Volume 70,
Issue 10,
2008
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特集【外科栄養— 最近の進歩】
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外科 70巻10号, 1041-1047 (2008);
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栄養サポートチーム(nutrition support team:NST)は,職種や診療科間の壁を乗り越えて疾患個々の病態や治療法に応じた適切な栄養管理を実践する集団であり,いわばチーム医療の原点である.1998年以降,わが国においてもこのNST が全国的に普及するようになり,現在では1,200 以上の施設でNST が稼働し,今も増え続けている.高齢者医療や癌治療などにおける栄養管理の担う役割はますます増大しており,アジアや欧米の国々からもわが国の動向に注目が集まっている.
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I.総論
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外科 70巻10号, 1048-1053 (2008);
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生体の感染防御のためには,腸管免疫を中心とした全身の粘膜免疫の維持が重要である.経静脈栄養管理は,腸管リンパ装置のlymphotoxinβreceptor 発現および血管内皮のMAdCAM-1 発現の低下をきたし,腸管リンパ装置のリンパ球数減少を招く.さらに,腸管のサイトカイン環境の変化も加わり,腸管免疫が低下する.腸管免疫の改善には,経腸栄養の積極的利用が有効である.しかし,経腸栄養の禁忌となる患者も相当数存在し,今後,経静脈栄養管理時にも腸管免疫を維持できる新しい輸液製剤の開発が期待される.
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外科 70巻10号, 1054-1058 (2008);
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経腸栄養剤は現在120 種類以上市販され,さまざまな特徴をもたせた製品も登場してきている.経腸栄養剤の特徴は,窒素源の形態やカロリー密度,脂質構成成分・比率,ビタミン/微量元素の配合量,栄養剤の粘度などさまざまな面がある.それぞれの症例,病態,消化管機能を考慮し,それぞれの栄養剤の特徴を理解したうえで使い分けることが望まれる.
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外科 70巻10号, 1059-1064 (2008);
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経腸栄養チューブの留置経路には主に胃瘻,腸瘻,食道瘻があり,患者の状態により使い分けられている.本稿ではそれぞれの造設方法について解説する.胃瘻造設法には外科的胃瘻造設法と内視鏡を用いて造設する経皮内視鏡的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy:PEG),腹腔鏡下胃瘻造設術がある.外科的胃瘻造設法では今日もっともよく用いられているStamm 法の概略を述べた.さらにPEG に関しては造設法とその管理について解説した.食道瘻の項目では,経皮経食道胃管挿入(percutaneous trans-esophageal gastrotubing:PTEG)の手技について,さらに腸瘻の項目ではWitzel 法の手技について簡単に解説した.
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外科 70巻10号, 1065-1069 (2008);
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手術後に発生する褥瘡は,背景にクワシオルコルもしくはマラスムスを伴うことが多い.前者は重度外傷や高度侵襲手術後に発生する.後者は,摂食量が減少する傾向にある高齢者の術後にしばしば発生する.早期から開始する栄養管理で術後褥瘡を可及的に予防することが望ましいが,その発生を皆無にすることは不可能である.術後褥瘡の診療では,早期発見と適切な局所処置,および低栄養の状態に応じた栄養管理が重要である.
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II.消化管
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外科 70巻10号, 1070-1076 (2008);
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大腸全摘術では,肛門機能を温存するかどうかで大きく再建術式がかわってくるが,いずれの術後栄養管理でも,主に水分,電解質代謝異常による,脱水,便量の増加や腸管通過障害による吸収不良に留意する必要がある.大腸切除により水分吸収能が低下し,脱水,排便量の増加をきたすが,長期的には残存小腸に代償される吸収機能により,安定性が得られることが多い.しかし,潜在的に脱水状態を呈することも多く,腸閉塞の予防,排便量のコントロールを目的に,食物繊維を中心とした食事療法が術後には重要である.
