外科

Volume 70, Issue 9, 2008
Volumes & issues:
-
特集【術後胆道合併症の防止とその対策】
-
-
I.悪性疾患:1.肝細胞癌に対する肝切除
70巻9号(2008);View Description
Hide Description
近年,肝切除の安全性は非常に高くなっているが,胆道合併症は4.8 〜 9.0%と報告されており決して少ない合併症ではない.時に胆汁漏から重症感染症となり肝不全の引き金になりうるので注意が必要である.肝管後枝が左肝管に合流するものがあるなど,解剖学的変異を理解しておくことは重要である.葉切除,区域切除を行うときには術前に磁気共鳴胆道膵管造影(MRCP)などにより解剖学的変異の有無を確認しておくべきである.肝離断中Glisson の処理は特に慎重に行う.術中に十分に胆汁漏がないことを確認する必要がある.ドレーンは術後の合併症を最小限に抑えるうえで重要なポイントの一つである.以上のように,合併症を最小限にするには解剖を熟知し,繊細な手術が必要となる.胆道合併症発生時には早期に適切な治療を行い,重篤にしないように細心の注意と観察が必要になる.
-
-
I.悪性疾患
-
-
2.胆道癌に対する肝切除~胆道再建
70巻9号(2008);View Description
Hide Description
胆道癌に対する肝門部胆管切除を伴う肝切除では,複数本の胆管枝を吻合する胆道再建が必要となる.細径の胆管枝を吻合するためには,慎重かつ愛護的な操作が重要であり,さらに吻合方法や胆道ドレナージ法などに関するいくつかの要点を理解することが必要となる.そして縫合不全や胆汁漏などの合併症の防止に努めるとともに,合併症の早期発見と治療が肝不全などの致死的合併症の予防に重要である. -
3.膵頭十二指腸切除
70巻9号(2008);View Description
Hide Description
膵頭十二指腸切除後の胆道合併症には,胆管空腸吻合縫合不全を代表とする術後早期合併症と胆管炎などの胆道感染症を代表とする術後晩期合併症がある.術後早期合併症に対しては,胆管の十分な血流保持に留意しながら胆管空腸吻合を確実に行うことや胆管損傷に留意することで縫合不全を防止することが可能であった.術後晩期合併症に対しては,確実な吻合や十分な吻合径を確保するための胆管空腸吻合法の工夫による吻合部狭窄の防止や,再建空腸の長さを適度にすることで屈曲などによる胆汁うっ滞の防止に努めることで胆道感染症の軽減が可能であった.
-
-
II.良性疾患
-
-
1.腹腔鏡下胆嚢摘出術
70巻9号(2008);View Description
Hide Description
腹腔鏡下胆嚢摘出術における術後合併症は,実際には術中操作に基づくものがほとんどであり,なかでも胆管損傷が最大の合併症である.その防止には,各種の胆管変異の存在を知り,この手術の視野が従来手術とは異なることを認識し,術中画像診断法を駆使して正確度を高めた手術を行うのが重要である.また実際に即した手技上のコツもあげた.そして胆管損傷が起きたときの対策の要点を,術中・術後さらには術後の胆管狭窄に分け,保存的治療法および手術的治療法につき述べた. -
2.肝内結石症に対する手術—— 遺残・再発結石予防のための治療法の選択
70巻9号(2008);View Description
Hide Description
肝内結石症治療の現況と術後合併症,とくに長期合併症として結石遺残と再発結石についてまとめた.肝内結石症に対する治療法は,肝切除に加えてpercutaneous transhepatic cholangioscopic lithotripsy(PTCSL)などの非観血的治療が増加し,われわれの施設における遺残結石率も1986 年以降では8.6%にまで減少した.一方,治療後の結石再発率は22.7%であり,肝切除術後は13.6%と少なかったものの,PTCSL 後は50%と多く,また胆管癌の出現もあり,PTCSL は根治術になりにくい可能性が示唆された.一方,肝切除術後の再発部位はB4が多く,L 型に対しては外側区域切除で結石が除去できても,胆汁うっ滞の残るB4 を切除する左葉切除を選択すべきと考えられた. -
3.胆道拡張症
70巻9号(2008);View Description
Hide Description
先天性胆管拡張症はほとんどの場合に膵胆管合流異常症を合併しており,自然経過例では高率に胆道系悪性腫瘍の発症をみるため,診断時になんらかの外科的処置が必要となる.基本術式は分流手術であるが,その術後早期合併症として縫合不全や胆管炎,長期合併症として吻合部狭窄,肝内結石,遺残胆管癌などがある.先天性胆管拡張症の術後合併症について概説し,その予防法・対処法について述べる.
