外科

Volume 70, Issue 8, 2008
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特集【再発大腸癌の診断・治療—最近の進歩】
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I.総論:1.再発大腸癌の診断と治療の諸問題
70巻8号(2008);View Description
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本邦で増加の一途をたどる大腸癌死亡を減少に転じるためには,再発大腸癌に対する治療成績の向上も必要である.大腸癌は,再発に対しても手術療法が奏効して,QOL の改善とともに延命に寄与する可能性が少なくないという生物学的特性を有する悪性腫瘍である.しかしながら,局所療法である手術療法には限界がある.適切なサーベイランスプログラムによる再発の早期診断とともに,手術療法を中心とする集学的療法の確立が不可欠である.
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I.総論
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2.再発に対する大腸癌術後サーベイランスの意義
70巻8号(2008);View Description
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大腸癌治癒切除後の5 年生存率は約70%と比較的良好であるが,一方で約30%に再発をきたし,その約80%が術後3 年以内に出現する.大腸癌の予後の改善においては,再発を切除可能な状態で発見することが重要であり,術後サーベイランスの目的はその点にある.再発巣の治癒切除が可能であれば約40%の5 年生存率が期待できる.術後サーベイランスは大腸癌術後の生存率の向上に寄与し,本邦の良好な治療成績の一端を担っている.
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II.各論
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1.診断:a) 肝転移の画像診断の精度と臨床応用
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大腸癌治癒切除後症例のフォローアップにおいて再発巣を早期に発見することは臨床的に非常に重要であり,特に腫瘍マーカーと画像診断の意義は大きい.各種検査法の進歩によって高いsensitivity とspecificity が得られるようになり,治療成績の向上に大きく寄与している.超音波,CT,MRI,血管造影下CT,PET,PET/CT などの画像診断における最近の進歩について述べる. -
1.診断:b) 肺再発の診断法とサーベイランス
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大腸癌の肺再発は肝再発に次いで頻度の高い血行性再発形式である.肺転移の診断には,空間分解能の高いCT がもっとも有効とされ,最近の海外のガイドラインでは大腸癌切除後の肺転移サーベイランス方法として,胸部単純X 線検査よりも推奨される傾向にある.一方PET/CT は肺結節の質的診断に寄与するとともに,viable cell の同定が容易であることから,化学療法や放射線治療の効果判定に活用できる.また全身の転移病巣を一度の検査でスクリーニングできることから,今後再発手術前の必須検査に位置づけられる可能性がある. -
1.診断:c) 局所再発癌の診断
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直腸癌局所再発に対する外科治療は,しばしば仙骨合併切除を要する骨盤内臓全摘術のような拡大手術を必要とする場合がある.画像診断技術の進歩により直腸癌術後の局所再発の診断が向上しているが,外科切除により治癒を得た症例もあれば,多くの後遺症を残したまま再々発する症例もあり,手術適応については,必ずしもエビデンスがないことから,経験例の紹介とともに関連文献をレビューする. -
2.治療:a) 外科治療—— 大腸癌肝転移に対する肝切除後の評価
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大腸癌肝転移に対する肝切除術は,肝転移に対する治療として確立している.しかし,切除の適応については,診断方法に明確な規定がないのが現状である.SPIO (superparamagnetic iron oxide)-MRI や経動脈的門脈造影下CT(CTAP)を行い,微小肝転移の診断をして,肝切除の適応を判断すべきである.肝転移切除が可能でも,切除の意義があるかどうか判断するためには,スコアリングシステムやgrade 分類を用いて評価することは重要である.複数回肝切除は切除可能なら積極的に行うべきである.切除不能肝転移に対する術前化学療法併用肝切除術は,延命効果を認め,新たな治療戦略になると思われた. -
2.治療:a) 外科治療—— 肝転移に対する熱凝固療法の適応と評価
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大腸癌の肝転移に対するラジオ波焼灼療法(RFA)は切除の困難な部位に対する治療法として位置づけられてきたが,近年その再発形式において大腸癌の肝転移では行うべきではないとする論文も散見される.しかしながら,近年その化学療法の進歩により術後生存率の向上が著しくなってきた.よって,局所コントロールにおけるRFA と全身化学療法との組み合わせにより大腸癌肝転移における予後改善が期待される. -