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外科 70巻10号, 1077-1084 (2008);
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Crohn 病,潰瘍性大腸炎では栄養障害を併発し,治療には栄養療法が必要である.特に前者では,成分栄養療法をはじめとする経腸栄養療法が重要な位置を占める.最近,成分栄養剤だけでなく,消化態栄養剤,半消化態栄養剤の有効性や,緩解維持に必要な投与カロリーが変化し,成分栄養療法自体の風味も改善し,経口摂取できるようになってきた.これらの改良は患者のQOL をなるべく低下させない栄養療法を可能にしつつある.
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外科 70巻10号, 1085-1089 (2008);
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短腸症候群は小腸の広範囲切除後に消化・吸収機能の低下を背景として重度の下痢と栄養障害をきたす病態である.急性期においては厳重な輸液栄養管理が必要とされ,安定期においても吸収障害や下痢が容易に増悪するため,定期的な栄養評価と栄養管理や水分バランス調整が必要となる.近年,栄養療法とともに局所因子投与や小腸移植により予後良好な症例が報告され,今後の治療への応用が期待される.
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III.肝胆膵
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外科 70巻10号, 1090-1094 (2008);
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肝障害時にはPEM(protein energy malnutrition)をきたすので,周術期の栄養管理に精通することが,手術の成功の鍵である.2006 年のESPEN のガイドラインによると,的確な栄養状態を評価し,栄養管理を開始することが重要である.急性の肝性脳症を除けば十分なカロリーと蛋白質を与え,肝障害時の代謝を鑑み夜間就寝前補食などの方法も考慮する.BCAA 製剤の投与については最近の研究成果を考えると効果的であると思われる.栄養サポートチーム(NST)の協力が得られる場合は早期にサポートを依頼するのが望ましい.
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外科 70巻10号, 1095-1098 (2008);
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肝硬変患者は蛋白質・エネルギー栄養失調症(protein-energy malnutrition:PEM)を合併する.肝移植前に,このPEM の改善により移植後の予後が向上する可能性がある.生体肝移植は予定手術が可能であり,術前より積極的な栄養管理を行う.近年,重症患者に対し,経腸栄養の施行と厳密な血糖コントロールの成果が報告されている.肝移植術後に応用してもよい.
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外科 70巻10号, 1099-1103 (2008);
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胆道癌術後に生じうる感染性合併症の原因の一つに,腸内細菌のbacterial translocation(BT)があげられる.当教室ではこの予防を目的として, 1.周術期の腸管内への外瘻胆汁の返還, 2.周術期のシンバイオティクス投与, 3.術後早期からの経腸栄養投与,を重要な栄養管理対策として胆道癌手術症例に行っている.胆汁返還により,閉塞性黄疸のために亢進した腸管粘膜の透過性が改善される.周術期にシンバイオティクスを投与することで,腸内細菌叢,生体免疫機能および術後の炎症反応が改善される.また術後に経腸栄養投与を行うことで,腸管の免疫学的バリアの低下を防ぐことができる.これらの栄養管理対策が確立した後の胆道癌術後の感染性合併症の発症は減少している.
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外科 70巻10号, 1104-1108 (2008);
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重症急性膵炎では高度侵襲に反応して代謝・異化が亢進し,必要栄養量が基礎代謝の約1.5 倍に増加する.一方,早期経腸栄養には,感染性合併症の原因である腸管からのbacterial translocation を防止する効果が確認されている.重症急性膵炎においては,早期から経腸栄養を開始し,必要な栄養量を経腸的に補給することが合理的であると考えられ,その積極的導入が急務である.
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連載/外科医のための臨床研究講座(6)
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外科 70巻10号, 1109-1114 (2008);
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臨床と研究
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外科 70巻10号, 1115-1120 (2008);
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臨床経験
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外科 70巻10号, 1121-1124 (2008);
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症例
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外科 70巻10号, 1125-1128 (2008);
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外科 70巻10号, 1129-1133 (2008);
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外科 70巻10号, 1134-1138 (2008);
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外科 70巻10号, 1139-1143 (2008);
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外科 70巻10号, 1144-1147 (2008);
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外科 70巻10号, 1148-1152 (2008);
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