外科
Volume 69, Issue 4, 2007
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第107 回日本外科学会記念号:特集【外科学の進歩と今後の展望】
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1.心臓外科—その歴史とわれわれがすすむべき道
69巻4号(2007);View Description Hide Description外科医が心臓に到達してからようやく100 年を過ぎたばかりである.心臓外科は飛躍的に発展したが,われわれは現在多くの課題を抱えている.ハードな心臓外科を希望する若い外科医が減少してきている.心臓外科の歴史を振り返ると,常に試行錯誤と必死の努力の連続の中から新たな道が切りひらかれてきている.われわれは自らの置かれた環境を嘆くのではなく,後進の外科医の教育・啓発に惜しみなく力を注ぎ,強い意志で前にすすみ続けることが,ひいては若い外科医のモチベーションを高め,これからの心臓外科の大いなる飛躍につながる重要な鍵であると思われる. -
2.血管外科
69巻4号(2007);View Description Hide Description血管外科は,“テクノロジー”の開発・進歩により今後さらに低侵襲化がすすむであろう.血管内治療の重要性が相対的に高まる傾向が続くが,それを支える従来の手術手技も維持・向上させねばならない.扱う疾患領域およびその解剖学的な分布は広く,治療手段は多岐にわたり,個々の症例の治療方針を決定することがますます重要となってくる.今後は「血管専門医(vascular specialist)」という新たな専門家集団を確立することが社会から望まれるであろう. -
3.呼吸器外科
69巻4号(2007);View Description Hide Description呼吸器外科の分野においても,近年その専門化がすすんでいる.しかしその方向性は,拡大手術手技の開拓というより,個々の症例に合せて治療しようというオーダーメード医療へとすすんでいる.術後疼痛軽減のための胸腔鏡手術,早期肺癌や低肺機能症例に対する縮小手術,遺伝子情報に基づく薬剤の選択,末期心肺疾患に対する肺移植手術など,近代社会の要求に応えるため,さまざまな視点から「呼吸器外科の方向性」が模索されている. -
4.内分泌外科
69巻4号(2007);View Description Hide Description甲状腺,副甲状腺,副腎,膵腸管内分泌臓器の病変の診断・治療を行う内分泌外科は外科学全体の中では小さな分野である.しかし,臓器の大きさとその科学的・臨床的価値観は同一にされるものでなく,専門性の高い分野として高く評価されている.疾患としては甲状腺疾患がもっとも多いが,日本では副甲状腺,膵腸管内分泌腫瘍の研究・臨床がきわめて遅れている.とくに,副甲状腺機能亢進症の臨床に関しては内科医がもっと関心をもってくれなくてはならない.よき内分泌内科・科学者あっての内分泌外科の発展と考えている. -
5.乳腺外科
69巻4号(2007);View Description Hide Description乳腺外科は乳房温存療法,センチネルリンパ節生検,低侵襲療法など手術の縮小化・美容的配慮と化学療法の両輪により進歩している.一方,外科系専門医制度は基盤制度のうえに真の各分野専門医を確立する統合された制度が構築されつつある.この中で乳腺専門医は外科と他科医師から構成されており,各領域と調和のとれた専門医制度が必要である.今後は乳腺外科を含めた外科医の職場環境の改善,報われる専門医を目指さねば外科医は増えず,国民の福祉に貢献することもできない. -
6.食道外科
69巻4号(2007);View Description Hide Description食道外科,食道癌の外科的治療の歴史的変遷につき述べた.黎明期,術前照射の時代,術後照射の時代,頸胸腹部3 領域リンパ節郭清の時代,多様化の時代とすすんできた.食道外科の現況として現在の食道癌の治療戦略に加え,逆流性食道炎(GERD),アカラシア,特発性食道破裂などにつき述べた.また,食道外科の将来展望につき,広い医学的知識と高い医療技術に加え,柔軟な考え方をもつ若手外科医の増加が望まれること,今後の外科医不足の予測から将来ひっぱりだこになるであろうことにつき述べた. -
7.胃・十二指腸外科