2.治療:a) 外科治療—— 肺切除の適応と術式
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同時性,異時性を含めて大腸癌肺転移に対する外科治療の適応と術式について述べた.大腸癌治療ガイドラインに沿って遺残なく切除できる場合,積極的な手術療法の適応とするが,4 個以上の肺転移に対しては慎重になる必要がある.手技では胸腔鏡手術,部分切除,断端陰性の確認が重要な構成要素である.予後因子の同定や共通言語としてのstaging のコンセンサスを得,化学療法の発展と協同してより適切な外科治療の適応を確立することが今後の課題である. -
2.治療:a) 外科治療—— 直腸癌局所再発に対する外科治療—— 解剖と手術手技
70巻8号(2008);View Description
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直腸癌局所再発の多くが骨盤壁に接していたり,浸潤している.こういった病変に対して十分な切除マージンを確保して切除するには骨盤壁の合併切除が必要である.安全に手術を行うには,骨盤の骨,血管,神経,筋肉の解剖を理解する必要がある.また,局所再発手術特有の問題点と対策を知っておく必要がある.局所再発に対する手術に必要な基本解剖と手技について概説する. -
2.治療:a) 外科治療—— 腹膜再発に対する外科治療
70巻8号(2008);View Description
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大腸癌腹膜再発は術後2 年以内に診断され,また多臓器再発として指摘されることが多い.肉眼的腹膜転移陰性症例における洗浄細胞診陰性は腹膜再発の予測因子にはならないが,陽性症例の5 年生存率は49%であり再発高危険因子であると考えられる.腹膜再発に対し外科切除が適応とされた症例では有意に予後の改善がみられ,完全切除を期待できる場合には積極的な外科治療が望まれる.しかし個々の臨床経過をふまえ,切除の適応を慎重に検討すべきである. -
2.治療:b) 放射線療法—— 直腸癌の局所再発の治療を中心に
70巻8号(2008);View Description
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放射線療法(RT)は,再発大腸癌とくに直腸癌の局所再発に対して非常に重要な治療法で,切除可能な再発病巣に対する術前補助療法,再発病巣切除後の補助療法,切除不能病巣の縮小を目的とした抗腫瘍治療,さらには切除不能病巣に対する症状緩和の治療までさまざまな目的で施行されている.RT のみでは再発病巣の根治は原則的には不可能であるが,全身化学療法との併用により治療効果が改善し,手術の術前治療として行うことにより,切除不能病巣がしばしば切除可能になることや,手術自体の根治性が高まることが報告されている. -
2.治療:c) 化学療法
70巻8号(2008);View Description
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大腸癌の化学療法は,1990 年代前半までの5-fluorouracil(5-FU)しかなかった時代からirinotecan,oxaliplatin,さらに分子標的薬であるbevacizumab やcetuximab といった有効な薬剤が次々と登場し,新たな治療法が開発され,年々進歩を続けている分野である.FOLFOXもしくはFOLFIRI とbevacizumab の併用療法が,現在国際的な標準療法であり,2007 年6 月からは本邦においても使用可能となった.今後はcetuximab やpanitumumab を用いた治療が二次・三次療法に加わってくるであろう. -
2.治療:d) 免疫療法
70巻8号(2008);View Description
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大腸癌の免疫療法には,非特異的免疫療法と特異的免疫療法がある.非特異的免疫療法として薬価収載されているものにクレスチン(PSK)があり,化学療法との併用で多くのエビデンスがある.特異的免疫療法はトランスレーショナルリサーチとして精力的にすすめられている.近年,大腸癌の腫瘍関連抗原も多く同定され,抗原ペプチドを用いたワクチン療法が実際に臨床応用され,良好な成績をあげている.また,樹状細胞,ウイルスベクターなど,腫瘍抗原提示を強力に行う手法が確立されつつある.さらに,化学療法には抗腫瘍免疫を誘導する効果があることが確認され,免疫療法との併用療法が注目されている.
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連載/外科医のための臨床研究講座(4)
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臨床と研究
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臨床経験
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症例
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