外科
Volume 69, Issue 3, 2007
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特集【手術室の最新情報】
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1.術前のインフォームド・コンセント
69巻3号(2007);View Description Hide Description癌における術前のインフォームド・コンセントでは,インフォーム(説明)とコンセント(同意)に加えて,患者の疾患を物語としてとらえる概念(narrative based medicine)という概念を理解することが大切である.本稿では,従来のインフォームド・コンセントはevidenced based medicine にのっとって行えばよいという既存の概念の反省を含め,患者の気持ちを重視したうえのインフォームド・コンセントについて述べる.さらに,予後を含めて,その病態に多様性のある胃癌を例にインフォームド・コンセントを概説する. -
2.クリニカルパス導入による手術
69巻3号(2007);View Description Hide Description手術室クリニカルパスが,患者への情報提供と手術室での安全で効率的な診療を目的として導入されるようになっている.パス導入により,入室から手術開始までの時間および手術室滞在時間の短縮効果も得られることが明らかとなっている.患者サービスの向上および手術室の効率的な運用の両面から,手術室クリニカルパスは今後さらに普及していくと考えられる. -
3.自己血輸血における最近の常識—安全で適正な自己血輸血のさらなる普及のために
69巻3号(2007);View Description Hide Description1994 年版の「自己血輸血—採血及び保管管理マニュアル」の改訂版が2007 年中には発行される予定である.自己血輸血が医学的に優れているのは,同種血輸血による同種免疫副作用が回避できること,そして既知および未知の病原体の感染を回避できることである.社会的に優れている点は,本来輸血のレシピエントである患者が輸血のドナーにもなっていることであり,自己血輸血の患者群は重要な社会資本として位置づけられる必要がある.また,自己血輸血のドナーの健康水準は,同種血輸血のドナーに比べて劣っているために,安全で適正な自己血輸血を実施することは医療者の責務である. -
4.剃毛~手洗いにおける最近の常識
69巻3号(2007);View Description Hide Description近年多くの感染対策が見直され,感染率を確実に下げることのできるエビデンスに基づいた対策が取り入れられるようになった.術前の体毛処理に関しては,病院機能評価機構の評価項目にもなっており,必要な場合に限り手術直前に除毛を行うことがよいとされている.手術時手洗いに関しては,速乾性擦式アルコール製剤の重要性,使用水は滅菌水から水道水へ,手洗い方法はブラッシングからスクラビングやラビング法へと新しい感染制御法に変化しており,本稿では最近の動向につき概説する. -
5.消化器外科手術前のリスク判定と対策—循環器系併存疾患
69巻3号(2007);View Description Hide Description手術は侵襲的であり,消化器外科手術前のリスク判定と対策は成績向上に不可欠である.とくに循環器系併存手術では,ACC/AHA 非心臓手術患者の周術期心血管系評価ガイドライン(guidelines for perioperative cardiovascular evaluation for noncardiac surgery)および日本循環器学会の「非心臓手術における合併心疾患の評価と管理に関するガイドライン」に沿った対策が重要である. -
6.一般外科手術前のリスク判定と周術期対策—呼吸器系併存疾患~とくに慢性閉塞性肺疾患と術後呼吸器合併症について
69巻3号(2007);View Description Hide Description近年の高齢者手術例の増加とともに慢性閉塞性肺疾患(COPD)合併症例を手術する機会が増えている.COPD は,肺・心臓以外の一般外科手術症例においても無気肺・肺炎・呼吸不全などの術後呼吸器合併症発症に対する独立した危険因子としてもっとも重要なものの一つである.一般外科手術後の呼吸器合併症発症率はおよそ2 〜 3%と報告されている.COPD 合併例における術後呼吸器合併症発症のodds比は1.79(CI,1.44 to 2.22)とされている.COPD の診断は,まず慢性咳嗽・喀痰・労作時呼吸困難のいずれか,あるいは,臨床症状がなくてもCOPD 発症の危険因子,とくに長期間の喫煙歴があるときに疑うことが重要で,スパイロメトリーにより確定する.COPD を含む,危険因子の一つ以上を有する症例では,周術期呼吸理学療法,経鼻胃管の選択的適用などの術後呼吸器合併症予防対策を講じることが推奨されている. -
7.術前の腸管プレパレーション
