ガイドラインをもとにしたinfection control だけではなく,病院全体で質の高い栄養療法を実施するNST 活動を加味した合同戦略の実践が重要である., 栄養サポートチーム(NST)活動の全国的広がりにより,本邦の周術期栄養管理も大きな変遷がみられている.術後合併症を起す術前の栄養学的危険因子としては,低栄養,高齢者における微量栄養素の低下などがあげられる.このためNST を中心に確実な初期評価を行い,さらに周術期にNST が積極的に介入し,症例個々に応じたimmunonutritionや抗酸化栄養療法などを駆使し,合併症発生を予防することが重要である.また術後感染防止には,CDC ガイドラインをもとにしたinfection control だけではなく,病院全体で質の高い栄養療法を実施するNST 活動を加味した合同戦略の実践が重要である.] -
3.術後の疼痛管理
67巻11号(2005);View Description Hide Description[昔の外科医は「切ったら痛いのは当然」と考え,手術後の疼痛に無頓着であった.今の外科医は「手術後の痛みは執刀医の責任」と思い,手術後の鎮痛に積極的である.「手術後の痛みは外科医の恥」であり,術後疼痛管理の原理と原則は,(1) オピオイドの併用,(2) 硬膜外持続注入,(3) 患者管理型鎮痛法(patient-controlled analgesia:PCA)である., 昔の外科医は「切ったら痛いのは当然」と考え,手術後の疼痛に無頓着であった.今の外科医は「手術後の痛みは執刀医の責任」と思い,手術後の鎮痛に積極的である.「手術後の痛みは外科医の恥」であり,術後疼痛管理の原理と原則は,(1) オピオイドの併用,(2) 硬膜外持続注入,(3) 患者管理型鎮痛法(patient-controlled analgesia:PCA)である.] -
4.Surgical site infection(SSI)と感染制御
67巻11号(2005);View Description Hide Description[手術部位感染(surgical site infection:SSI)とは,手術操作を直接加えた部位に発生する術後感染症のことであるが,これには手術創の感染(表層superficial SSI,深部deep SSI)に加え,縫合不全や遺残膿瘍などの腹腔内感染も含まれ, 後者は臓器・体腔感染症(organ/space SSI)と呼ばれている.SSI 防止対策には,㈰ 術前の患者準備(術前入院期間の短縮,栄養管理,禁煙,血糖管理など),㈪ 手指および術野の消毒(手術時手指消毒,手術野の消毒など),㈫ 術中対策(予防的抗菌薬の投与,手術手技上の留意点など),㈬ 術後・病棟における対策(手術創処置,交叉感染対策,SSI サーベイランスなど)を米国疾病予防管理センター(Centers of Disease Control and Prevention:CDC)のガイドラインを参考に総合的に行うことが重要である., 手術部位感染(surgical site infection:SSI)とは,手術操作を直接加えた部位に発生する術後感染症のことであるが,これには手術創の感染(表層superficial SSI,深部deep SSI)に加え,縫合不全や遺残膿瘍などの腹腔内感染も含まれ, 後者は臓器・体腔感染症(organ/space SSI)と呼ばれている.SSI 防止対策には,㈰ 術前の患者準備(術前入院期間の短縮,栄養管理,禁煙,血糖管理など),㈪ 手指および術野の消毒(手術時手指消毒,手術野の消毒など),㈫ 術中対策(予防的抗菌薬の投与,手術手技上の留意点など),㈬ 術後・病棟における対策(手術創処置,交叉感染対策,SSI サーベイランスなど)を米国疾病予防管理センター(Centers of Disease Control and Prevention:CDC)のガイドラインを参考に総合的に行うことが重要である.]
