外科

Volume 69, Issue 2, 2007
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特集【腫瘍の術前・術中診断と術式選択】
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1.食道癌の術前診断と術式選択
69巻2号(2007);View Description
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食道癌手術は消化器癌手術の中でも手術侵襲がもっとも大きいものの一つである.そのため術前診断は進行度診断のみに限らず,重複癌の検索や全身状態の評価も必要である.食道癌のおもな治療は内視鏡的粘膜切除術,手術療法,放射線療法,化学療法などが通常行われており,食道癌治療ガイドラインによれば壁深達度およびリンパ節転移によりその治療方法の選択が行われている.本稿では,食道癌の術前診断と術式選択およびガイドラインに基づいた各占居部位別治療方針について概説する. -
2.食道癌の術中診断と術式選択
69巻2号(2007);View Description
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食道癌の術式選択は術前診断に基づいて行われるが,それとともに術中診断により術式の変更を行うこともまれではない.術中診断としては,胸膜・腹膜播種,隣接臓器浸潤(合併切除の可否,術前治療の効果),食道切除断端癌遺残,臓器転移(肺,肝),リンパ節転移(sentinel node navigation surgery,郭清省略)などにつき行い,その結果により術式の変更を行う.外科手術は常に術中診断,術中判断が要求され,その綿密さが成績を左右している. -
3.胃癌の術前診断と術式選択
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内視鏡などによる胃癌の診断によって治療法が分けられる.早期癌に対しては「内視鏡的粘膜切除術(EMR)/内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」が行われる(サーベイランス中).EMR/ESD ができない早期癌や進行癌に対しては,定型手術や拡大手術(D3 拡大郭清の有効性はない)が行われる.一方切除不能の癌は,離断吻合などを行って経口摂取を可能にして化学療法などの治療を行う.進行癌手術後の補助化学療法では限られたグループにおいて有効性が証明され,その対象が拡大されつつある(新しい薬剤による). -
4.胃癌の術中診断と術式選択
69巻2号(2007);View Description
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胃癌のリンパ節転移診断はむずかしいため,早期胃癌は病変の大きさ,深達度,組織型の術前診断に基づいて,内視鏡的粘膜切除術(EMR),局所切除,縮小手術A (D1+α),縮小手術B(D1+β)あるいは定型手術(D2)が選択され,術中に深達度や断端距離を確認のうえ,噴門側胃切除,幽門保存胃切除,胃半切除,神経温存などを選択する.進行胃癌は定型手術を基本とし,隣接臓器浸潤には合併切除による治癒切除を目指し,リンパ節転移の可能性を考慮して膵温存脾摘術や経食道裂孔的縦隔リンパ節郭清を行う.非治癒因子が腹膜播種,肝転移で転移巣切除により治癒切除となる場合や腹腔細胞診陽性のみの場合は原発巣切除とD2 郭清を行う.出血,狭窄を伴う切除不能胃癌には空置的胃空腸吻合術などを考慮する. -
5.直腸癌の術前診断と術式選択
69巻2号(2007);View Description
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直腸癌は解剖学的特殊性からも術後の機能障害や局所再発が生じやすい.そのため,外科的治療においては,根治性を追求しつつ,機能温存も追及するきめ細かい術式選択が必要となる.本稿では, 1.括約筋温存術の適応, 2.側方郭清の適応, 3.中枢D3 郭清の適応に関して,術前診断要素(局在,壁深達度,リンパ節転移など)と術式選択についてわれわれが行っている工夫を交えて述べる. -
6.直腸癌の術中診断と術式選択
69巻2号(2007);View Description
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大腸癌は生物学的に悪性度は低く,消化器癌の中でも根治性の高い癌腫の一つと考えられる.画像技術の向上に伴って術前診断もかなり正確に行われるようになったが,小結節状の腹膜転移や隣接臓器への限局した浸潤,リンパ節への小さな転移などはいまだその正確な診断はむずかしい.術前の診断が困難で,術中に診断された 1.腹膜転移, 2.隣接臓器浸潤, 3.高度リンパ節(大動脈周囲リンパ節)転移症例では,大動脈周囲リンパ節転移を除いて,P1,2 の腹膜転移や隣接臓器浸潤例では合併切除を行うことで予後の改善が認められる可能性も少なくない.したがって,他に非治癒切除となる因子を伴わない症例においては,転移・浸潤巣を含めた原発巣の完全切除が推奨される. -
7.肝細胞癌の術前・術中診断と術式選択
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肝細胞癌の術前診断としては画像検査が軸となる.具体的にはダイナミックCT(ダイナミックMRI)の所見が最重要で,続いて必須となるのが超音波検査所見で,さらに血管造影所見なども参考とする.画像検査以外ではAFP・PIVKA II・AFP レクチン分画を組み合せた腫瘍マーカー値や,肝炎ウイルスマーカーあるいは問診による背景肝の状態の把握も重要になってくる.術中診断でキーとなるのは術中超音波検査となる.術式選択では,まず肝予備能から可能な肝切除量を決定し,その範囲内で過不足のない系統的切除を(可能であれば)選択する. -