-
-
III.生体肝移植
-
-
1.レシピエント—— 胆管空腸吻合
70巻9号(2008);View Description
Hide Description
肝移植後の胆道合併症は治療に難渋し,問題である.再吻合術や再移植は成績がわるく,非手術治療が主流となっている.これまで胆管空腸吻合後の合併症では経皮経肝胆道造影によるinterventional radiology(IVR)に失敗すると再手術が必要であったが,内視鏡治療の進歩により胆管空腸吻合部への経腸的到達が可能となり,肝移植後の胆道合併症治療にも応用されてきている.再移植が困難なわが国では,IVR や内視鏡を駆使した治療戦略を構築することが重要と考えられる. -
2.レシピエント—— 胆管胆管吻合
70巻9号(2008);View Description
Hide Description
成人生体肝移植における胆道再建法として一般的に胆管胆管吻合が行われることが多い.胆管空腸吻合と比較し,手技が簡便であり,縫合不全の際に重篤化することが少ないが,吻合部狭窄の頻度はきわめて高い.ドナーおよびレシピエント手術における胆管血流の可及的温存,ステントチューブの使用など,吻合部狭窄を回避するための種々の工夫を行っているが,まだまだ満足のいく成績は得られていない.吻合部狭窄の治療の第一選択は内視鏡的ステント留置術である. -
3.レシピエント—— 術後胆管狭窄に対する内視鏡的治療
70巻9号(2008);View Description
Hide Description
本邦において生体肝移植は従来の治療法では致死的であった末期肝疾患の根治的治療法として定着した感があるが,胆管狭窄は依然と比較的高頻度に認められる術後合併症である.胆道再建として胆管胆管吻合が行われた場合,胆管狭窄に対する内視鏡的治療が可能であるが,生体肝移植特有の胆管像(移植肝の代償性肥大により屈曲した胆管,複数の細い胆管吻合)が胆管狭窄に対する内視鏡的アプローチを困難にしている.生体肝移植後の胆管狭窄に対する内視鏡的治療の報告は少なく,またその成績も決して満足のいくものではない.しかし内視鏡的治療は開腹手術や経皮経肝的治療に比べて侵襲度が少なく,生体肝移植後の胆管狭窄に対する第一選択の治療法として施行すべきである. -
4.ドナー
70巻9号(2008);View Description
Hide Description
胆道合併症はドナー肝切除術後合併症の主因となっており,その頻度は5 〜 10%と考えられる.なかでも胆汁漏が術後早期の合併症として重要であり,その対策として術中の胆管切離・断端処理法の工夫が重要である.われわれの胆管断端処理法は年代順に,縫合閉鎖法→縫合閉鎖+C チューブ減圧法→結紮法と変遷してきており,現在は主に結紮法で断端処理を行っている.胆道合併症をさらに減少させるために,今後もきめ細かな工夫が必要である.
-
-
連載/外科医のための臨床研究講座(5)
-
-
-
臨床と研究
-
-
-
臨床経験
-
-
-
症例
-
-
乳癌術後肺転移による呼吸不全に対して medroxyprogesterone acetate が奏効した1 例
70巻9号(2008);View Description
Hide Description
-
-
-
-
-
-
-
-
2 群リンパ節転移を伴った中心陥凹を有する直腸カルチノイドの1 例—— 直腸カルチノイドの手術適応についての検討
70巻9号(2008);View Description
Hide Description
-
-
書評
-
-