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特集【周術期管理の原理と原則】 II .臓器障害と周術期管理
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1.神経障害患者の周術期管理
67巻11号(2005);View Description Hide Description[神経障害患者は脳血管障害と神経変性疾患に大別される.まず神経障害の程度を的確に把握し,前者では血圧のコントロールと抗凝固薬の調整が,後者では疾患に応じた内服薬の調整が必要となる.術後合併症としては誤嚥性肺炎と腸管麻痺の遷延が重要であり,これらを念頭に置いた管理が求められる.術前から神経内科医や脳外科医に助言を求め,看護師や理学療法士と密に連携することが大切である., 神経障害患者は脳血管障害と神経変性疾患に大別される.まず神経障害の程度を的確に把握し,前者では血圧のコントロールと抗凝固薬の調整が,後者では疾患に応じた内服薬の調整が必要となる.術後合併症としては誤嚥性肺炎と腸管麻痺の遷延が重要であり,これらを念頭に置いた管理が求められる.術前から神経内科医や脳外科医に助言を求め,看護師や理学療法士と密に連携することが大切である.] -
2.精神障害患者の周術期管
67巻11号(2005);View Description Hide Description[周術期の精神障害の病態は非常に多様である.本稿では術前より精神神経系に異常のある患者と術後精神障害,とくに術後せん妄の管理について述べる.術前より精神神経疾患の診断とされた患者に対しては,術前評価が非常に重要であり,それらの症例に対する特殊性を認識し対応することが肝要である.また,術後精神障害は大きな問題となっており,とくに術後せん妄は高齢者において発生頻度が高く,予防と発生時の迅速な対応が必要である., 周術期の精神障害の病態は非常に多様である.本稿では術前より精神神経系に異常のある患者と術後精神障害,とくに術後せん妄の管理について述べる.術前より精神神経疾患の診断とされた患者に対しては,術前評価が非常に重要であり,それらの症例に対する特殊性を認識し対応することが肝要である.また,術後精神障害は大きな問題となっており,とくに術後せん妄は高齢者において発生頻度が高く,予防と発生時の迅速な対応が必要である.] -
3.慢性呼吸障害患者の周術期管
67巻11号(2005);View Description Hide Description[慢性閉塞性肺疾患(COPD)を主体とする低肺機能患者への周術期管理においては,術前における病態を十分に把握して術後予測される肺合併症に備える意識が肝要である.術後の分泌物喀出不全による無気肺あるいは肺炎などに対しては,その程度に応じてタッピング,トラヘルパー挿入,気管支鏡による吸引あるいは気管切開などの処置で対応する., 慢性閉塞性肺疾患(COPD)を主体とする低肺機能患者への周術期管理においては,術前における病態を十分に把握して術後予測される肺合併症に備える意識が肝要である.術後の分泌物喀出不全による無気肺あるいは肺炎などに対しては,その程度に応じてタッピング,トラヘルパー挿入,気管支鏡による吸引あるいは気管切開などの処置で対応する.]
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特集【周術期管理の原理と原則】 II .臓器障害と周術期管理
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4.循環器障害患者の周術期管理
67巻11号(2005);View Description Hide Description[高齢化社会とともに高齢者にも各分野で手術適応が拡大する一方,心疾患合併例が増加し,術前および周術期管理に注意を要する.術前検査で手術侵襲度評価,各心疾患のスクリーニングと精密検査を行い,周術期管理では血行動態の維持,心事故回避に留意する.緊急例では,十分な術前評価ができないだけに心疾患合併の可能性を常に念頭に周術期管理を行う.心疾患合併例に対する手術にさいしては,外科医,麻酔科医および循環器専門医との緊密な連携が重要である., 高齢化社会とともに高齢者にも各分野で手術適応が拡大する一方,心疾患合併例が増加し,術前および周術期管理に注意を要する.術前検査で手術侵襲度評価,各心疾患のスクリーニングと精密検査を行い,周術期管理では血行動態の維持,心事故回避に留意する.緊急例では,十分な術前評価ができないだけに心疾患合併の可能性を常に念頭に周術期管理を行う.心疾患合併例に対する手術にさいしては,外科医,麻酔科医および循環器専門医との緊密な連携が重要である.] -
5.肝障害患者の周術期管理
67巻11号(2005);View Description Hide Description[慢性肝障害を有する患者は侵襲に対する予備能が低く,手術管理には注意が必要である.術前は肝予備能を的確に判断し予備能に応じた術式を選択することが重要である.活動性肝炎の処置,利尿薬の投与,栄養管理や凝固能の補正を行うとともに,糖尿病,消化性潰瘍や食道静脈瘤などの合併症を精査しておく.術後はややドライサイドに管理しつつ肝や腎の血流を保ち,また十分なカロリーを投与して異化の亢進を抑制し,経口摂取をできるだけ早く再開する., 慢性肝障害を有する患者は侵襲に対する予備能が低く,手術管理には注意が必要である.術前は肝予備能を的確に判断し予備能に応じた術式を選択することが重要である.活動性肝炎の処置,利尿薬の投与,栄養管理や凝固能の補正を行うとともに,糖尿病,消化性潰瘍や食道静脈瘤などの合併症を精査しておく.術後はややドライサイドに管理しつつ肝や腎の血流を保ち,また十分なカロリーを投与して異化の亢進を抑制し,経口摂取をできるだけ早く再開する.] -
6.慢性腎不全患者の周術期管理
67巻11号(2005);View Description Hide Description[慢性透析患者に対しては,術前のリスクの評価と,これに基づく手術適応の決定,および術前の準備を行うことにより,周術期管理は比較的安全に行えるようになった.術後は腎不全患者における体液,代謝,ホルモン環境の特異性を考慮し,血液浄化療法を行うとともに,患者の状況に見合った,綿密な術後の外科学的管理,輸液管理,栄養管理,薬剤投与を行う必要がある., 慢性透析患者に対しては,術前のリスクの評価と,これに基づく手術適応の決定,および術前の準備を行うことにより,周術期管理は比較的安全に行えるようになった.術後は腎不全患者における体液,代謝,ホルモン環境の特異性を考慮し,血液浄化療法を行うとともに,患者の状況に見合った,綿密な術後の外科学的管理,輸液管理,栄養管理,薬剤投与を行う必要がある.]