8.胆嚢癌の術前・術中診断と術式選択
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胆嚢癌の進展度診断を行うには各種の検査が必要である.超音波は壁深達度判定に有用である.CT は肝転移,リンパ節転移,肝浸潤,他臓器浸潤,血管浸潤の診断に有用である.また,multi-row detector CT(MDCT)の導入により,任意の断面での評価が可能となった.磁気共鳴膵胆管造影(MRCP)は癌の胆管浸潤範囲の診断に,FDG-PET は遠隔転移の診断に有用である.術中は腹腔鏡,超音波,センチネルリンパ節の検索を行う.以上の検査をもとに進展度を決定し,治療方針を立てている.m 癌では胆嚢摘出術,mp 癌では肝床切除と胆管温存D1 郭清,ss 以深癌では肝床切除,胆管切除,D2 郭清である.さらに肝浸潤を認めれば肝葉切除,十二指腸浸潤があれば膵頭十二指腸切除も考慮する.高度の間膜浸潤,血管浸潤,No. 16 リンパ節転移,腹膜播種陽性の場合は非切除としている. -
9.胆管癌の術前・術中診断と術式選択
69巻2号(2007);View Description
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胆管癌においては依然として外科的治療法が主力を担っている.術前の局所進展度,範囲の正確な診断に基づく正確な肝門部胆管切離線の決定が至適術式の決定に重要である.進展範囲の診断へのアプローチとして,胆管癌を浸潤型と限局型に大別し,浸潤型では選択的胆道造影,限局型ではPOCS や胆管生検を加えて表層拡大進展の範囲を正確に診断することが肝要である.最終的には胆道癌の病態,診断,解剖,手術に習熟した外科医が進展範囲の診断,胆管分離限界点の同定から手術適応,術式決定の判断を術前に行い周到な術前準備を行うべきで,術中に術式を変更することは実際上不可能である. -
10.膵腫瘍の術前・術中診断と術式選択
69巻2号(2007);View Description
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膵腫瘍に対する標準手術は大きな侵襲を伴うことが多い.しかし,嚢胞性膵腫瘍や内分泌腫瘍など良性〜低悪性度腫瘍に対しては,縮小手術の適応となる場合がある.そのため,術式選択には腫瘍の存在診断・質的診断が重要である.浸潤性膵管癌は2006 年にガイドラインが発行され,臨床医に実際的な診断・治療法がそれぞれアルゴリズムとして提供された.また,嚢胞性膵腫瘍や内分泌腫瘍は縮小手術が可能である.種々のモダリティを駆使し,最適な術式選択が重要である. -
11.乳癌の術前診断と術式選択
69巻2号(2007);View Description
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CT やMRI といった3 次元の画像診断が日常診療に導入され,乳癌の広がりに関する術前診断は飛躍的に進歩した.一方で,乳癌に対する手術は1 期的乳房再建が行われるようになって,skin-sparing mastectomy やnipple-sparing mastectomy などそのバリエーションが大きく広がってきた.今後は画一的な手術ではなく,術前診断に基づいて症例ごとに手術の適応を決めていく必要がある. -
12.乳癌の術中診断と術式選択
69巻2号(2007);View Description
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乳房温存手術における乳腺切除断端の術中迅速病理診断は,診療ガイドラインによれば現時点で推奨グレードC であるが,全周性断端検索を施行した自験例の成績では,迅速診断を施行することにより断端陽性率を23%から7%に抑えることができた.現状では迅速診断の方法は各施設で差があり,今後検体提出方法の標準化やその診断精度評価についての検討(エビデンスの構築)が望まれる.また,乳管内乳頭状病変については凍結標本での迅速診断によってその良悪性を確定することは推奨されない. -
13.甲状腺癌の術前・術中診断と術式選択
69巻2号(2007);View Description
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1970 〜 1999 年に経験した乳頭癌について,経験と私見を述べた.この間に甲状腺癌の診断は触診がおもな手段から超音波診断,さらに少し遅れて穿刺吸引細胞診が超音波画像を補完するものとして急速に進歩した.また,CT,MRI,超音波診断装置の発達などによって周囲臓器の合併切除なども術前に計画して行うことが可能になった.近年,微小癌の占める頻度が著しく高くなったが,一方では根治手術が不可能な症例の割合はあまりかわっていない.
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連載/術中写真撮影入門—おもに肝胆膵外科(2)
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連載/最新 癌の化学療法マニュアル(2)
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