69巻3号(2007);View Description Hide Description術前の腸管プレパレーションは,物理的に腸管内容を排泄させるmechanical preparation(MBP)と,経口抗菌薬を投与するchemical preparation(CBP)に大別される.米国CDC のSSI 防止ガイドラインでは,大腸手術の術前には,これらをともに行うことが推奨されている.一方,わが国ではMRSA 腸炎発生の危惧などから,MBPのみ行う施設が多い.またヨーロッパを中心とする最近の臨床研究では,MBP がむしろ縫合不全や創感染を増加させるというエビデンスがあり,その効果に疑問が投げかけられている. -
8.入室法— 一足制における最近の常識
69巻3号(2007);View Description Hide Description従来からの院内感染対策には,科学的根拠のない方法や過去の習慣により行われてきたことも多い.手術室入室時の履き物交換もこの一つである.Centers for Disease Control and Prevention(CDC)のガイドラインが報告されて,従来のエビデンスのない対策に関して再検討が求められ,手術室入室時の履き物交換を廃止して一足制に移行する病院が増えてきている.はたして履き物交換で感染が本当に防止できるのかどうか考えてみたい. -
9.手術室における医療安全対策
69巻3号(2007);View Description Hide Description手術室は,医療安全管理上,多くの問題が発生しやすい場所である.医療過誤の多くは思い込みによるものである.手術室においては全身麻酔のため,患者からの情報入手ができない状況にあるので,とくに実施直前の確認はきわめて大切である.本稿では,手術室における医療安全対策を具体的に述べた.とくに注意すべき点として,患者の確認,術中輸血,薬剤投与,器材のカウントについて,具体的な内容をフローチャートで示した. -
10.術野の消毒とドレッシング
69巻3号(2007);View Description Hide Description術野の消毒とドレッシングに関する最新の解釈はSSI 発生防止となる.手術野の汚染防止の立場から,術野の消毒,ドレープ法の意義につき,歴史的変遷から整理する.現代医療においては,ドレープおよびドレッシング材の選択には,科学的エビデンスとの整合性を保ちながら廃棄コストまで踏まえた価格設定まで想定する必要がある.また,各創面に対する医療従事者の意識化が最重要であり,決して清潔操作を怠ってはならない. -
11.周術期における最新の抗生物質の使い方
69巻3号(2007);View Description Hide Description一般消化器外科領域での抗菌薬使用ガイドライン〔日本感染症学会・日本化学療法学会(編):『抗菌薬使用の手引き』〕によると, 1.術後感染予防薬と術後感染治療薬を区別すること, 2.術後感染予防薬は執刀開始時に使用すること, 3.術後3 日間の予防的投与を推奨すること(低侵襲手術は執刀開始時のみ),がそのポイントである.抗菌薬使用の適正化は普及してきており,今後はさらに耐性菌出現を予防することも考慮した抗菌化学療法が望まれている. -
12.麻酔覚醒までの注意事項と対策
69巻3号(2007);View Description Hide Description手術終了後から麻酔覚醒前後にかけて,手術室または回復室で注意すべき事項を列記した.いくつかの実際例を紹介して,それぞれ対策を説明した.もっとも重要な合併症は呼吸器系,とくに上気道閉塞である.迅速な処置が必要である.血圧と脈拍の変動,不整脈,肺梗塞などの循環器系合併症以外にも,術後の嘔気嘔吐(PONV),興奮,痙攣,せん妄などの神経系合併症もある.麻酔覚醒前後は,短時間に適切な判断と処置が必要である. -
13.手術直後の疼痛対策
69巻3号(2007);View Description Hide Description術後痛は,不快な症状であるばかりでなく,術後合併症の温床となり,術後早期の離床を妨げるため積極的に治療されるべきである.近年,硬膜外鎮痛や経静脈的鎮痛に自己調節鎮痛法(patient-controlled analgesia:PCA)を応用することで,疼痛の個人差や経時的な変化に柔軟に対応できるようになりつつある.今後,鎮痛法,術式,周術期患者管理の変化に応じて,より安全で効果的な術後痛管理を求めていくことが望まれる.
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連載/最新 癌の化学療法マニュアル(3)
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連載/術中写真撮影入門—おもに肝胆膵外科(3)
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臨床経験
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症例
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