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特集【周術期管理の原理と原則】 II .臓器障害と周術期管理
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7.糖尿病患者の周術期管理
67巻11号(2005);View Description Hide Description[糖尿病を有する手術患者数は年々増加している.糖尿病患者は腎,心血管系に合併症をもつことがあり,術前に対策を講じる必要がある.高血糖は脱水,電解質異常,好中球の機能異常,創傷治癒の遅延を引き起すので,周術期には耐糖能に応じてスライディングスケール法かインスリン持続注入法で血糖値をコントロールする.感染や縫合不全などの合併症を発症したさいはより厳密な血糖値のコントロールを行い,好中球機能や創傷治癒機転の改善を促すことが重要である., 糖尿病を有する手術患者数は年々増加している.糖尿病患者は腎,心血管系に合併症をもつことがあり,術前に対策を講じる必要がある.高血糖は脱水,電解質異常,好中球の機能異常,創傷治癒の遅延を引き起すので,周術期には耐糖能に応じてスライディングスケール法かインスリン持続注入法で血糖値をコントロールする.感染や縫合不全などの合併症を発症したさいはより厳密な血糖値のコントロールを行い,好中球機能や創傷治癒機転の改善を促すことが重要である.]
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特集【周術期管理の原理と原則】 III .特殊病態と周術期管理
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1.小児の周術期管
67巻11号(2005);View Description Hide Description小児,とくに新生児,乳児は緊急手術を要する割合が高く,症状も急変しやすい.全身状態を迅速,的確に評価し,適切に対応することが求められる.そのためには疾患の特徴,病態生理に対する十分な理解が不可欠である. -
2.高齢者の周術期管理
67巻11号(2005);View Description Hide Description[加齢とは予備能力の低下,侵襲に対する対応能力の低下であるといえる.近代外科学の進歩は高齢者への手術拡大をもたらしたが,諸臓器の潜在的な機能低下,栄養代謝変化,免疫機能低下から術後合併症を生じやすい.予備能力,対応能力の低下は々の臓器障害から相互に関連した病態まで引き起す.したがって高齢者の周術期管理において,これら加齢を伴う生理的変化を十分理解した綿密な対策が必要である.それにより術後合併症を減少させ,有意義な臨床結果をもたらすことができると考える., 加齢とは予備能力の低下,侵襲に対する対応能力の低下であるといえる.近代外科学の進歩は高齢者への手術拡大をもたらしたが,諸臓器の潜在的な機能低下,栄養代謝変化,免疫機能低下から術後合併症を生じやすい.予備能力,対応能力の低下は々の臓器障害から相互に関連した病態まで引き起す.したがって高齢者の周術期管理において,これら加齢を伴う生理的変化を十分理解した綿密な対策が必要である.それにより術後合併症を減少させ,有意義な臨床結果をもたらすことができると考える.] -
3.妊娠患者の周術期管理
67巻11号(2005);View Description Hide Description[妊娠中の外科手術は決してまれなものではない.妊娠時は,母体が非妊娠時とは異なる生理的状態にあることを知り,とくに循環血漿量増加,凝固亢進状態であることや増大した子宮による仰臥位低血圧症候群の発生に注意し,必要な前投薬のもと,麻酔・手術を行うことが大切である.また,そのさいには常に胎児への影響を念頭に置き,妊娠の維持あるいは胎児への悪影響を及ぼす子宮収縮,子宮血流減少などを避ける処置が必要である.産科医師との連携が欠かせない., 妊娠中の外科手術は決してまれなものではない.妊娠時は,母体が非妊娠時とは異なる生理的状態にあることを知り,とくに循環血漿量増加,凝固亢進状態であることや増大した子宮による仰臥位低血圧症候群の発生に注意し,必要な前投薬のもと,麻酔・手術を行うことが大切である.また,そのさいには常に胎児への影響を念頭に置き,妊娠の維持あるいは胎児への悪影響を及ぼす子宮収縮,子宮血流減少などを避ける処置が必要である.産科医師との連携が欠かせない.]
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連載/外科医のための輸血医学講座 (17)
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