外科
Volume 69, Issue 1, 2007
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特集【 3 次元画像による手術支援】
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I.医用3 次元画像:医用3 次元画像の基礎と応用
69巻1号(2007);View Description Hide Description本稿では3 次元画像処理の基礎とその種々のアルゴリズムについて概説する.まず3次元画像処理の基本的概念を示し,3 次元濃淡画像,3 次元2 値画像,ならびに3次元表示画像などの区別について述べる.3 次元濃淡画像の数学的定義を示した後,3 次元表示画像生成も含めた3 次元画像処理手法について概説する.その後,手術支援を目的とした3 次元画像処理例を示す.
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II.仮想内視鏡の開発と実用化
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1.微小肺病変の治療における virtual bronchoscopic navigation の利用
69巻1号(2007);View Description Hide DescriptionVirtual bronchoscopic navigation(VBN)とは,末梢病変までの気管支ルートの仮想画像を利用して直視下に気管支鏡を誘導する方法である.容易に短時間で検査ができる利点がある.VBN を利用した経気管支的バリウムマーキングは,肺微小病変に対する胸腔鏡下手術時の病変位置,切除範囲の決定に有用であり,合併症もないため複数病変にも対応できる. -
2.仮想胃内視鏡の臨床応用
69巻1号(2007);View Description Hide DescriptionMultidetector-row CT を利用した胃の仮想内視鏡(VE)を開発した.人間ドック63例,66 病変につき,同日に施行した胃内視鏡(GF)の所見と対比した結果,感度92.7%,特異度90.9%の成績を得た.元画像の腹部CT(2 次元)像も,肝胆膵腎などの病変を発見するのに効果があった.有効性を確かめたので,人間ドックに胃VE ドックを設定し,過去5 年間に2,000 例近い症例を経験したが,大きな見落としはなかった. -
3.Multidetector-row CT を用いた仮想胆道鏡・膵管鏡の有用性
69巻1号(2007);View Description Hide DescriptionMultidetector-row CT データから仮想胆道鏡・膵管鏡像を作像した.胆管,膵管を仮想内視鏡法で作像するためには,非イオン性ヨード造影剤を用い,直接胆管造影法,経静脈的胆管造影法,内視鏡的逆行性胆管膵管造影を付加してCT を撮影する必要がある.仮想胆道鏡・膵管鏡の解像度は有望で,直径1 〜 2 mm の管腔イメージを作像することができ,実際の内視鏡で可視化しえない閉鎖腔やアングルでの作像が可能である.しかし隆起性病変はデフォルメされて表現されることが多く,病変検出力に関しては今後の詳細な検討が必要である. -
4.MR virtual endoscopy による胆・膵疾患の診断
69巻1号(2007);View Description Hide Description近年の磁気共鳴胆管膵管造影(MRCP)撮像は2D-prospective acquisition correction (2D-PACE)法1)の開発と3D-turbo-spin echo(3D-TSE)法の併用により,膵・胆道系のMR 画像解像度は格段に進歩した.当院では2005 年4 月以降同手法を併用し,現在までに50 例(内訳:胆石・総胆管結石症例36 例・胆管癌6 例・総膵炎4 例・胆管嚢腫2 例・膵管内乳頭粘液性腫瘍1 例・膵臓癌1 例)に対してMRI 画像生データをもとにMPR,MIP,VR による再構成画像とVE 法による管腔内画像を生成し,画像精度について検討した.VE による胆管描出能は胆嚢管81.4%,左右肝管97.7%,肝内胆管88.4%であった.胆嚢摘出術症例におけるconventional MR/MRCP 法による胆嚢管分岐部描出率は13/25 例(52.0%),3D-TSE 併用MR/MRCP+VE 法における描出率は23/25 例(92.0%)と良好であった.本法は,術前のより正確な解剖学的評価を可能にし,術中判断に委ねられていた胆嚢管切離行程を術前からより正確にシミュレーションでき,腹腔鏡下胆嚢摘出術遂行の安全性が増すものと考えられる.
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III.3 次元画像による手術シミュレーション
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1.手術計画支援のための対話型ボリューム変形・加工シミュレーション
69巻1号(2007);View Description Hide Description外科領域において,鏡視下手術などの先端医療技術が広がりをみせる中,手術の信頼性,安全性の向上に関する社会的関心が高まっている.一方,CT やMRI などの撮像機器の普及により,臨床現場では膨大な医用画像が蓄積されている.本研究では,鏡視下手術における患者の症例に合せた高度治療計画の支援を目的として,術前リハーサルシステムの開発を目指している.手術時に想定される軟組織の物理的な変化をシミュレートし,実時間でボリューム像上に描出することで,あたかも術前に手術を試行できるような環境を提供する.術前における綿密な手術計画の立案,計画内容の共有を支援する.本稿では,開発システムの概要と臨床データの適用を通したいくつかの検証結果を報告する. -
2.肝癌手術の術前シミュレーションとその精度
69巻1号(2007);View Description Hide Description筆者らの施設で使用している肝切除シミュレーションシステムは,1. 3 次元統合画像から肝内脈管・腫瘍の詳細な位置関係の把握,2. 肝循環に基づいた正確な切除肝体積,surgical margin の予測が可能であり,安全かつ合理的な肝癌切除術式の決定に寄与する. -
3.3 次元シミュレーションによる生体肝移植ドナーの術前評価と術式選択
69巻1号(2007);View Description Hide Description3 次元シミュレーションは生体肝移植グラフトの容積の評価だけでなく,個々の肝静脈の還流領域を測定することも可能であるため中肝静脈の分枝(V5・V8)の再建計画に有用である.また,多断面変換表示(MPR)画像にて肝静脈末梢間吻合を同定できる例もあり,この場合肝静脈再建を省略することができる.3 次元シミュレーションは生体肝移植の手術計画のポイントとなるグラフト選択,および肝静脈再建に必要な情報を提供し,より安全な生体肝移植手術に寄与している.
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IV.3 次元画像の新たな可能性
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1.内視鏡手術トレーニングにおけるバーチャルリアリティシミュレータ
69巻1号(2007);View Description Hide Description内視鏡外科手術において,トレーニングの重要性はますます増加している.近年,内視鏡外科手術トレーニングのためのバーチャルリアリティ(VR)シミュレータが開発され市販されている.これらのVRシミュレータは,内視鏡外科手術のトレーニング機器としてだけでなく,手術に必要なpsychomotor skill の測定機器としても有用であるとのエビデンスが蓄積されつつある.本稿では,コンピュータ技術の進歩と相まって著しい進歩をみせる内視鏡手術VR シミュレータの意義について紹介する. -
2.コンピュータ支援仮想乳房モデルの実用化に向けて
69巻1号(2007);View Description Hide Description乳房は体表に存在する軟部組織である.乳房手術後の客観的な変形予測は困難である.CT やMRI などの画像データをもとに,乳房組織を単一の構造物と仮定し,正常乳房の外観変形から組織特性因子を推定し,有限要素法を用いて仮想乳房モデルを作成した.さらに体位による乳房の重力変形やインプラント手術に相当する質量変化を再現した.仮想乳房モデルの作成は術前の術式の検討が可能となり,患者の治療法への理解に有効である.
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