69巻4号(2007);View Description Hide Description胃・十二指腸外科学の進歩は,潰瘍と癌を対象疾患として,時代的変遷が展開されてきた.潰瘍の診断・治療の進歩は成因論の歴史でもあり,研究成果の前後で,その治療法も大きく変化した.胃癌の手術においても早期癌が約半数以上を占めるようになった今日,縮小手術,内視鏡下手術が導入され,癌治療の個別化が推進されつつある.今後は医学研究および医療現場の環境の多様化に伴い外科学の位置づけも大きく変化するであろう.今,外科学を担う若い医師たちの医療環境の劣悪化がすすんでいる.加えてプライマリケアを主眼とした研修義務化後,大学に学ぶ次世代の若い外科医が減少しつつあることは,医療のみならず,医学研究の発展に大きな支障となっている.今後,若い学徒に魅力的な外科学を示すには,また社会から求められる外科学を目指すには,われわれ学術集団あるいは個人が,社会に対して問題提起と国民への理解を求むべく,なおいっそうの努力をする必要がある. -
8.大腸外科
69巻4号(2007);View Description Hide Description最近の大腸癌の増加は著しく,大腸癌高頻度国に仲間入りした.これに対し,大腸癌治療の向上に向けて多大なる努力が行われた.免疫学的便潜血反応検査,電子内視鏡,腫瘍マーカーの導入や超音波検査,CT,MRI の機器の改良による大腸癌の早期診断と診断精度の向上,ポリペクトミー技術の向上と内視鏡的粘膜切除術(EMR)の導入,リンパ節郭清の概念と適切なリンパ節郭清の確立による予後の向上,自律神経温存術,器械吻合法,腹腔鏡手術などによる術後QOL の改善が図られ,かなりの成果を得ている.さらに,肝転移に対する積極的な外科治療も予後の向上に大きく貢献した.大腸癌化学療法も,新薬の登場にて急速な治療成績の改善が得られている.今後は,予後の改善としては外科治療や化学療法を含めての再発癌の治療が重要であり,手術治療では術後QOL の改善を目指していくべきと考える. -
9.肝臓外科
69巻4号(2007);View Description Hide Description本庄による肝右葉切除の成功以来50 数年,Tien-Yu Lin による finger fracture 法,幕内による術中超音波,系統的亜区域切除,片葉阻血法,門脈枝塞栓術,高崎によるGlisson 鞘処理法などの先駆的な肝臓外科医の努力により,肝切除は出血の多い危険な手術から,安全で精緻な術式に進歩した.1990 年代には生体肝移植が始まり,移植特有の技術の進歩が一般の肝臓外科へフィードバックされ,肝臓外科全体の進歩が加速される結果となった.肝臓外科のこれからの発展は,術中超音波などの画像診断と肝移植のさらなる技術開発を両輪として推進されると期待される. -
10.膵臓外科
69巻4号(2007);View Description Hide Description膵臓外科の進歩と今後の展望について膵頭十二指腸切除術(PD)の歴史を概説しながら報告した.PD は完成された術式となってきたものの,まだ未解決の問題が多く残されており,若い外科医にとって臨床研究を行っていくうえでも,また手術手技の修練のうえでも魅力的な外科である. -
11.胆道外科
69巻4号(2007);View Description Hide Description胆道外科は,1990 年代に内視鏡下手術が導入されてもっともその診療内容に変化が認められた領域である.胆道癌の外科治療には,肝門部胆管癌患者の周術期管理と根治的手術法の開発ではまだ日本が指導的な役割を演じて世界をリードしている.胆嚢癌はその進展様式に応じた手術法が開発されてはいるものの,その手術成績の評価は定かではなくさらなる研究が必要である.一方,胆道外科の臨床の進歩に保険医療制度が追随できていないのが現状である. -
12.小児外科
69巻4号(2007);View Description Hide Descriptionわが国の近代小児外科は戦後の1948 年に産声をあげたが,わが国の食道閉鎖症救命は欧米に遅れること20 年であった.本稿では,その後の新生児外科の進歩,出生前診断・胎児治療の現況,小児外科領域の鏡視下手術,呼吸器外科,とくに気管病変に対する取り組み,肝臓移植がもたらした胆道閉鎖症の治療戦略への影響,小児固形腫瘍に対するグループスタディの取り組みなどについて言及する.
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連載/術中写真撮影入門—おもに肝胆膵外科(4)
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連載/最新 癌の化学療法マニュアル(4)
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臨床と研究
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手術手技
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症例
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